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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第36話 捜索

 俺達は入り口から土足で館内に入った。

 土足はなんとなく抵抗感があるが、あちこちにガラス片が散らばっているので靴を脱ぐわけにもいかない。


 薄暗い館内はあちこちが破損して埃っぽい。

 硫黄の臭いも強まり、目が開けづらくなるほどだ。

 大半の窓が割れているのにちゃんと換気できていないのだろうか。

 歩くたびに軋む床は、いきなり折れそうな気がして心配になる。


 先頭を進むのは棺崎だ。

 リラックスした態度でずんずんと歩いていく。

 両手にはそれぞれ金槌と釘が握られていた。

 どちらも佐奈が保管していた呪物である。

 藁人形があれば完璧だったかもしれないな。


 佐奈は出刃包丁を振って元気に探索している。

 棺崎から買った首飾りや札を装備して守りを固めていた。

 後ろ姿からでも抑え切れない好奇心が伝わってくる。

 早く霊に会いたいのが丸分かりだった。


 俺はというと、煤で汚れた斧を担いでいる。

 これがやたらと重く、持っているだけでも億劫だった。

 しかし、棺崎に指示されたので捨てるわけにもいかない。

 刃に染み付いた血液らしきものを見て、俺はげんなりとする。


(この斧で誰かが殺されてるんだろうなぁ……)


 重量を抜きにしても、呪われた凶器を持つのには抵抗感がある。

 それでも今は俺の身を守る貴重なアイテムだ。

 展開次第では美夜子とも戦うことになるかもしれない。

 金欠の俺はオプションを追加購入できなかったので、大事に扱わねばならないだろう。


 腐蝕の進んだ廊下を俺達は黙々と進む。

 既に霊の攻撃を受けているのか。

 不安が募り、なんでも怪しく見えてしまう。

 自殺神社での経験があるため、無意識の行動にも用心しておく。


 事前の作戦会議により、霊と遭遇する前に手持ちの呪具がすべて喰われたら撤退すると決めていた。

 喰呪荘では丸腰になると命を奪われるためだ。

 影響を受けないために囮となる呪具が必須であった。

 引き返すタイミングは棺崎に一任している。


 進んでいくと廊下が水浸しになってきた。

 湿気のせいで床が苔だらけだ。

 屈み込んだ棺崎が分析する。


「湧き出した温泉が放置されているのだろうね」


 苔に紛れて黒っぽい手形が紛れている。

 床だけでなく壁や天井にもびっしりと付いていた。


(ただのイタズラ……ってわけじゃないよな)


 そう考えた時、肩に何かが触れる。

 見ると黒い小さな手が大量にへばりついていた。


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