黄金色の捜索人
いいね、ブクマ、ありがとうございますです!
今回出てきてないキャラの容姿を少し変えてます。行き当たりばったりでコロコロ設定変えてすみません。多分もう設定はいじらないと思います(多分)
かなり衝撃的な出来事だったのになんやかんやですっかり忘れてしまっていたが、彼は以前、ゼオンの父親であるグレッグ・フーリンが起こした凶行の人質となってしまった少年だ。
「えーっと……ごめん、自己紹介をしていなかったね。私はアマーリエ。アマーリエ・バルカンって言うの。君は?」
「アマーリエ……! ようやく貴方のお名前を呼べます……感激です! 僕はフィッ……ルトと言います!」
「無礼者! 奥様はアーディー王国の第一王女であり、このバルカン公爵領を治める領主だぞ! 呼び捨てなど許されん行為だ!」
初手呼び捨てかい。って思ったらイーロンが怒ってくれた。少年はハッとした後、渋々といった感じだが頭を下げて謝罪してきた。
「っ! ……失礼しました、アマーリエ様。……無礼をお許しください……」
「いいよ、気にしない。で、えーと……フィルトでいいのかな?」
「い、いえっ、違いますっ。ルトですっ。噛んだだけですっ」
少年――ルトは『やっちまった』と言わんばかりの顔でぶんぶんと首を横に振った。
「ルトね。久しぶりだね。あの後は大丈夫だった? 思い出して具合悪くなったりしていない?」
「はいっ! アマーリエ様のお陰で、今もこうして元気です! あの時は助けてくださり、本当にありがとうございました!!」
「はは、私はなにもしていないけどね。元気そうで良かった」
「はいっ! で、あのっ、先ほどの求婚の返事なんですが!!」
「マジだったの!? あ、いや、ゴメン、えっと、気持ちは嬉しいんだけど、君がどこのだれか全然知らないし、年も離れてるし……」
花束もって突撃してきてマジも嘘もないだろうけど思わず突っ込んでしまった。しかし、ルトのキラキラと期待の眼差しと猛牛のような勢いは変わらない。
「僕のことはこれからの付き合いで知ってください! それに、そこの男よりも年は近いですよ、僕!」
「いや、イーロンとはそんな関係じゃなくて上司と部下ってだけだから。そもそも私の立場上、そう簡単には結婚を決められないんだ。求婚には応えられないけど、結婚したいと思ってくれて嬉しいよ。ありがとうね」
「そんなっ……じゃ、じゃあ、今は結婚できなくても婚約者としてはどうですか?!」
「じゃあとは。ほぼ内容変わってなくない?」
「おい、これ以上奥様を困らせるな。そもそも奥様は旦那様を亡くされたばかりだ。結婚どころか求婚すら非常識だぞ」
「え?」
イーロンの助け舟に、ルトは固まった。
……三秒後。
「……ええええええっ!? け、結婚していたのですか……?!」
「う、うん、まあね。一応、今は未亡人だけど」
「みぼーじん……」
その言葉の意味を反芻するように呟いたあと、ルトはしゅんと顔を伏せた。
けれど、すぐに顔を上げて、真っ直ぐ私を見つめながらぎゅっと花束を差し出してくる。
「……せ、せめてこの花だけでも!」
その様子がなんだか可愛くて、つい笑ってしまった。
「うん、じゃあせっかくだし、この花は貰うね。ありがとう、ルト」
「はい! この花々の可憐さと愛らしさはアマーリエ様にとてもお似合いです! ぜひ受け取って欲しいです!」
色とりどりの花々から漂う甘い香り……ルトから見える地味な色合いであるはずの私のイメージって一体どうなってるんだろう? 照れ臭いやら恥ずかしいやら。
こんな子供に好意を持たれるとは……吊り橋効果みたいなものだろうか?
「そういえば、ルトはこの町の子だったの?」
「いえ、違います。用事があってこの町に……あ、そうだ! アマーリエ様にお聞きしたいのですが、僕と同じ目の色をした人を見たことがありませんか?」
「同じ目の色?」
言われてからルトの瞳をじっくり見つめる。太陽の輝きを受け、目の痛くなるような輝きを放つ黄金を思わせる瞳。こんなにも綺麗な瞳を持つ人と会ったなら絶対忘れないだろう。
……いや、ルトのことを忘れていたのはその時色々あったからで、落ち着いて目を見て話していたら忘れていなかったよ。
「うーん……残念だけど、私は見たことはないかな」
「……そうですか……」
「イーロンは? 見たことない?」
「いえ、自分も覚えはありません」
途端にルトがしおしおと萎れていく。泣きそうな顔を見て慌ててフォローをいれる。
「ひ、瞳だけだからわからないのかも。他にどんな情報があるの?」
「僕と年はそう変わらない筈です」
「ふんふん。十歳前後かな? 後は?」
「あと……」
「名前とか性別とか関係とかさ」
「関係……えっと、僕の父上の兄の子供です。名前はわかりません。性別もわかりません。わかるのは、僕と同じ目の色をしているってことだけです」
「なんだそれ。それでよく人を探し出そうとしてるな?」
「端から見たらそうかもしれませんが、僕たちからすれば、かなり重要な証拠となるんです」
ルトがちょっとムッとしたように答える。いや、情報が目の色だけってさすがに少なすぎ。よくわからないけど、かなり訳ありな感じか?
そんなことを考えているのが顔に出たのか、ルトが真面目な顔で詳細を語りだす。
「僕が生まれるか生まれないかの頃の話なので、人伝に聞いた話なのですが……伯父はとある女性と恋に落ちたそうなのです。
伯父は女性と結婚するつもりだったのですが、家の事情や身分の違いによって二人は引き裂かれてしまいました。
けれどそれから数年経った頃、伯父の元に女性から『伯父と同じ色の瞳を持つ子供がいる』という手紙が届きました。
その頃には家の事情も落ち着いていたし、手紙の出された町へと迎えに行ったのですが、既に女性の姿はなく……。
諦められない伯父は、私財をなげうって捜索を続けていましたが、手懸かりは何一つ見つけられませんでした。
……伯父は今、長年の無理と心労が祟って病に倒れています。僕は、病床の中でも女性と名も知らない子供を思ってると泣く伯父を見ていられませんでした。
だから伯父に代わって二人を探している所なんです」
「なるほど……ルトは伯父想いの良い子だね」
「僕は優しくて博識な伯父のことを尊敬していますから!」
えっへん! と今度は胸を張るルト。コロコロと変わる表情は見ていて飽きないなぁ。こんな裏表のない真っ直ぐな子に会ったの、アマーリエになって初めてだわ。
……にしても、この話、めっっっっちゃ聞き覚えあるんだけど。
お読みいただき、ありがとうございました(*^^*)
7/6 11-12時のランキングで18位ありがとうございました!表示されてから一番いいランクに入れて嬉しかったです♪ 目に見えてやる気が出てきました! 執筆は相変わらず遅いけど完結目指して頑張ります!




