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どうやら悪逆非道の女領主に転生したようです。目の前には将来私に復讐する子供達がいます。どうしよう  作者: 福 萬作
第二部

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異なる展開

いいね、ブクマ、感謝です!

暑すぎて執筆が進みません( ;∀;)

皆様も水分塩分摂取して熱中症に気を付けてくださいませ。


 私の警戒度MAXさが伝わったのか、トラヴィスはクスリと笑った。

 

「イーロン様にはお目通りの許可をもらっております。先程は取り乱してしまい申し訳ございません。ルト様のことになると、どうしても前後不覚になってしまって……。でも、もう大丈夫ですわ。あたくしはただ、お礼を言いたかっただけですから」

「お礼?」

「はい。先程は、あたくしのような者の気持ちを汲み取ってくれただけでなく、ルト様へのご配慮まで賜り、ありがとうございました」

「ああ、成程……。いえ、お気になさらず。人として、大人として当然のことをしたまで。誰だって、自分の気持ちを蔑ろにされたら悲しいですからね」


 ――と、まあ、普通のことを普通に言ったつもりだった。

 しかしトラヴィスは私の言葉を聞いてハッと神妙な面持ちをして呟きを漏らす。


「……アマーリエ様も、大変なご苦労をなさっていたのですね……」


 ――ん?


 なんなんだ、同情的な表情と労りの台詞は……?

 私変なこと言った? 確かに今現在そこそこ苦労はしてるけど、そんな泣きそうな顔されるレベルじゃあ……あ。

 

(すっかり忘れてたけど、アマーリエってめっちゃ夫に蔑ろにされてたわ!)


 アマーリエ(お花畑)がライニールの口先を信じて何年も夢見てたお陰で、蔑ろにされたって感覚の共有は無いんだもん。


 情報通のトラヴィスになら、隣国とはいえ王女の結婚事情なんて筒抜けだったのか。そりゃ彼からしたら、浮気症の旦那に見向きもされないまま夫の帰りを待ち続けた哀れな女だろうよ私は。


 でもそれに関して私はノーカンだから……私の疑問思考時間を勘違いしたトラヴィスの痛ましげな表情といったら……気まずい。全くの誤解なのに、申し訳ないやら恥ずかしいやら。


 よし、話題を変えよう!

 

「は、話は変わりますが人を探しているとかっ?」


 ちょっと勢いが良すぎたか。唐突に話題を変えた私に、トラヴィスは一瞬ぽかんとしたものの、すぐに頷いた。

 

「は、はい。ご存知ありませんか?」 

「申し訳ないのですが、思い当たる人物はいません。あんなに綺麗な黄金色の瞳をお持ちなら絶対覚えている筈なので……」

「ああ、いえ、必ずしもルト様のように御双眼のように美しい黄金色をしているわけではありません。黄色に近い色味の可能性もあります。そういう子供を見た、あるいは聞いたことはありませんか?」

「そうなのですか? なら……」

 

 黄色や金色に近い色……レモン色とか辛子色……私の回りにいた子供でそれ系統は……確か、ミツバってキャラメル色設定だったな。


 まさか……。でも黄色ってより明るい茶色だし……どうなんだろ?

 

「それってブラウン系も入るんですか?」

「ブラウン系? ブラウンは……これまでの大公家には存在していないので違うかと」

(じゃあ違うか! よかった~!)


 これ以上ワケわからん展開なったらどうしようとかと思ったよ。

 

「残念ながら該当する者はいませんね」

「そうですか……残念です」

「どれくらいその人を探してるんですか?」

「伯父君は十年近く、我々は三年ほど前からですね」

「そんなに長く……大変でしたでしょう。何故我が国で捜索を?」

「……何故あたくしたちが王国民ではないとわかったのです?」

「え?」


 え、だって……。


……あ、いや……待って……?

 

 ……ん……? ……あ……? え……?

 

 ……や……やっばっ!! 


 お、思い返してみると、トラヴィスやフィリベルトが他国の人間的な発言してない!


 ついうっかりポロッとゲーム知識で喋っちゃった!


(ここで『ゲームで知ってました』とか言ったら、完全にヤバいやつ認定だろ!? かといって『私は未来を知ってるのです』みたいなこと言うのは怪しすぎる!!)

「ルト様が何か仰ったのですか?」

「あ、い、いえ! 違います。えっと、その……黄金色は大公家の血筋の証……でしたでしょう? 先程、ルトが目の色が大事と言っていたので……もしかしてと思いまして……」


 じっ、と見てくるトラヴィスにアルカイックスマイルで対抗する。

 どうだ? 厳しいか? 自分ではかなりいい線いったと思うのだけど?

  

「……なるほど。アマーリエ様のご慧眼、お見事にございます。ルト様の本名は、リンドブルム大公ジャンブル様の第二子フィリベルト・リンドブルムと申します。主に代わり、正体を隠していたことをお詫び致します。お許しください」


 っしゃあ! なんとかなった!!

