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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
白の章

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第九十九話 ルームスの地獄

アーテルに生きる希望を持たせるべく、王都の城下町を観光していたらルームスに出会ったアルクス。

ルームスは相変わらずの様子ですが……?


どうぞお楽しみください。

「ルームス……」

「……何故お前が外を歩いている……? 捕まって牢に入れられているはずじゃ……! うわ! 化け物男まで!」


 ルームスは慌てた様子で私と先生を見つめる。

 相当驚いているなぁ。

 ルームスは私が殴った事と、先生が剣で刺しても死ななかった事を国に訴えたから、捕まったと思い込んでるみたい。

 もし私がブルブスさんの左手を緑の初級回復魔法で治してなかったら、本当にそうなってたかもしれない。

 考えてみれば、先生と出会えたのもこいつに『専魔の腕輪』を付けさせられた事だし、人生何が幸福につながるかわからないものだなぁ。


「ははぁん。成程、そういう事か。いやはや『王家の盾』の騎士ともなると実に慈悲深い」

「は?」

「この罪人共が刑を受ける前に、少しでも良い思いをさせてやろうという心意気、ルトゥム家三男ルームス、心より感服いたしました」

「……」

「こんなお慈悲を受けるなんて、一体どれだけぶち込まれるのかなぁ!? ひゃはは! 僕を殴った罰だ!」

「……」


 驚いた……。

 何でここまで自分の都合のいいように考えられるんだろ……。

 あ、先生が顔押さえて震えてる……。

 笑いをこらえるのに必死なんだろうなぁ……。


「ルームス・ルトゥム」

「はっ!」


 ブルブスさんの硬い声に、ルームスは背筋を伸ばす。


「貴殿は何故アーテル様を刺した?」

「アーテル、様……? 何故このような罪人に敬称を……?」

「答えよ」

「はっ! 貴族を愚弄し貶める者、それは国の定めた身分を軽んじ、ひいては国の為にならない存在。そんな叛意が広がる前に貴族の義務として押し留めたのです」

「……」

「しかしこいつは剣で刺しても死なない化け物でした。こんな醜悪な存在を消し去るには、偉大なる国の力をお借りするのが一番と、ご報告したのであります」

「……」


 わ、ブルブスさんの眉間にすごいしわ……。

 先生が何のために五百年生きてたのかとか知ってるから、まぁそうなるよねぇ……。


「……アルクス嬢を訴えたのは何故だ?」

「この女も貴族である僕に逆らい、あろう事か暴力を振るったのです。仮面の化け物同様国にあだなす者。しかも鎧を砕く怪力。国の法で裁かれるべきと思い」

「もう良い。よくわかった」


 ルームスの言葉を遮ったブルブスさんが、左手をさっと上げた。

 するとどこからともなく騎士の人が集まって来た。


「捕えよ」

「はっ」

「は……?」


 声と共に左手がルームスを指すと、騎士の人達はあっという間にルームスを縛り上げた。

 立ったまま縛り上げるなんて、すごい……。


「な、何をなさるのですか!? 縛られるべきはその化け物共で……!」

「黙れ。貴様が害そうとした二人は、我らが国王陛下の命を救い、またこれから命をかけて数多の国と人々を救おうとしている方々だ」

「は……? な、何を仰っているのですか!? 貧乏貧相法術士女と、見た目からして怪しい得体の知れない化け物男ですよ!?」


 貧相ってどこの事だこの野郎。

 先生の見た目が怪しいのは、理由があるとはいえ、うん……。


「……病で命尽きようとしていた陛下の未来を救ってくださったお二人に、これ以上の愚弄は許さぬ」

「え、な、何かの間違いでは……!? こいつは初級魔法しか使えなくなる『専魔の腕輪』で、僅かな傷しか治せないはずで……!」

「アーテル様がそこに別の効果を付与する方法を教え、アルクス嬢がそれを我が物とし、治療に成功したのだ。冒険者を救う魔吸石まきゅうせきもお二人の手柄だ」

「魔吸石!? そ、そんな、馬鹿な……! ぼ、僕が、間違う筈がない! 僕は正しい! 正しいんだ! 間違ってるのはお前らだ! ふざけるなアルクス!」


 真っ青になってわけのわからない事をわめくルームス。

 あまりの情けなさに、何だか可哀想にさえ思えてくる。


「二度目だ。黙れ」

「ひっ……!」


 いつの間にか剣を抜いていたブルブスさんが、その刃をルームスの喉に突きつける。


「私はこの件に関して、陛下から全権を任されている。この場で貴様を処刑する事も、連座でルトゥム侯爵家を取り潰す事もできるのだ」

「そ、そんな……! 我が家を取り潰すなんて……! 嘘、嘘ですよね……!?」

「嘘か真実か、その身をもって知るか?」

「……!」


 ルームスの一番のよりどころが崩れたんだろう。

 力なくうなだれるルームス。


「……う、嘘だ……。僕は、侯爵家の子なんだ……。皆が僕の為に動くんだ……。だから僕は……。なのに何で、何でこんな事に……」


 何だかぶつぶつ言ってる……。

 何でこんな風になっちゃったんだろ……。

 冒険者仲間の時は、わがままは言うし自分勝手ではあったけど、暴力を振るったり、ましてや人を殺そうとしたりする人じゃなかったのに……。


「アーテル様、アルクスさん、この者をどういたしますか?」

「え?」


 ブルブスさん、急に何を……?


「お二人は被害を受けたのですから、お望みの罰を仰ってください。どんな罰でも執行してご覧に入れますよ」

「まー、俺は何でもいいや。アルクスはどうしたい?」

「……え、っと……」


 正直先生が生きててくれたから、もうルームスの事なんてどうでもいいんだよね……。


「あの、先生が怒ってないなら、私も別に……。もうこんな事にならないようにしてもらえれば……」

「わかりました。では死刑にいたしましょう」


 えっ!?


「な、何でそうなるんですか!?」

「二度と同じ事を繰り返さないためには、それが一番です。この者が反省して更生するのは難しいと思いますので」

「だからって死刑はちょっと……!」


 そんなの後味が悪すぎる!


「そうかー。アルクスは馬鹿貴族が死ぬのは嫌かー」

「そ、そりゃそうですよ! 私のせいで人が死ぬとか、絶対に嫌です!」

「わかった」


 ん? わかったって何が?


「盾の旦那ー。そいつとちょっと話してもいいですかねー?」

「勿論です。どうぞ」


 先生がまだぶつぶつ言ってるルームスに向かう。

 ……一体何を話すつもりなんだろ……?

読了ありがとうございます。


やっちゃえアーテル。


次回もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] まだわかってないなあ… 自分のせいで、家までヤバいことになりそうなことに…
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