カキフライ弁当
すっかり秋の空気になった王都の景色。
店の方も宅配の知名度が上がり注文は前よりも増えている。
またテイクアウト限定のデザートなんかも売れ行きは好調だ。
ただし必ずにすぐに食べるようにとの念押しは忘れないが。
「今回の届け先はどこかな」
「10番街のリンダさんの家ですね」
「10番街だね、そんなに遠くはないかな」
「はい、行きますよ」
今回の届け先は10番街。
そんなに遠くはないのでさっさと届けてしまう事に。
「今回の注文は何かな」
「カキフライ弁当ですね」
「カキフライ弁当?」
「はい、牡蠣という貝のフライのお弁当の事ですね」
「カキフライ、そういえばこの季節は牡蠣が美味しい季節って言ってたっけ」
「みたいです、カキは秋が特に美味しいそうなので」
「でも牡蠣って美味しいよね、あたしは好きかも」
「リーザさんの故郷だと貝なんかも食べるんでしたっけ」
「うん、食べるよ、貝類は漁師じゃなくて海女さんが採ってくるんだよね」
「でも牡蠣というのはノロウイルスというのに感染する可能性もあるとは聞きますね」
「ノロウイルス?そういう病気があるのかな」
「お店で出している牡蠣はかかる可能性極めて低いらしいとは聞きますが」
「ノロウイルスってそんなに怖いのかな」
「トイレとお友達になる程度にはお腹が痛くなるらしいですよ」
「トイレと友達って、普通に怖いね」
「それぐらいお腹が痛くなるらしいので、ノロウイルスは」
「でも加熱してあればかかる可能性は極めて低いってことだよね?」
「みたいですね、でも牡蠣はそういうものらしいですよ」
「牡蠣って怖いんだなぁ、それでも美味しいのは凄いけど」
「それでもカキフライは人気のメニューの一つみたいですけどね」
「とはいえカキフライかぁ、あたしも好きだけどね」
「牡蠣は海のミルクなんていう風にも言われているらしいですよ」
「海のミルク、その表現は面白いね」
「それだけ濃厚な味がするっていう事なんでしょうね」
「ミルクみたいに濃厚な味だから海のミルクなのかな」
「かもしれませんね、海のミルクという表現は面白いですし」
「こっちかな?」
「二つ目の道を西ですね」
牡蠣の怖さはノロウイルスにあるというのは言うまでもない。
とはいえ加熱してあるのならノロウイルスにかかる確率は極めて低くなる。
それでも0になるという事は決してない。
なおそれでもカキフライは秋のフェアメニューでは人気のメニューの一つだ。
リーザも牡蠣は好きらしく、帰る時にもらっていく事もあるという。
離島出身のリーザからすれば海の幸の美味しさも知っているという事なのか。
「そういえばカキフライってお店だと結構大きかったよね」
「季節によって生育具合が変わるので、サイズは常に大きいとは限らないみたいですね」
「まあ仮にも生き物ではあるもんね」
「ただ養殖している牡蠣なので、サイズはある程度コントロールは出来るとか」
「養殖って確か人の手で育てる技術の事だよね?」
「ええ、なので牡蠣の大きさは天然物に比べたら幅は小さいんだとか」
「養殖なんて凄いなぁ、どこの国の出身なんだろう」
「まあ牡蠣に関しては秋に特に美味しくなるので、秋のフェアメニューなんでしょうね」
「でも牡蠣って貝類の中では凄く美味しいよね、海のミルクって言われるのも納得かも」
「牡蠣はフライの他にも食べ方はあるものの、フライが一般的みたいですね」
「牡蠣ってそれこそ生でも食べられたりするんだっけ」
「生牡蠣はノロウイルスが怖いですけど、それでも食べる人はいると聞きますしね」
「とはいえやっぱり食べ物は加熱して食えっていう事なんだろうね」
「それは言うまでもないんでしょうけどね」
「こっちかな?」
「この先の道を北西ですよ」
そのまま10番街に入っていく。
リンダさんの家はすぐそこだ。
「ここかな」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨二枚をいただきます」
「これでお願いします」
「ちょうどいただきます、ではこちらがカキフライ弁当になります」
「ありがとうございます」
「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただきますか」
カキフライ弁当、カキフライがおかずになっている弁当だ。
カキフライは秋のフェアメニューであり、普段はメニューにはないものでもある。
そんなカキフライは秋になると食べに来る人がいる程度には人気でもある。
なお弁当のカキフライにはタルタルソースがついている。
普通のソースでもいいが、カキフライにはタルタルソースというのがアヌークの好みらしい。
ちなみにソースは一応選択は出来るが、特に指定がない場合はタルタルソースになるとか。
「うん、これは美味しいですね、肉厚で外はサクサクの揚げ物ですか」
「牡蠣というのは貝類と聞きましたが、王都で海の幸が食べられるとは」
「ソースはタルタルソースという卵のソースみたいですね」
「ライスと一緒に食べるとまた美味しいですね、塩気がよく合う」
「他にも漬物や野菜なんかも塩気がある分、ライスを美味しくしてくれる」
「肉厚な貝、凄く濃厚で実に美味しいです」
その頃のリーザ達は帰り際に休憩していた。
温かい麦茶が体に染みる。
「ふぅ、麦茶は本当に美味しいね」
「ええ、温かい麦茶が美味しい季節になりましたね」
「麦茶は温かくても美味しいからいいよね」
「ええ、体が内側から温まりますよ」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻ったよ」
「お帰り、はい、おしぼり」
「ありがとうございます」
「外はすっかり涼しくなったみたいデスね」
「うん、もうすっかり涼しくなったよ」
「なら夏服は完全にお役御免かな」
「はい、もうそれで大丈夫だと思います」
「なら秋服への衣替え完了でいいデスね」
そうして外はすっかり秋の涼しさに変わっている。
宅配の時も一枚羽織った方がいい程度には涼しいとか。
秋のフェアメニューも汁物以外は大体は宅配とテイクアウトに対応している。