 

「詫びは結構です。事情が事情ですし、なによりここで会ったのは偶然なのですから。まあ、帝国の者でなく、友好国であるあなた方で心底安心しました」


 マジで心から思う。


「? 何故、帝国の者と?」

「最近、近隣のヨーキリス男爵領で十歳前後の子供を探すフードの集団が目撃されていまして。あなた方ですよね?」

「……やはり、噂になってたのですね……。お恥ずかしい限りですわ」


 トラヴィスが肩を落としながら苦笑する。


「初めはルト様だけがフードを被る予定だったのです。大公家のご容姿の件は庶民にはあまり知られていないとはいえ、どこで正体が知られてしまうかわかったものではないから、と……」

「確かに」

「ですが、逆にそれだとルト様だけが目立つのでは? なら同じフードを羽織っていれば、何かあったときの目印になるから全員でフードを羽織ろうという話が仲間内で決まってしまって……」

「思ったよりも軽いノリ」

「あたくしは、間違いなく怪しい集団に見られると主張したのですが、多数決には叶わず……」

「それはお気の毒に……」

「ルト様とお揃いができると言われたら、もう否定できませんでしたわ」

「この話の流れで行き着くオチはそこ?」


 うん、まあ、フィリベルト信者の話は置いておいておこう。

 

 兎に角、目撃された怪しい集団が帝国の者じゃないということがわかったし、ニーヴェルを屋敷に置く理由が無くなったのはかなりの収穫だ。大手を降って屋敷に帰ることができる。

 

 あとはトリスタン公爵家からの連絡だけだけど、まだ来てないのかな? 帰る前に手紙出して、何か動きがなかったか聞いてみることにしよう。

 

「まあ……探し人のお二人が、早く見つかるといいですね」 

「ありがとうございます。しかし、残念なことに我々はそろそろ帰国しなければなりません」

「え、そうなのですか? 何故?」

「ルト様が来年、十三になられるからです」


 トラヴィスの目がすっと細められたかと思うと私から逸らされる。寂しそうな視線を追ってフィリベルトを見ると、町の子供たちと謎の遊びをして転げ回り、大声で笑いあう年相応の子供がそこにいた。

 

「本当は、我々も見つけられぬまま帰るのは残念です。我が国では十三で成人でございます。それまでは知見を広げるために、必要最低限のこと以外は政務に関わらせることはありませんでしたが……」

 

 そうか、ルトは十三歳になるのか……現代で言えば中学一年生……。

 

(――……ん? 十三……? ……あ!!!!)

 

 十三歳といえば、フィリベルトが義母に襲われてるという不幸の始まりの年だ!

 

 あんなに純粋無垢で可愛らしいルトが、汚い大人に汚されるのを黙って見ていることなどできない。

 

 ルトの不幸回避せねば!!


「ヴィー、貴方にお願いがあるんだけど! 今後何があっても彼の傍を離れないでほしい!!」


 思い出した勢いに任せて席を立ち、フィリベルトを見つめていたトラヴィスの手を取る。

 

「は?! き、急に何を……?」

「お願い! 例え大公妃に命令されても、ルトからは離れないでほしい!! 絶対にどんな時でも彼を一人にしないで!」


 現状、アマーリエとフィリベルトが国家間で繋がりを持つことは難しい。かといって、フィリベルトをここに繋ぎ止めておける理由もない。

 

 ゲームでは、フィリベルトが十三にして第二次成長を迎えて男らしくなった頃。大公妃に「大人の仲間入りをした義息子と二人だけで話をしたいから」と呼ばれ、トラヴィスも命令で離れていた時に起きた悲劇だと語られていた。

 

 逆に言えば、トラヴィスが居たからこそ大公妃は手出しをできなかったわけだ。


 なら、トラヴィスに事を頼むしかない。


「もし必要があるなら私がお金出すし、万が一何かあった場合はバルカン領で匿うから!! だから……!」 

「ちょ、ちょっと待ってくださいまし、アマーリエ様。落ち着いてください。まず、我が国には大公妃はいません」

「え?」


 私の必死の嘆願は、予想の斜め上の方向で断られた。


 ――大公妃が、いない?


 いやいや、そんなわけない。

 

 ゲームではフィリベルトの闇落ち原因になってたし、現大公に溺愛されている彼女がいるからこそ追加ハピエンのフィリベルトは大公国に帰らず、主人公の故郷で暮らすことを選んだのだ。


(そんな影響力のあった大公妃がいないなんて、おかしい、そんな馬鹿な――)


 私が驚きと混乱で絶句していると、トラヴィスは顔を曇らせ、そっと声を落とした。 

 

「お恥ずかしい話ですが……四年前、ルト様の育ての親である前大公妃の反意が明らかになりまして……。前大公妃は、息子であった前大公子共々一族郎党……処分されています」


 僅かな逡巡があったのは、ここが祝いの場だからだろう。それでも濁された末の、言い換えられた言葉を意味を理解するのは安易だった。


「しょっ!? っ――……!」

「だ、大丈夫ですか、アマーリエ様っ?」

 

 思わず私の方が不吉な言葉を叫びかけたが慌てて自分の口を両手で塞ぐ。勢い良すぎてちょっと痛い。


 大公妃がいないこともさることながら、大公妃の息子であり、次期大公と呼ばれていたフィリベルトの兄がいない。


 現大公に、子供は二人しかいなかった。


 つまり。


「じゃあルトは……?」  

「はい、次期大公であり、現大公子でございます」

 

 ――そんな話、知らない。


お読みいただき、ありがとうございましたm(_ _)m

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