キムチチャーハン

王都もすっかり夏本番になり、暑さが強くなり始めた季節。

そんな中暑い夏は食べ物が痛むのもまた早くなる。

宅配やテイクアウトの料理も出来る限り早く食べるように言わねばならない。

食中毒の原因はどこにあるかもまた分からないものだ。

「今回の届け先はどこかしら」

「１１番街のアドレーさんの家ですね」

「１１番街ね、そんなに遠くはないわね」

「はい、行きますよ」

今回の届け先は１１番街。

そんなに遠くはないのでさっさと届けてしまう事に。

「今回の注文は何かしら」

「キムチチャーハンですね」

「キムチチャーハン？」

「はい、キムチという漬物を混ぜたチャーハンみたいです」

「漬物をチャーハンに混ぜるものなのね」

「キムチは白菜を唐辛子の汁に漬け込んだものらしいので、辛い漬物みたいですね」

「辛い漬物ねぇ、姫は辛い食べ物ってそこまで好きじゃないのよね」

「まあキムチは凄く辛いとまではいかないですからね」

「でも辛いんでしょ？姫はあまり食べたくはないわね」

「キムチというのは刻んで炒め物に混ぜたりすると美味しいそうですけどね」

「ふーん、でもそういう食べ方なら美味しそうに感じるかしら」

「辛い漬物とはいえどちらかと言うと旨辛に近い味みたいですしね」

「キムチチャーハンに限らず刻んで炒め物に混ぜたりすると美味しいのね」

「ええ、実際豚キムチ炒めみたいなおかずもあったりしますし」

「つまりキムチって炒め料理に混ぜると美味しくなるのかしら」

「そのままでも美味しいという人は多いみたいですけどね」

「辛いものの美味しさだけは姫にはよく分からないのよね」

「別に分からなくてもいいとは思いますよ、否定をしないという事が大切なので」

「そうね、それだけは姫は大切にしたいもの」

「自分が苦手だからこんなのが好きな人はおかしいみたいに言わなければいいんですよ」

「それにしてもキムチって漬物なのね、白菜ってあの縦に長い葉野菜よね？」

「はい、その葉野菜ですね、それを切って漬物にしたものがキムチです」

「でも野菜も便利なものよね、食べ方自体は豊富だし」

「実際料理としての使い方は多様にありますからね」

「キムチ、漬物、姫には美味しいとは思えないわね」

「辛いものが苦手だとそうなるとは思いますよ」

「こっちかしら？」

「二つ目の道を西ですね」

エトはネバネバした食べ物と辛い食べ物が苦手という事らしい。

辛いものに関しては年相応の味覚なのかもしれない。

とはいえキムチ自体は店のサイドメニューとしては割と人気のメニューでもある。

料理に一品付け加える際にキムチを選ぶ人はそれなりにいる。

辛いとはいえ割と食べやすい辛さなのは大きいという事なのか。

サイドメニューの一品料理としてのキムチは思っているより売れているという。

「でもキムチって思ってるよりも人気なのね」

「安価な一品料理としての人気が大きいんだと思いますよ」

「安価、サイドメニューっていうやつなのよね？」

「はい、サイドメニューで青銅貨一枚で追加出来るのはやはり大きいんですよ」

「青銅貨一枚ってまた安いわね」

「お酒の肴などとしても人気があるみたいですからね、キムチは」

「お酒を飲む人にも人気で、料理を食べる際にも追加の一品料理としても人気なのね」

「ええ、だからこそキムチは漬物である事も人気の要因なのかと」

「塩気のある食べ物はライスと一緒に食べると美味しいものなのよね」

「実際定食なんかもライスと塩気のあるおかずの組み合わせが定番ですしね」

「塩気のあるおかずはライスと組み合わせると何よりも美味しいのね」

「実際漬物があればライスを三杯は食べられるみたいな人もいるらしいので」

「それは流石に誇張された話なんじゃないのかしら」

「塩気というのはそれだけライスを進ませるらしいですしね」

「こっちよね？」

「この先の道を南西ですよ」

そのまま１１番街に入っていく。

アドレーさんの家はすぐそこだ。

「ここかしら」

「すみませーん！キッチンハウスの宅配です！」

「おう！」

「待たせたな」

「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨三枚をいただきます」

「これで頼む」

「ちょうどいただきます、ではこちらがキムチチャーハンになります」

「すまない」

「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」

「分かった」

「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」

「さて、食べるとするかな」

キムチチャーハン、キムチを混ぜて炒めたチャーハンだ。

キムチの汁が米にも染み込み少し赤っぽくなっているのも特徴である。

キムチの旨辛とチャーハンの油の組み合わせはその食欲を掻き立てる。

実際チャーハンは店でも人気メニューであり、その派生メニューも人気だ。

なのでキムチチャーハンも人気は高いメニューでもある。

キムチの辛さは激辛ではなく、発酵による旨辛というのが大きいのだろう。

「うん、これは美味しいな、油で炒めたライスに野菜の漬物を加えてあるのか」

「野菜の漬物はシャキシャキで、ピリッとした辛さがまたいいな」

「炒めたライスもいろんな具が入ってて実に美味い」

「ライスの方には肉や野菜なんかを加えて油で炒めた感じか」

「でもこのハマりそうな味はそれだけ美味いって事なんだな」

「キムチっていう野菜の漬物がチャーハンをさらに美味くしてる感じなのか」

その頃のエト達は帰り際に休憩していた。

冷たい麦茶が体に染みる。

「ふぅ、やっぱり麦茶は美味しいわね」

「ええ、冷たい麦茶はなぜこんなに美味しいのか」

「夏には冷たい麦茶が何よりも美味しいわね」

「ええ、この美味しさは夏だからこそなのかもしれませんが」

飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。

帰ったらまた仕事である。

「ただいま戻ったわよ」

「お帰り、はい、冷たいおしぼり」

「ありがとうございます」

「外はすっかり夏になった感じデスかね」

「ええ、もうすっかり夏になったわね」

「夏服への衣替えも終わってるみたいだしね」

「はい、夏服だとやはり快適ですよ」

「暑い時は通気性のいい服に限りマスね」

そうして季節は夏本番へと入っていく。

食中毒への注意喚起は国からも言われるようになったとエトは言う。

国からのお触れというのはやはり大きいようだ。