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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第25話 膨張

 俺は棺崎の言葉に混乱する。


 自殺神社の本体……クドウシバマサとは何者なのか。

 そもそも本体とはどういうことだろう。

 神社の擬人化、もしくは神社を根城にする霊か。

 ひょっとするとまったく異なる概念かもしれない。


 俺が詳しく訊く前に美夜子が動き出した。

 ぶわっと広がった髪が触手のように伸びて神社の本殿へと突き進む。


 身体を起こしたクドウシバマサは、にんまりと笑いながら手を叩いた。

 蠢く美夜子の髪が方向転換し、彼女自身の首を絞め始める。

 美夜子は金切り声を上げて苦しむ。

 両手で髪を引き剥がそうとするがびくともしない様子だった。


 やがて美夜子の首が折れて彼女は脱力する。

 頭部がありえない角度に倒れたままになっていた。

 石畳に赤黒い血がぼたぼたと垂れている。


 観察していた棺崎は興味深そうに呟く。


「霊すらも自殺させる力か。面白いね」


「美夜子は死んだんですか?」


「まさか。ここまではウォーミングアップさ。あれだけの殺戮を起こした悪霊がそう簡単に死ぬはずないだろう」


 美夜子がいきなり走り出した。

 彼女は首が折れたまま跳躍してクドウシバマサに掴みかかる。

 垂れ下がった長い髪が、凄まじい勢いでクドウシバマサの口内へと雪崩れ込む。

 脂肪で垂れた腹がどんどん膨れ上がっていった。


 一部の髪は未だに美夜子の首を絞めているが、戦況が大きく変わることはない。

 多少の苦痛はものともせず、美夜子はクドウシバマサの体内に延々と髪を送り込む。


 棺崎が「あーあ、やはりこうなったか」とぼやいた。

 ずっと黙っていた安藤が続けて発言する。


「力の差が見えてきましたね」


「クドウシバマサは生物を自殺させることに特化している。だから霊が相手だと能力を十全に発揮できないようだ」


「霊を自殺させても意味がないというわけですね」


「弱い霊は自殺で消滅するのだろうがね。美夜子のようなタイプは相性最悪だよ」


 会話が終わったその時、クドウシバマサが破裂した。

 髪の毛によって体内から破壊されたのだ。

 バラバラになったクドウシバマサのうち、生首が足元まで転がってくる。

 生首の顔は驚愕に歪んでいた。

 棺崎は悠々と語りかける。


「いやはや、相手が悪かったね。生物相手なら無類の強さを誇るのに」


 棺崎は俺の手から拳銃をひったくると、クドウシバマサの生首に弾丸を撃ち込む。

 額に穴が開いて脳味噌が地面にぶちまけられた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「いやはや、相手が悪かったね。生物相手なら無類の強さを誇るのに」 ……え? クドウシバマサとやら、これで終わり? (いかにも強そうに見えた敵があっさり倒されるのも、北斗の拳における類似…
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