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どうやら悪逆非道の女領主に転生したようです。目の前には将来私に復讐する子供達がいます。どうしよう  作者: 福 萬作
第二部

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一難去って

いいね、ブクマ、誤字脱字報告、感謝です!

些細なことですがキャロラインをメイド長から侍女頭に変更しております。物語に影響はありません。


 波乱の一日から数日後。 

 今日も今日とて朝から書類と睨めっこだが、急ぐ仕事もないし、既に処理前書類は少ない。本日の業務は早めに終了するのが予想される。

 

 それは喜ばしい限りだが、まだ考えなければならないことは多い。


 そして今、いつもなら私の側に控えていてくれるパーシーがいない。


 と、いうのも、私が危険に飛び込んだ所為で腰を抜かしたパーシー。ヨツバたちを連れて医者に来たのだからとついでに診てもらったところ、なんと軽く腰を抜かしただけでなく、きつめのぎっくり腰になってしまっていたのだ!!


 医者には重度ではないけど暫く絶対安静! と言われので、現在は屋敷内の自室で絶対安静させている。本人は「軟弱者で申し訳ございません」なんて落ち込んでたけど、どう考えても還暦近くの年寄りに無理をさせた私が悪い。

 

 今は室内にいないが、暫くは中年執事長補佐がパーシーの代わりを勤めてくれることになっている。

 

(ってか、他の物語に出てくる執事とか側仕えって若い人が多いのに、なんでうちの執事たちはやたらと年いってる人ばっかなんだろ? いや、別に執事と恋をしたいって訳じゃないけどさ。王族に仕えさせるには、やっぱ経験年数がいってる人が採用されてしまうのかねぇ)


 次に今回の目玉であったゼオンとリリーナについてだが……なんと捕縛に向かった騎士たちがフーリン家に到着した時には、既にもぬけの殻となっていたそうな。しかも、まるで今後の展開がわかっていたかのように衣類や金品など、足がつかなさそうな貴重品が無くなっていたらしい。

 

 残っていた使用人の話では、「グレッグ・フーリンから『事情が変わったから、リリーナとゼオンと共に来るように』と迎えの馬車が来て、二人はそれに乗っていた」と。ちな、グレッグ・フーリンに確認したが、そんなことは頼んでない! と牢の中で発狂していたそうだ。


 慌てて捜索を開始したが、二人が乗った馬車は有り触れたデザインの街馬車だったとことから捜索は難航。

 最寄りの町や村にも馬を走らせたところ、とある港町にてようやく「昼の船便でそれらしき女を乗せた」という証言が上がった。

 目撃者は最小限、目立つこと無く姿を隠しながら素早く逃亡……どう考えても突発的な行動ではなく、明らかに計画しての逃亡だろう。

 一応重要参考人として国中に指名手配をかけてもらったが……なんとなくだけど、見つからないような気がするんだよね。


 こんな感じで私らはゼオンとリリーナにまんまと逃げられたわけだけど、私の前から仲良く退場してくれたのだから良し。この件は私の中で一応幕を下ろすことにしたのだった。


(単にエロ爺から逃げ出す算段を立てていただけかもしれないけど、もしかしたら親子のどちらかが私と同じ転生者って可能性もある? それなら是非話してみたかったな〜)


 そう思いながら決済印を押した書類を処理済みに置いたところで、突然聞こえきた子どもの笑い声に顔を上げる。


 音の出所は、開け放たれていた執務室の窓の外から。

 この部屋は二階にあって、窓の外には仕事に疲れた主人の癒しとなる美しい庭園が広がっているのだが、おそらくミツバとヨツバが庭で遊んでいるのだろう。

 

 ――小雨降る中、突如現れたヒロイン一家だが、バルカン公爵家お抱えの医者に連れて行き、三人揃って診てもらった。

 結果、三人とも命に別状なし。ただしニーナは頭から流血していた為、安静にしておくことと診断された。

 そんな三人は屋敷に着いても死んだように目を覚まさなかったから心配してたんだが、次の日にはちゃんと起きて朝食を平らげたと報告を受けて一安心。

 で、子供たちは今は自由に遊ばせているが、安静のニーナはベットの住人中である。

 様子を見てニーナに何が起きたか話を聞きに行く予定だが、 粗方片が付いたと思ってただけに、新たな騒動の予感には気落ちせざるを得ない。

 

