姉妹との交流
いいね、ブクマ、ありがとうございます♪
変なところで切れてますが、長くなったので分けてます。
「ヨツバ、ミツバ?」
「こんにちは、アマーリエ様」
さっきまで窓の外から笑い声を響かせていた姉妹。世話役としてメイドをつけていた筈なのだが、入室してきたのは二人だけ。歩み寄ってくる二人に近付き、しゃがんで視線を合わせる。
「こんにちは。二人だけか? 世話役のメイドをつけてた筈だけど……何かあったか?」
「ううん、何もないです。メラニーさんには、とても良くしてもらってます。よく一緒に遊んでくれます」
「それならよかった。で、その人は何処に行ったんだ?」
「それは……ごめんなさい、撒いてきちゃいました。アマーリエ様とお話したかったんですけど、お忙しいからって聞いてくれなくて……でも、すぐにお会いしたかったので……」
「そ、そう……」
てへっ☆と効果音が付きそうな笑顔で謝るヨツバ。結構跳ねっ返りというか、お転婆な所もあるのね。
ふ、とヨツバのゲームでの立ち位置を思い返す。
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ヨツバ(ゲーム開始時故人。享年十二歳。現在十歳)
ライニールと共に死んだ愛人の娘。金髪と翠眼。
ライニール激似の美少女で、実際ライニールと愛人の間に生まれたライニールの子供。
普段は自分のことよりも他人のことを気にする優しく、慈愛に満ちた優しくおとなしい少女だが、曲がったことが嫌いでいざというときは前に出る強い心の持ち主。
ライニールに似ている為、アマーリエに引き取られて数日は普通に過ごせていたが、妹や他の子供たちが奴隷扱いを受けていることを知り、アマーリエに立ち向かった結果、怒りを買って奴隷落ちする。
大抵のことをそつなくこなすので彼女自身が原因での虐待は少なかったが、他の子供たちを守ろうとすることで虐待を受けることが多かった。 また、美しい容姿から男たちから性的被害を受けることもあったが、どんな目に遭っても清い心が折れることはなかった。
二年後、アマーリエが別の奴隷商人に売り渡す計画を耳にしたヨツバは、仲間たちと共に嵐の夜に脱走する。しかしそれはすぐに気付かれ、仲間たちはバラバラに逃げることとなる。ヨツバは追っ手に捕まり掛けたミツバを助ける為に追っ手に挑むが、追っ手の剣に胸を貫かれ死亡する。
ケイレブ、ニーヴェル、ゼオンに想いを寄せられていた自己犠牲心を持った天使のような少女。
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これまでの彼女の行動を鑑みるに、ゲームとの差異は無いように感じる。
「それで? 話ってなんの話?」
「えっと……ほら、ミツバ」
「…………」
「ん? ミツバの方が用事あるのか?」
自身の背後に隠れるミツバを前に出そうと促すヨツバだが、ミツバはまるで置物になったかのように動こうとしない。俯いている顔は唇を尖らせており、ふてくされているようだった。
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ミツバ(ゲーム開始時十六歳。現在八歳)
ライニールと共に死んだ愛人の娘で、ヨツバの妹。ピンクの髪と碧眼。完全に母親似で、目がぱっちりとした可愛い子。
乙女ゲー主人公なので性格はお察し。
ゲーム中は記憶喪失となっているが、正義感の強さは無意識下で姉を見習っている節がある。
子供時代は兎に角人見知りをする甘えん坊の泣き虫で、アマーリエから一番嫌われていた。男性から性的被害はヨツバが身を挺してくれたお陰でなかった。
姉が自分を庇ったせいで目の前で死んだショックにより記憶を失ってしまう。なので、義父母である村長夫婦のことを血の繋がった本当の親だと思っているし、子供に恵まれなかった村長夫婦も、ミツバのことを養子とは教えず我が子同然に育てている。
ちなみに、誰とも結ばれなかったノーマルエンドでは、記憶を取り戻さないまま故郷に帰って、領主の仕事を手伝いながら結婚もできずに余生を送るエンドとなる。
*****
ふむ。
妹の方もゲーム情報同様の性格のようで、これまで相対しても一切会話をできていない。そんなミツバが私に話とはなんだろう? 雰囲気的に、文句かお願いって感じだけど……。
「ミツバ? ミツバ、どうしたの?」
「…………」
「ミツバったら。もしかして、恥ずかしくなっちゃった?」
「……………………」
「アマーリエ様のために頑張ったでしょう?」
「………………………………」
「もう、ミツバがそんななら、私からアマーリエ様に渡しちゃうよ?」
「! やだっ!」
後ろ手に、ずっとモジモジしていたミツバだったが、ヨツバにそう言われた途端顔を上げる。
同時に私の視界いっぱいに広がったのは、様々な種類の花。摘みたてか、良い香りを漂わせるそれを手に取るとと、それは色とりどりの花が織り込まれた可愛らしい花冠だった。
「花冠……? ……私に?」
ミツバは耳まで真っ赤にした顔でコクコクと頷き、私が受け取ったのがわかるとぴゅん! とヨツバの背中に隠れてしまった。
……かっっっっわいいいいいい!!!!!
