レストランにて顔合わせ
いつもながらタツノオトシゴ級執筆ですみません。
最近、一話の文字数減らせばいいことに気づきました(尚、執筆スピード)
レストランにて顔合わせ
主人公以外の心情を描写する話も追加すべきか悩み中。
フーリン商会会長との約束の時間より大分早く到着する。理由は勿論、食事をする為だ。わざわざ話をする為に場所を借りたのだから、お返しにお金を落とすのは当然だろう。かと言って、知らない人とのランチは嫌だったから、先に来て食事を済ませ、お茶をしながら話し合いをする……という流れになっていた。勿論先方にも話済である。
先に降りたパーシーのエスコートをペタン靴だから大丈夫と断り、ゆっくりと馬車を降りる。目の前には、白い外観の木造二階建ての建物が聳え立っていた。
フーリン商会会長との会談場所である、レストラン・ヒルデガルド。創業百年の歴史を持つバルカン公爵領一の有名店だ。
ポーチの階段を上がり、侍女に開けてもらった玄関を潜る。
この店は一応貴族だけでなく平民も来れる店なのだが、値段が高いので殆ど金持ちしか来れない。しかしそれでもテーブルは満席だった。給仕係が優雅ながら忙しなく動き回っている。
一階は白を基調とし、窓が沢山あって明るく、程良く配置された家具は温かみのある木製で、所謂アンティークスタイルの上品で優雅な室内装飾が施されている。奥にはステージがあり、ピアノやヴァイオリンなどを持ちいた演奏家たちがクラシックのような曲を弾いていた。扉から右手奥には二階に続く大きな階段があり、上には個室とVIPルームが設置されているらしい。高級感はあるが、隠しきれない素朴さが温かみを感じさせる内装だ。
中に入ると、待ち構えていたダンディな中年男が頭を下げて、この店の支配人だと自己紹介された。挨拶を交わし、そのまますぐに二階にあるVIPルームへと案内される。
玄関と客席少し離れていたのと演奏のお陰で私等の会話は届いていないだろうが、支配人自ら案内し、私、パーシー、侍女二人と護衛騎士二人(残り四名は外で待機)という大人数で二階の階段を上がる姿は人々の注目を集め、少しばかり気恥ずかしかったぜ……。
二階は吹き抜けとなっており、一階を覗き見れるようになっている。通路には間違いなく高いであろう絵画や置物が並び、足元にはレッドカーペットが敷かれ、一階よりも更に高級感が増していた。
最奥にあるVIPルームの中は、広い室内のど真ん中に、縦横の幅の大きな長テーブルが置かれている。
扉とは反対側の壁は一面掃き出し窓になっており、そこから広場が見渡せるテラスに繋がっていた。広場でイベントがあれば、ここが一番の特等席となるのは間違いない。
侍女たち扉側の壁で、騎士たちは廊下で待機して、パーシーは定位置である私の後ろに。私は案内されたテラス側の上座に腰掛けたところで食事が始まる。
料理はこの辺りの郷土料理を王都風にアレンジしたものと説明されたが、元は日本で制作されたゲームだからか、現代でもよく食べたりテレビで見たことがあるような外国の料理が出てきて、特に目新しいものはない。味も可もなく不可もなし……まあ、貧乏舌で根っからの庶民の私からしたら何でも美味く頂けてはいるんだけどね。
デザートまで完食し、食後のティータイムをゆっくりと過ごして――あっという間に約束の時間が訪れる。
調査報告書を眺めながら紅茶を飲んでいたが、重厚な扉を叩く音に、空気が引き締まった。
入室を許可すると、目付きの鋭い中肉中背の老人が入ってくる……その後を従者らしき中年の男が入ってきて、扉を閉められる……。
って、あれ? 二人が来ないまま扉が閉められた。リリーナとゼオンは……? 疑問に思っていると、男は一定の距離で立ち止まり、恭しく頭を下げた。
「お初にお目にかかります。わたくしがフーリン商会会長、グレッグ・フーリンにございます。この度は、誠にご愁傷様でございました。心からお悔やみ申し上げます。突然旦那様が亡くなられて、夫人の心もまだ癒えてはいないことでしょう。これからは我がフーリン商会が一丸となってお力にならせて頂きます故、なんなりとお申し付けくださいませ」
『これから』て。いきなり売り込んできやがった。
軽く咳払いを一つして、世間知らずのお姫様モードに切り替える。
「お心遣い、感謝致しますわ。改めて、お初にお目に掛かります。手紙で伝えていた通り、本日は貴方の娘であるリリーナ・フーリンと、孫のゼオン・フーリンの事で話し合いをすることになっておりましたが……何故当人たちがいらっしゃらないのですか?」
「はい。当初は本人も来るつもりのようでしたが、今朝になって孫の具合が悪くなり、娘が付きっ切りで看病すると聞かなくて……。まあ、奥様も一度娘とお会いして、あの娘の性格はなんとなくおわかりでしょう? あれに難しい話は不可能です」
……言いたいことはわかるが、言い方腹立つな。それに、視線や表情から、私を下に見るような尊大さが見え隠れしている。……まあ、世間知らずを装ってるから思惑通りといえばそうなんだけど、あからさま過ぎてイラッとする。
「……いえ、出来ることならリリーナ様にも是非お話を伺いたかっただけですわ。息子さんの体調不良ともならば仕方がありません。どうぞ、お座りになって。席に着いたら、早速話し合いを始めましょう」
ニッコリ微笑んで、グレッグの瞳を真っ直ぐ見据える。
パチッ! と静電気のような火花が放たれたような気がしたのは、きっと気の所為ではないだろう。
お付き合い頂き、本当にありがとうございます。




