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どうやら悪逆非道の女領主に転生したようです。目の前には将来私に復讐する子供達がいます。どうしよう  作者: 福 萬作
第一部

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リリーナの正体

2023/10/21 ヒューマン(文芸)ランキング 23位ありがとうございます\(^o^)/!


ほんの少しですが児童性被害を匂わす描写があります。ご注意ください


 グレッグは扉側――テーブルの真ん中に置かれた燭台を挟んだ向こう側に腰掛けた。その後ろに従者が控える。

 

 メイドがそれぞれの前に紅茶を置き、元の位置に戻ったところで話し合いを始めた。

 

「それでは、現状確認をさせていただきますね。リリーナ様からはどこまで聞いてますの?」

「はい。ゼオンが本当の父親はライニール様であると。先日、奥様にお認め頂いたのでバルカン公爵家に受け入れられた、と聞いております」

「そう。それで、そのことについて貴方はどう思ってらっしゃって?」

「正直、娘が誰とも知らぬ子を産んだと知った時は、腸が煮えくり返る思いでありました。しかし、それがライニール様とあっては話が別。今は亡き高貴なお方の一粒種が、我が娘に宿っていたなどまさに奇跡。ゼオンは可愛い孫でありますが、公爵家存続為ならば、喜んでバルカン公爵家へと差し出しましょう」

「……そう。貴方は、リリーナ様のその言葉を信じている、と」

「ええ、勿論。可愛い『娘』の言うことですから」


『娘』、ねえ。


 既に内部事情を知っている私にとって、ニコニコと淀みなく答える男の姿は嫌悪感しか無い。湧き上がる感情を押し殺して余所行きの顔をしたまま、一刻も早くこの茶番を終わらせようと口を開く直前。


「それで、公爵家はどこまでお調べになっておいでなのですか?」

「……はい?」


 突然言われて、思わず間の抜けた返事をしてしまった。

 

「これはこちらにも非があることではございますが、これだけ時間が開いているのです。公爵家の方々が、全て我々の言い分を受け入れ、ただ指をくわえて待っていただけということはございませんでしょう?」


 ……成る程、確かに大分長いこと時間を置いてるし、貴族相手に商売をしてたんだから、調査が入ることはわかっていまことだったのだろう。


 なら、知られて困ることは多々あるのはわかっている筈……なのに何故この男はこうも余裕の態度をしていられるのだろうか? まさか完璧な隠蔽を施してる自信があるのか……? 

    

「……流石、貴族相手に商売をなさっているだけはありますね。ええ、ええ、勿論、調べさせて頂いておりますとも」

 

 一抹の不安を感じながら、パーシーが差し出した調査報告書を受け取り、表紙を見せ付けながら口を開く。

 

「確認がてら、貴方のプロフィールを読み上げさせて頂きます。――『家長であるグレッグ・フーリン、七十一歳。父親の商売を引き継ぎ、某子爵家との縁を繋いで店を大きくしたやり手の商売人。提携している貴族の三女であった、三歳年上の妻メリーアンは十五年前に他界しており、現在のフーリン家はグレッグ、副会長である息子ブレイズ、リリーナ、ゼオンの四人。現在は会長とは形ばかりで、仕事は全て副会長である息子に任せ、自身はリリーナとゼオンと共に別荘で悠々自適な生活をしている』……ここまでお間違いないですか?」

「はい、仰る通りでございます」 

「ありがとうございます。続けますね。貴方の父親はショーン・フーリン。母親はユイナ・フーリン……ご両親は正式な夫婦というわけではなく、初めは愛人関係だったそうですね。愛人の子供でしかも三男だったのに、十四歳の頃、事故によって正妻、長兄、次兄が纏めて亡くなったのを機に、母親と一緒に引き取られたとか。それまでは王都の貧民街で暮らしていて、警邏によく注意、補導、捕縛されていたそうで……なかなかの腕白ぶりですね」

「……そんな子供の頃のことまで調べられているとは……公爵家の諜報員は優秀ですな」

 

