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シーフードピザ

夏のメニューも順調に売れている異世界キッチン。

そんな夏のメニューの他にも定番メニューもよく売れる。

採算の多くは飲み物なのがファミレスなどのお約束だ。

とはいえアヌークはあくまでも料理を食べて欲しいと思うようで。

「この辺りだよな、噂の料理屋ってのは」

「なんでも美味い海の幸が食えるって聞くじゃねぇか」

「漁師やってる身としちゃあ気になる話だよな」

「お、ここか、うっし、行くか」

彼の名はバート、この国の港町で漁師をしている。

内陸のこの街で海の幸が食べられると聞いて気になって来てしまったようだ。

「二重扉にベル、清潔にはしてんだな」

「中は涼しいな、音楽が流れててキカイもたくさんある」

「飯屋って事だし、いろんな客が来てるんだな」

「いらっしゃいませ！何名様ですか！」

「ああ、一人だ」

「かしこまりました、おタバコはお吸いになられますか」

「一応吸うけど、飯の時は吸わないようにしてるぜ」

「かしこまりました、では禁煙席にご案内します」

「給仕か、あんな若い子が働いてんのか」

そうして席に案内される。

そこで説明を一通り聞く。

説明は問題なく理解した様子。

由菜は一旦奥に下がり他の注文を受けに行く。

「そういや水はセルフって言ってたな、取りに行くか」

「ここにグラスを押し当てて…これだけで飲み水が出るのか、凄いな」

「あとは氷と手拭き、にしてもこれを全部自由に使えるのかよ」

「さて、注文を決めないとな、海の幸と…帰るのは明日だし、酒でも飲むか」

「メニューは豊富なんだな、コメに麺にパン、肉に魚に野菜に甘味まで」

「とりあえず海の幸と酒…酒に合いそうなもんがいいな」

「お、こいつは…よし、こいつにするか」

「確かこのボタンで…」

ボタンを鳴らして店員を呼ぶ。

少ししてアレッシオが出てくる。

「お待たせしました、ご注文はお決まりですか」

「ああ、こいつとこいつを頼む」

「シーフードピザとビールですね、ビールはラガーとエールがありますが」

「ならラガーで頼む」

「かしこまりました、ジョッキと瓶がありますが、それはどちらになさいますか」

「ジョッキって方で頼む、あとお代わりは出来るのか？」

「出来ますよ、ただ今はディナー前なので割引にはなりませんがよろしいですか？」

「それは構わない」

「かしこまりました、ではオーダーを復唱させていただきます」

「シーフードピザとラガービールをジョッキです！」

「オーダー！シーフードピザとラガービールをジョッキです！」

「喜んで！」

「では少々お待ちください」

「料理人は奥なのか、まあそうか」

それから少しして先にジョッキのビールが運ばれてくる。

アルコール類はビールのラガーとエールのように、様々を置いている。

それこそ日本酒からワイン、焼酎や紹興酒に梅酒にビールまで。

ちなみに最安のアルコールはロックの梅酒などが銅貨一枚から飲めたりする。

「お待たせしました、先にラガービールのジョッキです」

「おう、サンキュ」

「お代わりが必要ならまたお呼びください、シーフードピザはもう少々お待ちください」

「さて、飲むか」

「んっ、こいつは…めっちゃ美味いな、こんなごくごく飲める酒ははじめてだ」

「っぱぁ！にしても酒だけでも凄い種類があったな」

「んっ、ふぅ、お代わりも頼むか」

そんなわけでお代わりも頼む事に。

それから少ししてシーフードピザと二杯目のビールが運ばれてくる。

「お待たせしました、シーフードピザとビールのお代わりです」

「おう、サンキュ」

「こちらは伝票です、会計の際にお持ちください、あとピザはこれでカットしてください」

「分かった、すまないな」

「それでは」

「さて、食うかな」

シーフードピザ、海の幸が豊富に乗った夏らしさを感じるピザだ。

シーフードというとカレーなどもそうだが、夏をイメージさせる。

そんなこのシーフードピザは夏限定のメニューでもある。

普段出しているのはイカとアンチョビのピザだ。

今は夏という事もあり、シーフードピザを出している。

そして他にもシーフードカレーなども出しているので、夏はシーフードらしい。

アヌークも年齢的にそんなイメージのある年齢ではある。

夏といえばシーフード、少し昔はそんなイメージもあった。

ちなみにこのシーフードピザはイカにタコ、カニやアンチョビなど豊富に乗っている。

この手のシーフードはイカはまず外せない鉄板だ。

そしてアヌーク流として白身の魚のほぐし身も乗せている。

チーズとオリーブオイル、そこにシーフードという海の旨味の塊である。

「ん、こいつは美味いな、チーズと海の幸が凄くよく合う」

「見る限りだと、軟体の生き物と魚の身、あとは加工品とかか？」

「でも酒にも合うし、こいつはいいな」

「でもこんな美味い食い方があるのか」

「生地はパン生地か？それにチーズとソースを乗せて海の幸を乗せてるのか」

「こいつは本当に美味いな、まさか海の幸とチーズっていうのはなかったぜ」

そんなシーフードピザを美味しそうに完食する。

ビールを飲み干し会計を済ませる事に。

「すまん、支払いを頼む」

「はい、シーフードピザとビールを二杯ですね、全部で銀貨一枚と銅貨二枚になります」

「ならこいつで頼む」

「ちょうどいただきます」

「満足していただけマシタか」

「あんたが料理人か」

「ハイ、シェフ兼オーナーのアヌークといいマス」

「酒も料理も凄く美味かったぜ、あんた凄いんだな」

「一応プロの料理人デスから」

「そういやピザに乗ってた軟体の生き物っぽいのはなんだ？」

「あれはイカとタコデス、ほぐし身はカニと白身の魚、あとは魚の塩漬けデスネ」

「イカとタコ？」

「足が八本ある生き物と十本ある生き物デス」

「それなら分かるぜ、でもそんなものまで食うんだな」

「こちらでは食べないのデスか？」

「どっちも海の悪魔って言われてるからな、食べようなんて勇気はほとんどの奴はない」

「なるほど」

「でもあんな美味いならこっちでも食えると思う、何か簡単なレシピとかないか？」

「ならシンプルに焼いたものに調味料をつけるだけでも美味しいデスよ」

「なるほど、なら試してみるわ」

「広まるといいデスネ」

「それじゃ俺は行くわ、機会があればまた食べに来るぜ」

「漁師さんとかかな」

「だと思いマス」

バートはこうして上機嫌で帰っていった。

イカとタコの料理が広まる事になるのはまたもう少し先の話。

ここの料理から普段食べないものも食べられ始めたりしているようである。