宇治金時
異世界キッチンも夏になり涼みに来る客も増えていた。
やはり冷房の力は偉大なのだと感じさせられる。
また冷たいデザートやメニューもよく出ていた。
そんな今日の開店前にアヌークがアレッシオとリーザに相談があるらしい。
「アレッシオサン、リーザサン、少しいいデスか」
「はい、なんでしょう」
「あたし達に頼み事とか?」
「そうデス、とりあえずこれでも食べながら聞いてクダサイ」
アレッシオにはカルピス、リーザには宇治金時のかき氷を出す。
とりあえず本題に入る。
「実はデスね、このメニューの翻訳をお願いしたいのデス」
「翻訳?」
「ってなに?」
「簡単に言うとこっちの言葉に直して欲しいって事だよ」
「そういえば絵はあるけど、文字はアヌークさんの国の言葉ですよね」
「つまりメニューの料理の名前とかをあたし達の国の言葉に直せばいいの?」
「ハイ、そういう事デス」
「でもメニューって凄く多いよね?全部手作業でやるの?」
「印刷はこっちでやりマス、文字を直してくれればいいデスよ」
「それだけでいいんだ」
アヌークが言うにはメニューをこっちの世界の言葉に翻訳して欲しいとの事。
印刷自体はアヌークが手配するので特に問題はない。
ただ気になっている事もある様子。
それについても聞いてみる。
「そういえば読み書きは出来マスよね?」
「出来ますよ、学校には行ってないけど教材は国から配布されるから」
「あたしも、学校自体はあるけど大体は貴族でもないと行けないよね」
「でも勉強はしてるんだ、国から教材が配布されるんだね」
「うん、学校に行けない家庭の人に限定されるけどね」
「だから勉強自体はあたしもアレッシオもしてるよね」
「そういう教育システムなのか、なかなかに面白いね」
「王様が教育だけでも平等に出来ないかって考えてたみたい」
「それで国の税金で貴族未満の家庭の子供には教材が無料で配布されるんです」
「その政策が始まったのが10年前ぐらいだったかな」
「だとしたら親の世代とかは?」
確かにそれは気になる話だ。
アレッシオやリーザの世代は国の税金により平民でも教育は受けられる。
ただリーザが言うように10年前ぐらいからの政策だという。
なので親の世代は教育を受けているのかと。
「僕の両親が言うにはある程度の貴族から教わってたそうですよ」
「そうなの?」
「元々この国は貴族は上に立つ者としての責任感は強いんだよ」
「つまり今の教育システムになる前は貴族から教わっていたと」
「それも面白いデスね、私の国でも教師はある程度の年齢の人は多いデス」
「だから学校は貴族の特権なのは今でも変わらないけど、教育自体は受けてたみたい」
「それなら安心デスかね」
「それでメニューの翻訳だよね?一人で全部は大変だから分担しようよ」
「なら僕はメインの料理をやります、リーザさんは甘味とかサイドの料理を頼めますか」
「アレッシオ、本気?量だけなら凄いあるよ」
「僕ももっと役に立ちたいんです」
「分かりマシタ、ではそれでお願いしマス、あと急がなくていいデスよ」
「そうなの?ならゆっくりやればいいのかな?」
「ハイ、それで構いまセン」
「分かりました、それじゃあ終わったら持ってきますね」
「あたし達もメニューだけは全部暗記しちゃったからね」
「それは頼もしいデス」
「あとこの宇治金時また食べさせてね、あんこの氷菓子なんて最高じゃん」
「リーザさんったら…」
「この二人もいい感じに仲良しだよね」
「年の差デスけどね」
こうして二人にメニューの翻訳を任せる事となった。
翻訳されたものが届くのはしばらく先になりそうだ。
ちなみにアレッシオとリーザは仕事終わりには一緒に休んでいるらしい。




