表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/402

蒸しシフォンケーキ

異世界キッチンも冬のフェアメニューに向けて切り替えの時期。

日本時間の12月頭に秋のフェアメニューから冬のフェアメニューに切り替わる。

アヌーク曰く冬は基本的に少し豪華な感じのものを考えているとか。

フェアメニューは基本方針として定番に比べ少しいい食材を使うのだ。


「この辺りでしょうか、噂の料理屋は」


「なんでも安く美味しい甘味が食べられるとか」


「甘いものが好きな身としては食べないといけませんね」


「む?ここですね、では」


彼の名はベント、この国で今年新たに裁判官になった者だ。


甘いものに目がないそうで、国の知り合いからここの話を聞いたらしい。


「ふむ、防犯は出来ているんですね」


「中は温かいですね、羽織っていると暑いぐらいだ」


「見た事もないキカイも多いですし、オーナーはどんな人なのか」


「いらっしゃいませ!何名様ですか!」


「一人ですよ」


「かしこまりました、おタバコはお吸いになられますか」


「いえ、吸いません」


「かしこまりました、では禁煙席にご案内します」


「給仕はみな若いのですね」


そうして席に案内される。

そこで一通りの説明を受ける。


説明は問題なく理解した模様。

リーザは一旦下がり別の注文を受けに行く。


「そういえば水はセルフでしたか」


「ここにコップを当てて…それにしてもこのキカイは隣国でも見ないものばかりだ」


「あとは手拭きと氷、それにしてもどこから仕入れているのやら」


「さて、注文を決めますか、料理自体は多様なんですね、肉の種類とかも選べる」


「とりあえず甘味ですね、甘味だけでもこんなに…何にするか」


「む?これは…温かい甘味というのも面白そうですね、これにしましょう」


「確かこのボタンで」


ボタンを鳴らして店員を呼ぶ。

少ししてエトが出てくる。


「お待たせしました、ご注文はお決まりですか」


「これとセットドリンクを」


「かしこまりました、ではオーダーを復唱させていただきます」


「蒸しシフォンケーキとドリンクバーです!」


「オーダー!蒸しシフォンケーキとドリンクバーです」


「喜んで!」


「少々お待ちください」


「料理人は奥なんですね、まあ当然ですか」


「さて、飲み物を選びに行きますか」


そうしてドリンクバーに飲み物を選びに行く。

一通り見て選んだのはアップルジュースだった。


そこは甘党なのか、ジュースをチョイスする。

やはり甘いものが好きなようだ。


「ん、これは美味しいですね」


「果実の香りも強いですが、何よりこの甘さ」


「こんな甘いものを作れるとは」


「似たものは知っていますが、味が段違いだ」


それから少しして蒸しシフォンケーキが運ばれてくる。

せいろで蒸し上げたシンプルなシフォンケーキだ。


「お待たせしました、蒸しシフォンケーキになります」


「どうも」


「こちらは伝票です、会計の際にお持ちください、それでは」


「ではいただきますか」


蒸しシフォンケーキ、シンプルなシフォンケーキをせいろで蒸し上げた一品。

せいろで蒸す事で独特な味になるとアヌークは言う。


味付けはシンプルにシナモンと粉砂糖のみ。

そのため値段自体は控えめなデザートだ。


とはいえ蒸し料理というのはこっちの世界では珍しいとイクスラは言う。

そのため同じ蒸し料理の焼売や小籠包などもこの店の人気商品だ。


そして蒸し料理の一番人気は桃まんなのだから、甘いものの人気が窺える。

この蒸しシフォンケーキもせいろというものが珍しいのか、結構出ている。


料理人の客曰く蒸し料理について教えて欲しいとかもあった。

蒸しシフォンケーキ、桃まん、焼売や小籠包、蒸し料理はこっちの世界では珍しいのだ。


「ん、これは美味しいですね、シンプルなのにきちんとした甘さがある」


「それにこの容器、これは植物製でしょうか」


「しっかりと熱が通っているのも興味深いですね」


「温かいケーキというのも新鮮で、これはいいですね」


「味付けは砂糖と…あとは甘い味を出せる何か…」


「匂いは独特ですが、私は好きな味ですね、これは」


そうしているうちに蒸しシフォンケーキを完食する。

飲み物を飲み干し会計を済ませる事に。


「すみません、支払いをお願いします」


「はい、蒸しシフォンケーキとドリンクバーで銅貨五枚になります」


「ではこれで」


「ちょうどいただきます」


「満足していただけマシタか」


「あなたがシェフですか」


「ハイ、料理人兼オーナーのアヌークといいマス」


「とても美味しかったですよ」


「それは何よりデス」


「あのケーキに使っていた容器はなんなのですか」


「あれはせいろデスね、蒸し器デス」


「蒸す?」


「簡単に言うと水を熱してそこから出る熱で調理するやり方デス」


「そんな調理法もあるんですね」


「ハイ、こっちでは珍しいと聞きマシタ」


「確かにあまり聞きませんね」


「あとこれを、指定された料理を割引になるクーポンデス」


「あ、すみません」


「そこに描いてある料理を安く出来るので、機会があればドウゾ、譲渡してもいいデスよ」


「分かりました、では私はそろそろ仕事に戻りますね、失礼します」


「こっちって甘党の男の人が珍しくないよね」


「いい世界だと思いマスね」


そうしてベントは満足気に帰っていった。

クーポンは後日同僚と一緒に食事をするのに使ったという。


甘党の男の人にも優しい世界です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