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フローズンチーズケーキ

売上も確実に軌道に乗り始めた異世界キッチン。

そんな今日は開店前の仕込みの時間。

各自出勤してくる中アレッシオが誰かを連れている様子。

どうにも逃げ出した人と縁があるようである。


「おはようございます」


「ハイ、おはようございマス」


「あれ?その子は誰かな」


「一番のお客様ってわけでもなさそうだね」


アレッシオが連れているのはそれなりにいいお召し物の少女。


一応話を聞く事にした。


「すみマセン、もしかしてどこかから逃げてきまシタか?」


「だったら何よ」


「一応こっちも開店準備しなきゃいけないんだけどね」


「ここはなんなの?」


「ここはファミレスだよ」


「ふぁみ?何よそれ」


「レストランの事だよ」


「ふーん、開店前なのよね」


「ハイ、そうデスよ」


「一応名前を聞かせてもらっていい」


「リーナ、エミリーナっていうんだけどみんなはリーナって呼ぶから」


「うん、それでリーナはどこから来たのかな」


「どうせ告げ口するんでしょ、言うわけないわ」


どうやら今までも見たようなケースらしい。

とりあえず外の様子を見てくるようにアレッシオに言う。


「どうデシタ」


「メイドっぽい人が人を探してましたよ」


「その人でいいのかな」


「どうせメイドのセレナだわ、追い返すかしら」


「うーん、どうする?」


「そうデスネ、ただ追い返すだけでは意味がありマセン」


「というと?」


「とりあえず少し様子を見まショウ」


「何よ、レストランなら何か食べさせてお金を取るつもり?」


「宣伝にしようって事かな」


「アヌークって逞しいよね」


「リーナサンはお召し物からして、そこそこお金持ちデスよね」


「一応中流貴族だけど」


「やっぱりなんだ」


「一応逃げてきた理由だけでも聞いていいかな」


「お父様が構ってくれないからよ、約束してたのに仕事だからって」


「貴族ならそういう事も珍しくはないと思うよね」


「それで怒って飛び出したんだ、今頃心配してるんじゃないかな」


「勝手に心配してればいいわ、約束を破る方が悪いのよ」


「困ったなぁ、どうするの?」


「もう一度様子を見てきてもらえマスか」


「あ、はい」


アレッシオがまた様子を見に行く。

それから少しして戻ってくる。


リーナは相変わらず頑固な様子。

見た感じ12歳ぐらいに見えるので、これぐらいの歳の子供は頑固なものだ。


子供は意外と分かりやすい反応をする。

アヌークはそれをよく知っている。


「なんか髭のおじさんが増えてました」


「ウィルお父様ね、私は知らないんだから」


「この年頃の子供が頑固なのは知ってマスが」


「なんで僕を見るの?」


「いや、アレッシオは反抗期とか来なさそうだなぁって」


「とはいえどうするの?」


「開店時間まではまだあるとはいえねぇ」


「そうだ、何か食べる?」


「お金を取るんでしょ?ならいらないわ」


「宣伝と考えれば安いデスかね、一応そこまで高いものは出しマセンよ」


「ふーん…ならお父様に払わせるわ、それならいいわよ」


「細やかな反抗…まあいいか、何かある?」


「フローズンチーズケーキならありマスよ」


「ならそれでいいかな」


「ふろ?何よそれ」


「アイスケーキの一種だよ、冷たいケーキの事」


「冷たいケーキって、別に珍しくもないんじゃない」


「とりあえずね、出してあげるから」


「ドウゾ、フローズンチーズケーキデス」


「私の知ってるケーキより冷やりしてる、ならいただくわ」


「アレッシオサン、ミルクセーキを持ってきてクダサイ」


「あ、はい」


そうしてドリンクバーからアレッシオがミルクセーキを持ってくる。

牛乳と卵を使った優しい味の飲み物。


適度に甘く飲みやすい。

暑い時には冷やして飲むととても美味しいものだ。


「これ飲み物」


「あら、どうも」


「それで美味しい?」


「少し固いけど、美味しいわね、ケーキなのに氷菓子みたい」


「そういうケーキなんだよ」


「こんなケーキがあったのね、ここはそういうのがたくさんあるの?」


「ハイ、フローズンケーキは夏限定デスガ」


「この飲み物は何なの?ミルクセーキとか言ってたけど」


「卵と牛乳で作った飲み物だよ」


「ふーん…何これ、めっちゃ美味しい」


「ミルクセーキは人気だよね、子連れのお客とかが来ると消費も早いし」


「アレッシオサン」


「うん、分かった」


また外の様子を見に行く。

こういう時はアレッシオに任せるのが一番だとアヌークも分かっている。


それから少ししてアレッシオが戻ってくる。

リーナは美味しそうにケーキを食べているが。


「まだ探してましたよ」


「やっぱり帰りたくないかな」


「別に帰るのが嫌なんじゃないわ、約束を破った事が許せないだけよ」


「あ、帰るのはいいんだ」


「仕方ないデスネ、一応開店時間もありマスし、話をしマスか、アレッシオサン」


「分かりました」


そうして店の外で探していた父親とメイドを連れてくる。

二人はかなり心配していたようだが。


「リーナお嬢様!探したのですよ!」


「リーナ、すまない、今回は私の方が想定していなくてな」


「…なら今度は約束を守ってくれる?」


「もちろんだ、好きなところに連れて行くし食べたいものがあれば何でも言いなさい」


「ならこのお店に食べに来たい、もちろん全部お父様が払ってね」


「そういえばここは?」


「レストランなんだって」


「あなた方は従業員ですか」


「オーナー兼シェフのアヌークデス」


「料理人の美紗子です」


「えっと、ウェイターの由菜だよ」


「同じくウェイターのアレッシオです」


「そうか、娘が世話になったね、そういえば何かいただいたのかな」


「フローズンチーズケーキっていうのとミルクセーキっていうの」


「飲み物は今回はサービスにしておきマス、ケーキの分だけでいいデスよ」


「これを」


「…ケーキがこんな安いのか?粗悪品というわけでもないと思うが」


「ここの標準的な値段ですよ」


「ケーキなのに氷菓子みたいだったの」


「それでこの金額…にわかには信じられませんね」


「まあいい、娘が満足しているのだしね、これで頼めるかな」


「ちょうどいただきます」


「では帰ろう、リーナ、今度必ず予定を空けてここに食べに来るぞ」


「いろいろすみませんでした」


「今度はお客として来るわね、ありがと」


「貴族とか身分の高い家の子は逃げるのがお約束なのかな」


「窮屈なんじゃないの」


「平民の僕にはよく分からないや」


「貴族にも事情はあるものデスよ」


こうしてリーナは帰っていった。

父親も約束を守るために今ある仕事を一気に片付けているとか。


ファミレスとはファミリーレストラン、家族連れが名前の通りのターゲットである。

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