チキンタツタバーガー
すっかり冬本番の寒さになった王都。
そんな中店にやってくる客は暖房による暖かさ目当てで来る事もある。
とはいえ安いメニューでもしっかり頼んでくれる辺り人はいいようだ。
またテイクアウトや宅配もしっかりと知名度は上がっている様子。
「今回の届け先はどこかしら」
「3番街のラントさんの家ですね」
「3番街か、そんなに遠くはないわね」
「はい、行きますよ」
今回の届け先は3番街。
そんなに遠くはないのでさっさと届けてしまう事に。
「今回の注文は何かしら」
「チキンタツタバーガーですね」
「チキンタツタバーガー?」
「はい、竜田揚げというフライドチキンを挟んだハンバーガーですね」
「つまり普通のフライドチキンじゃないって事かしら?」
「はい、竜田揚げという揚げ方があるみたいですね」
「竜田揚げねぇ、つまりフライドチキンではあるけど揚げ方によって名前が変わるみたいな?」
「ええ、竜田揚げは普通のフライドチキンよりもサクサク感が強いみたいですね」
「ふーん、フライドチキンにも様々なのね」
「はい、実際お店でも竜田揚げは選択肢としてあるみたいですし」
「唐揚げとか竜田揚げとか、フライドチキン一つにも色んな種類があるのね」
「そうですね、竜田揚げが好きな常連客もいるみたいですし」
「竜田揚げ、でも鶏肉もすっかり浸透したものよね」
「以前は貧乏人も食べない肉とすら言われていたのが信じられませんよね」
「ええ、ブランドの鶏肉まで生まれてるし」
「鶏肉がそれだけ食べられていなかったのは、骨が多いからというのが理由だったんですよね」
「骨の取り除き方が分かれば普通に美味しい肉だったって事なのよね」
「そうみたいですね、鶏肉は大量生産出来る安価な肉として庶民の強い味方になってますし」
「実際鶏ってそんな早く育つものなの?」
「養鶏を始めた人の話では三ヶ月ぐらいで成鳥になるらしく、肉も卵もたくさん取れるとか」
「三ヶ月で成鳥って、凄く早くない?」
「ええ、それに加えて凄く大量にまとめて育てられるのでコスパも凄くいいらしいです」
「鶏肉ってそんなに大量に作れるなんて凄いのねぇ」
「だからこそ安価な肉として庶民にとっては凄くありがたいんですよ」
「今までは庶民の肉といえば豚肉だったもんね」
「ええ、豚肉も今でも根強い人気ですが鶏肉も負けないぐらい人気なんですよね」
「こっちかしら?」
「三つ目の道を東ですね」
鶏肉は今ではすっかり庶民の肉として定着した。
鶏肉が食べられていなかったのは骨の多さが理由だという。
だからこそ骨の取り除き方が分かれば、あとは定着するのに時間はかからない。
結果として鶏肉は今ではすっかり庶民に受け入れられた。
またブランド鶏みたいな高級鶏肉も生まれているという。
分かってしまえばあとは早いという事なのだろう。
「それにしても鶏肉って安いのに美味しいから凄い肉だったのね」
「食べられていなかったのは骨の多さが理由でしたからね」
「でも鳥肉って煮ても焼いても揚げても美味しいからそこは強いわよね」
「鳥肉は煮込み料理にも使えますし、焼いてステーキにしてもいいですしね」
「チキンステーキみたいなメニューもお店にはあるものね」
「そうなんですよね、鶏肉のステーキというのも美味しいものですよ」
「鶏肉は骨も食べられるって聞いたんだけど」
「焼き鳥なんかだと軟骨は意外と人気みたいですね」
「軟骨って骨ではないけど、柔らかい骨周りの肉って事なのかしら」
「一応骨ではあるみたいです、名前の通り柔らかい骨っていう事みたいですよ」
「柔らかい骨、人の好みって分からないものよね」
「軟骨は一羽の鶏から取れる量が少ないみたいですしね」
「つまり鶏肉としては希少な部位になるのかしら」
「一応そういう扱いみたいですね」
「こっちかしら?」
「この先の道を南東ですよ」
そのまま3番街に入っていく。
ラントさんの家はすぐそこだ。
「ここかしら」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「えっと、先に銀貨二枚をいただきます」
「これでお願いします」
「ちょうどいただきます、ではこちらがチキンタツタバーガー四つになります」
「ありがとうございます」
「包み紙は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただきますか」
チキンタツタバーガー、竜田揚げの鶏肉を挟んだハンバーガーだ。
竜田揚げは醤油や生姜の味が強めの揚げ物でもある。
そこにサクサクとした衣の軽快感が美味しさを引き立てる。
竜田揚げは味付けに醤油や生姜を使っているので、和風の揚げ物ではある。
そこに千切りキャベツとマヨネーズソースを挟む事でその味を引き立てる。
竜田揚げにはやはり千切りキャベツなのだという。
「うん、これは美味しいですね、サクサクとした軽い衣の鶏肉をパンに挟んであるんですか」
「あとは細かく切った葉野菜、ソースはマヨネーズと呼ばれるものでしたね」
「肉はしっかりと厚みがあるのに、柔らかくて食べやすい」
「パンもふかふかで肉と一緒に食べるとソースが染みて美味しくなる」
「肉をパンに挟むというシンプルな料理なのにこんなに美味しいとは」
「肉にも衣にもしっかりと味がついているのが美味しさの理由のようです」
その頃のエト達は帰り際に休憩していた。
温かい麦茶が体に染みる。
「ふぅ、温かい麦茶は美味しいものよね」
「ええ、寒い日は体がポカポカになりますよ」
「この魔法瓶っていう水筒は、冷たいものはぬるくならないし温かいものも冷めないし」
「不思議な水筒ですよね」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻ったわよ」
「お帰り、はい、温かいおしぼり」
「ありがとうございます」
「外はすっかり冬みたいデスね」
「ええ、冬服への衣替えも済ませたしね」
「防寒着も役に立ってるみたいだしね」
「はい、おかげで暖かいですよ」
「冬本番、外に行く時は寒さ対策デスね」
外はすっかり冬の寒さである。
雪が降るのは珍しい土地ではあるものの、寒さはしっかりとある。
冬の寒さは温かい料理が美味しく感じる理由でもある。