え? え? え? プレゼントされる理由はわかんないけど可愛いんですけど!!
「ミツバ、言わなきゃいけないこともあるよね?」
「……おばあちゃんとおねえちゃんを、たしゅけてくれて、ありがとう、ございました……!」
噛んだ! めっちゃ小さい声だし噛んだけどそこも含めてまるっと可愛い!! 胸がきゅうううううんってなった!
「私たち、アマーリエ様がくれたお金のお陰で、街で安全に過ごすことができてたし、おばあちゃんのことも助けてもらったから……。お母さんから、『受けた恩はしっかり返すこと』って言われてたんです。だからミツバがアマーリエ様にプレゼントしたいって、ミツバが頑張って一人で作ったんです」
ミツバの可愛さに心の中で身悶えているとヨツバからの補足が入る。成る程、これはお礼だったのか。お母さんの教育素晴らしいね! 夫の愛人だろって? どうでもいいかな!
「ようやく上手に作れたから、アマーリエ様にプレゼントしたかったんです。でも、メラニーさんに止められちゃって……」
「だからメイドを撒いてきたってことか。理解した。ありがとうね、ミツバ。折角だから、頭に乗せてくれたら嬉しいなぁ」
そう頼んでみたけど、ミツバはめちゃくちゃ恥ずかしがっていてヨツバにしがみついて離れない。流石にそこまでの進展は望めなかったか。残念。
「……それで、こっちは私からです」
頬を赤くして照れ笑いを浮かべるヨツバから差し出されたのは、ミツバとは対象的に茶色と緑が目立つ輪……これって……。
「……クリスマスリース……?」
「くり?」
「あ、いや、なんでもない。これをヨツバが作ったの?」
「はい! 同じものがあってもつまらないかなって思って! 私の自信作です!」
太めの蔓で大きな輪を作り、青々とした葉と赤茶色の木の実やどんぐりなどが飾られたそれはまさしくクリスマスリースと呼ぶに相応しい代物だった。だけどこの世界にはキリスト生誕祭なんてイベントは無いので、ただのリースと呼ぶのが正しいようだ。
リースは彼女が自信作と言うに相応しい出来で、プレゼントにしても申し分ないとは思う。が、十歳の女の子からの贈り物としては渋過ぎる気がするし、十六歳の貴族令嬢への贈り物にしては地味過ぎやしないだろうか。いや、外国では普段から玄関扉に飾る風習あるみたいだし、別におかしくはない……のかな?
予想外の贈り物に戸惑いはしたものの、お礼だからと贈り物されたプレゼントに不快になる私ではない。リースもありがたく頂戴する。
「ヨツバもありがとう! とっても上手だよ。二つとも大事に飾らせてもらうからね」
「えへへ……あの、それ、私がアマーリエ様の頭に乗せてもいいですか?」
「え?」
おっとっとー? これってまさか扉に飾るやつじゃない感じ? ミツバに断られたから気を使って? いや、そういえばギリシャ神話の神様も頭にこういうの乗せてたな……これってリースじゃなくて一応冠だったってことか?
そんなことを考えていたら、ヨツバの笑顔が徐々に曇っていく。しまった、不自然な間を開けてしまったようだ。
「……だめ……ですか……?」
「あ、も、勿論全然いいよ! はい、おねが……」
「緊急のため失礼しますー!」
慌てて頭を差し出そうとしたところで、威勢のいい声とともに扉が開かれた。
入ってきたのは黒髪お下げの若いメイド………………あ、この子知ってる! キャロラインに子離れしてくれって言った日に落ち込んだ私をフォローしてくれた子じゃん! メラニーって名前だったのか!
お読み頂き、ありがとうございました!!




