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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第27話 新たな問題

 走行中、カーナビはニュース番組を流していた。

 俺達が巻き込まれた地下鉄や高速道路の事故が取り上げられている。

 番組では何らかのテロの疑いがあると言っている。

 それが間違っているのを俺はよく知っていた。


(これ全部、美夜子の仕業なのか……)


 死傷者の数を見て憂鬱になる。

 まさか俺が犯人に仕立て上げられるなんてことはないよな。

 安藤は刑事らしいし、その辺りはきっとフォローしてくれるはずだ。

 懸念があるとすれば、美夜子が幽霊なので逮捕できない点だろう。

 そこはどうにもならないので、一連の出来事に事件性はないと結論付けられるのがベストだった。


 さて、呑気にニュースを見ているわけだが、俺にはもっと切迫した問題がある。

 それはオプションアイテムを使い切ったということだ。

 正確には車に貼ってある結界の札が残っているものの、あれは剥がさずに置いておくしかない。


 このまま丸腰で美夜子の襲撃に耐えられる自信はなかった。

 自殺神社の力を持つクドウシバマでさえ為す術もなく返り討ちにされたのだ。

 一般人の俺が敵うわけがないのである。

 沈黙の続く車内で、俺は棺崎に話しかける。


「あの、棺崎さん」


「何かね」


「追加でオプションを付けたいのですが……」


「さっきも言ったが、君の所持金ではまったく足りないよ」


 棺崎は夜道を眺めながら言う。

 俺との会話に関心がないようだった。

 だから俺は手を合わせて必死に頼み込む。


「そこをどうにか」


「ああ、お望みならまた闇金を紹介してあげようか。適当に揉めたら新村美夜子さんが助けてくれるんじゃないかな」


「……すみません、やめておきます」


 もうあんな目に遭いたくない。

 生き延びたのはラッキーだっただけだ。

 再び同じような状況になれば、今度こそ死んでしまうだろう。

 棺崎の説得は無理だと判断した俺は、安藤に頭を下げる。


「安藤さん、お金を貸してくれませんか。必ず返しますんで」


「金銭のやり取りはしないと決めているので」


 きっぱりと断られてしまった。

 こちらも交渉の余地がなさそうだ。

 美夜子の退治に手を貸してくれた安藤だが、そこに善意や同情は感じられなかった。

 被害を拡大させないためだという理由も建前のような気がする。

 彼なりに独自の考えがあるのだろう。


 とにかく、二人を説得するのは駄目だ。

 別の方向から解決するしかない。

 俺はスマホの電話帳を開き、そこに表示された名前を見て葛藤する。


(あまり頼りたくないけど、仕方ないか)


 俺は画面の名前をタップした。

 コール音を鳴らすスマホを耳に当てて相手が出るのを待つ。


 その時、車外からクラクションが聞こえた。

 後方から一台のワゴン車が加速してくる。

 安藤が冷たい声で俺達に忠告した。


「頭を下げてください」


 後方で凄まじい銃声が鳴り響き、俺達の車のガラスが砕け散った。

 俺と棺崎はほぼ同時に上体を下げる。

 銃撃だ。

 ワゴン車から撃たれたのだ。


「えっ、は!? 嘘だろおいッ!」


 銃声は止まらず、車内はガラス片まみれになっていた。

 弾が当たった座席がズタズタに裂けている。

 車体そのものにも小さな穴がたくさん開いていた。

 もう目茶苦茶だった。


 俺が縮こまってパニックに陥っていると、スマホから声が聞こえてきた。


『もしもし』


「明日の昼十二時! 家に行くから金を用意しといてくれ! 最低でも三百万な!」


『は? 何それ――』


「突然ごめん! でも、ほんと、よろしく、それじゃっ!」


 緊急事態でも伝えるべきことは伝えないといけない。

 一方的にまくし立てた後、俺は通話を切った。

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[気になる点] >「明日の昼十二時! 家に行くから金を用意しといてくれ! 最低でも三百万な!」  まるでオレオレ詐欺w(リアルのオレオレ詐欺はもっと手が込んでいるだろうけど)  それにしてもカネの無…
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