 眉間に皺が寄り、口が真一文字に結ばれたのを、書類に顔を向けたまま上目遣いに隠し見る。


 驚いているようだが、その反応は私が想像していたものとは違う。


 この世界での平均寿命なんか知らないが、貴族でも七十代まで生きている人間は稀。なので、庶民で六十年近く昔の情報を知る人なんて恐らくもういない……そう思っていたのに、調べられていたことに驚いた。そんなレベルだ。


 もっとこう『そんな大昔の家族構成まで調べられるのかっ!? じゃああのことも……!?』みたいに席を立つくらい焦るかと思ったんだけど……少しだけ、ぶっこんでみるか。


「……お褒めに預かり光栄です。我が家の部下たちは本当に優秀でして、私も鼻が高いですわ。他にも、『グレッグ・フーリンには歴代の愛人が十六人いて、直近で愛人契約を結んでいるのは三人。()()()()()()()()()』……あ、これは貴方がお認めになっている数でしたね。認めていらっしゃらないのを含めると、婚外子は九人いるとか。子沢山で素晴らしいですわ」


 これはどうだと気持ちを込め、笑みを貼り付けた顔を上げるが、グレッグは自身の黒歴史に対してバツが悪そうにしているだけ。先程と変わらず、動揺が見られない。

 

「……ここまでで、何かご不満な点や間違いはございませんでしたでしょうか?」

「いえ、公爵家の方々が調べた通りでございます。間違いは一つもございません。どうぞ、お話を続けてください」

  

 思わず確認してもきっぱりと返され、困惑しながらパーシーを見上げるが、彼も不思議そうにしている。パーシーにも予想外の反応のようだ。


 普通、仮にも身内を嫁にやろうとしているのに、保護者である自身の汚い経歴暴露されたら慌てるでしょうに。しかも本人あっさり認めちゃってるし。

 

 これがこの世界の荒波で揉まれた商人の根性なのか? 世間知らずの王女なんか敵ではないと?

 

 これ以上回りくどくしていても話は進まないし、何故だかこっちが追い詰められているような感覚がする。……もう、核心に迫ってみよう。

 

「……そうですか。では、公爵家で調べた報告書の正確性をわかっていただけたようなので、こちらの考えをお話させて頂きます。貴方が娘と称したリリーナ・フーリン様ですが、本当は貴方の娘などではなく、一番お気に入りの『愛人』ですね?」


 調べた結果――リリーナ・フーリンの本名はリリ。名字も屋号もない、ただのリリであったということが判明した。


 彼女は、王都の平民街で大工とパン屋で働く両親と、弟、妹が二人ずつの五人姉弟の長女として暮らしていた。おっとりとした見た目と裏腹に、両親の手伝いや弟妹たちの世話を熟す、しっかり者だと評判の娘だったそうな。 

 

 そんな頼れるお姉さんだった少女は、十歳の頃にグレッグと相まみえる。グレッグの亡妻メリーアンに何処となく似ていたリリは、『亡くなった愛する妻によく似たリリをメリーアンとの間に設けた娘として育てたい』との申し出を受け、フーリン家の養子となった――というのが表向き。


 実際のところ、リリはグレッグの愛人になるために引き取られる。

  

 リリは成長と発育が早かった。幼い頃から実年齢プラス五歳くらいに見られるのはザラだったという。


 その所為で、女好きのグレッグ・フーリンに目を付けられたのだ。


 グレッグはリリが十代半ばか後半くらいだと思っており、初めこそ愛人として囲おうとしてリリの両親に申し込もうとしたものの、蓋を開けてみたら実年齢はまだ十歳。


 流石に十歳の子供を愛人にすることはできず、かと言って魅力的なリリが、自分の知らぬ間に他の人間の手に渡るのは嫌だと諦めず……そこで悪知恵を働かせ、まんまと手中に収めたのだった。


 色情魔の鬼畜の所業としか言い様がない。

 

遅々として進まない物語にお付き合い頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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