(流石、物語の主役張るだけあって原作崩壊しても簡単には終わらないってか。ようやく攻略対象らの対処が終わって、あとはヨツバだけだったのにな〜)


 深い溜息を吐きながら天井を仰ぐ。


「まあ、そのヨツバも前途多難っぽいけど……」


 昨夜、馬車の中でパーシーと交わした会話を思い出す。


*****


 ヨツバが私の膝で眠りこける中、神妙な面持ちのパーシーがたっぷりと沈黙を取った後に口を開く。

 

「奥様、その……その娘は、どうなさるおつもりですか……?」

「まあ、まずはトリスタン公爵家にお伺いを立てようと思う。ほぼ間違いなく、この子は血の繋がりがあるだろう」

「……そうは申されますが、奥様にはその娘とライニール様の関係に確証がお有りなのですか?」

「……惚れた女の勘、かな」

「……さようでございますか」

「ま、まあ、万が一? この子がライニール様の子でなくても、こんなに似ているんだし。トリスタン公爵家の皆様も喜んでくれるんじゃないかな?」

「……いえ、それはどうでしょう」

「ん? どうでしょうって……あ、母親が平民だから?」

「そうではありません。昔とは異なり、我が国は実力主義。功を立てれば平民でも貴族に名を連ねられる世。片親が平民だからといえど、ただそれだけで忌避されるわけではありません。私の懸念は、この娘がライニール様に似ていることにあります」

「……と、申しますと?」

「……奥様は、トリスタン公爵家の内情をご存知ではなかったのですね」

「内情? ……言われてみれば……」


 ゲームでは、故人の実家であるからか深く掘り下げられておらず、悪逆非道のアマーリエ・バルカンを倒すため、主人公らに手を貸す一貴族としてしか名前が出てこない。自身を裏切った男の実家ということでアマーリエ・バルカンから様々な嫌がらせを受けて恨みを募らせていたから、とファンブックで語られていたのみだ。

 

 王女の記憶の方は、旦那の実家に興味がなかったみたいで家族構成すら思い出さない。

 ライニールが亡くなったときも周りがいろいろやってくれてたからまじで一欠片の交流もないんだよね。


 かくいう私自身もライニールに興味無かったし、攻略対象(死亡フラグ)たちのことでトリスタン公爵家のことなんて頭になかった。

 

「……というか、その、ほら、私、今までライニール様以外に、き、興味がなかったから、家族構成すら危うい、かも……ナンデス……」

「……奥様……」


 めっちゃ呆れ顔で絶句された。

 いや、私が悪いわけじゃないし! 王女が悪いんだし! 心の中でしか言い訳できないのがもどかしい!


 ではまず……と家族構成を教えられる。

 ライニールは前トリスタン公爵家当主エドガーと、伯爵令嬢だったジュディスの間に生まれた四人目の子ども。長男は現当主クロノア、長女イナベル、次女アネモネ。イナベルは隣国伯爵家に、アネモネは我が国の侯爵家に嫁いでいるそうな。


「四人兄弟! 意外と多いね」

「エドガー様とジュディス様は十年来の婚約者にして、大恋愛の末ご結婚なされました。お二人は今なお仲睦まじく、貴族界隈では『理想の夫婦像』として称賛されております」

「ふぅん。愛の量と子供の数が見事に比例した鴛鴦夫婦ってことか。じゃあ、家族仲は悪くないんじゃないの?」

「……はい、良かったですよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「え」


 私が何気なく問いかけた質問に対して、無表情で淡々と告げられる含みのある返答に、背中にゾクリと寒気が走る。


「本来、一族のお家騒動とも言えるこの事案は現当主であるクロノア様に報告や伺いを立てるべきであるのですが、ライニール様のことに関しては全て父親であるエドガー様預かりとなっております。というのも、クロノア様とライニール様は非常に不仲……いえ、はっきり申し上げましょう。クロノア様はライニール様に殺意を抱く程憎んでおられるのです」


 パーシーは私を見て話をしているはずだが、どこか遠いところをハイライトを失った瞳で見ているように淡々と語り出した。

読んでくださりありがとうございました!

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