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秋刀魚の蒲焼き

すっかり秋の装いになった王都の景色。

店でも秋のフェアメニューは順調に売れている。

ちなみに店では定食のおかずは単品で頼む事も出来たりする。

定食のテイクアウトも出来るが、テイクアウトに汁物はつかない事になっている。

「また来てしまいました、ここの料理はどれも美味しくてつい通ってしまいます」

「それと季節によって変わる限定メニューもありますからね」

「そして特に秋には私が愛してやまないあれがある」

「さて、行きますか」

彼女の名はフレデリカ、港町で漁師をしている家の娘だ。

家の手伝いで王都に来る事があり、その際にここに寄る事がお約束になったようで。

「この扉の仕組みは面白いものですね、二重扉というのは実にいい」

「人は少ないですね、今は食事時ではないので、そういうものですが」

「いらっしゃいませ！何名様ですか！」

「一人です」

「かしこまりました、おタバコはお吸いになられますか」

「いえ、吸いませんよ」

「かしこまりました、では禁煙席にご案内しますね」

「スタッフが若いのは新たに開店したお店だからという感じですね」

そうして席に案内される。

説明は理解しているのでスムーズに進む。

簡単に説明を受けそのまま次へ。

タブレットの使い方も理解している様子。

「タブレットの使い方は分かりますね」

「はい、問題なく」

「分かりました、では何かあればお呼びください」

「さて、先に水を取りに行きましょうか」

そうしてエトは一旦下がり別の料理を運びに行く。

フレデリカは先に水を取りに行く事に。

「ここの水は飲み放題なのに無料というのは素晴らしい限りですよね」

「あとは氷と手拭き、使い捨てだと病気の予防なんかにもなるんですよね」

「さて、注文を決めてしまいましょうか」

「秋のフェアメニュー、ふむ、やはりありましたね、あと持ち帰り専用のデザート…」

「今回はこれにしましょうか、これとこれとこれとこれで確定と」

「このタブレットというのは実に便利ですね」

そうしてフレデリカはドリンクバーに飲み物を取りに行く。

迷わずに手を伸ばしたのはレモネードだった。

レモンの酸っぱさと甘い味が気に入っているという。

なおホットレモネードもあったりするので、そっちが好みの人もいる。

「はぁ、やはりレモネードは美味しいですね」

「しかしレモンの味がする甘い飲み物というのも最初は新鮮でしたね」

「この甘さとレモンの酸っぱさがいい感じに合っているんですよ」

「レモネードの美味しさはやはりこのレモンの味なんですよね」

そうしていると秋刀魚の蒲焼きが運ばれてくる。

秋刀魚の切り身を醤油味に焼いた秋のフェアメニューだ。

「お待たせしました、秋刀魚の蒲焼き定食になります」

「ありがとうございます」

「デザートが必要な時はお呼びください、それでは」

「さて、いただきましょうか」

秋刀魚の蒲焼き定食、秋刀魚の切り身を醤油味のタレで焼き上げたもの。

秋刀魚は秋のフェアメニューであり、塩焼きを始めとする多様なメニューがある。

秋刀魚の蒲焼きは頭と尾を切り落とした秋刀魚の切り身を醤油味に焼いたもの。

骨なども取り除いてあるので、食べやすいのが便利である。

ちなみに頭から尾まである秋刀魚の塩焼きなんかは、そこまで人気はない様子。

だからこそ育ちのいい人は秋刀魚の塩焼きなんかは綺麗に食べてくれる。

秋刀魚の蒲焼きは骨などは取り除かれた切り身なので、食べやすいという。

とはいえ秋刀魚自体は人気のフェアメニューでもある。

綺麗に食べるのが難しい人は切り身の秋刀魚料理をよく頼むとか。

秋刀魚の食べ方にも育ちが出るのは異世界でも変わらない様子。

「うん、これは美味しいですね、香ばしく焼かれた秋刀魚は実に美味しい」

「ライスと合わせるとまた美味しさが増すんですよね」

「しかし秋刀魚というのは細身の魚なんですよね」

「塩焼きなんかは綺麗に食べるのは難しいって聞きますしね」

「とはいえやはり魚はいいものですよね、王都で魚が食べられる幸せですよ」

「それにしてもこの味付けは、東方の調味料だと聞いていますが」

「醤油味、魚には何よりもいい調味料らしいですし」

「どこかで醤油が手に入るといいんですが」

そうしているうちに秋刀魚の蒲焼き定食を完食する。

続いてデザートを頼む事に。

「お待たせしました、デザートですか」

「はい、お願いします」

「かしこまりました、では器はお下げしますね、少々お待ちください」

それから少ししてマロンパイが運ばれてくる。

栗をふんだんに使った秋のデザートだ。

「お待たせしました、マロンパイになります」

「ありがとうございます」

「こちらは伝票です、会計の際にお持ちください、それでは」

「さて、いただきますか」

マロンパイ、栗を使った秋のデザートだ。

栗の甘さに加えマロンクリームもまた美味しいサクサクのパイである。

「うん、これは実に美味しいです、マロンパイ、栗の味がこれでもかとします」

「栗を使ってデザートを作る、森にある栗の実がこんなに美味しくなるとは」

「栗の実にも様々な使い方があるんですよね」

そうしているうちにマロンパイを完食する。

飲み物を飲み干し会計を済ませる事に。

「支払いをお願いします」

「はい！えっと、秋刀魚の蒲焼き定食とマロンパイとドリンクバーと焼き芋ですね」

「全部で銀貨一枚と銅貨一枚と青銅貨二枚になります」

「これでお願いします」

「ちょうどいただきます」

「あと持ち帰りの焼き芋二つになります」

「ありがとうございます」

「満足していただけているようデスね」

「これはシェフの方」

「秋刀魚がお好きのようデスね」

「はい、ここの料理はどれも美味しくて、特に魚が美味しいので」

「魚が好きという事は、海に近いところの人デスか」

「一応家は漁師をやっていますね」

「だから魚がお好きなのデスね」

「はい、秋刀魚というのは特に気に入っていて」

「秋刀魚は秋にこそ特に美味しい魚デス、塩焼きが定番デスが、食べ方も多様なのデスよ」

「塩焼きの秋刀魚は一尾丸ごとでしたけど、他の秋刀魚料理は切り身とかですよね？」

「ハイ、料理にする時はそっちの方が多いデス」

「でも焼いた魚を綺麗に食べられるのは凄いですよ」

「綺麗に食べるのは苦手なのデスか？」

「そういう事ではないんですが、秋刀魚のような細い魚になるとまた別というか」

「魚自体は綺麗に食べられるけど、魚の種類にもよるという事デスね」

「はい、まあ秋刀魚自体は大好きですよ」

「そう言ってくれるのは嬉しい限りデスね」

「ええ、ではそろそろ行きますね、ではまた食べに来ます」

「漁師だとやっぱり魚を食べる人は多いんだね」

「卸す分とはまた別に食べる分があるのデスよ、この手の話は」

そうしてフレデリカは満足して帰っていった。

仕事で王都に来る田舎の人は多く、その帰りに寄っていく人も多い。

だからこそ仕事で王都に来る楽しみがこの店の開店により増えた人も多いとか。