豚カルビ弁当
すっかり春本番の陽気になり暖かさが心地良い季節になった。
そんな中でも宅配の注文は開始当時に比べるとかなり増えたという。
宅配の配送スタッフを増やすべきかどうかも考えている。
今はスタッフは足りているが、この先人員を増やす事も検討する事になる。
「今回の届け先はどこかな」
「12番街のトマソンさんの家ですね」
「12番街か、そんなに遠くはないね」
「はい、行きますよ」
今回の届け先は12番街。
そんなに遠くはないのでさっさと届けてしまう事に。
「今回の注文は何かな」
「豚カルビ弁当ですね」
「豚カルビ弁当?」
「はい、ライスに豚肉を乗せたお弁当みたいですね」
「なるほど、そういうお弁当もあるのか」
「はい、肉のタレは注文の際に三種類から選ぶみたいですよ」
「そういうお弁当もあるんだね、肉のタレもいろいろあるのか」
「ええ、甘口のタレとバーベキューとポン酢から選べるみたいです」
「肉のタレって人の好みもありそうだもんね」
「そうですね、人気なのはポン酢みたいですが」
「ポン酢が人気なんだ、でもポン酢って美味しいよね」
「ポン酢は肉に限らず魚や野菜なんかにも合うって聞きますからね」
「割と何にでも使えるものなんだ、万能調味料的なものなのかな」
「餃子のタレなんかもポン酢にラー油を混ぜるみたいな食べ方をするらしいですし」
「ポン酢はいろんな料理に合う、本当に万能な感じが凄いね」
「和洋中のどれにでも使えて、料理の調味料にもなるらしいですしね」
「ポン酢って凄いんだなぁ、でもポン酢ってビネガーと柑橘系の汁を混ぜたものだっけ」
「基本的にはそんな感じらしいです、ゆずとかすだちみたいなものを使うとか」
「ゆず、すだち、知らない果物だね」
「東の国で栽培されてるらしいですが、この国や近隣の国でも見ないものですからね」
「つまり東の国独自のものとかそういう事なのかな」
「恐らくはそうなんだと思います、こっちでは育たないとかがあるのかもですね」
「ゆずとかすだち、世界には知らないものが多いな」
「リーザさんも農家の娘とはいえそういうものはあるんですね」
「まあ異国の果物の苗とかを持ってきて育てて大きくなった人とかは知ってるけど」
「そういう人もいるんですね、リーザさんの故郷には」
「こっちかな?」
「三つ目の道を北東ですね」
肉に使うタレというのは多様なものがある。
かけたり浸したりして食べたり、漬け込んでから焼いたり様々だ。
店の肉類の定食などはポン酢が一番人気という事らしい。
ポン酢はそれだけ多くの人に支持されているという事なのか。
次点で甘口のタレが人気らしい。
大人にはポン酢、子供には甘口のタレが人気の傾向にあるのだとか。
「でもポン酢が人気なのはなんか意外な感じだったね」
「大人にはポン酢が人気で子供には甘口のタレが人気らしいですよ」
「そういうところは大人と子供による好みの違いとかが出るんだね」
「みたいですね、甘口のタレは子供でも食べやすい味らしいですし」
「複数用意しておけばいろんな客層に対応出来るっていう事なんだろうしね」
「実際人によってどのタレを選ぶかは異なってくるわけですからね」
「でも一番人気はポン酢っていう事でもないのかな」
「一番人気というより大人と子供で好みが分かれる感じみたいですからね」
「でも大人にはポン酢が人気、その理由ってなんなんだろう」
「ポン酢はさっぱりとした感じなのが人気の理由なのかもしれませんね」
「なるほど、さっぱりしてて食べやすいっていう事なんだね」
「あくまでも推測でしかないですけどね」
「でもさっぱりしてるから食べやすいって言うなら納得かも」
「ええ、食べやすいっていうのは大切ですしね」
「こっちだよね?」
「この先の角を右ですよ」
そのまま12番街に入っていく。
トマソンさんの家はすぐそこだ。
「ここかな」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨二枚をいただきます」
「これでお願いします」
「ちょうどいただきます、ではこちらが豚カルビ弁当になります」
「どうも」
「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、食べるとしようかな」
豚カルビ弁当、ライスの上に焼いた豚カルビを乗せた弁当だ。
ライスに肉の脂が染み込みその美味しさを増している。
また申し訳程度にほうれん草のナムルが乗っていたりする。
あくまでも主役は肉であり肉でライスを食べる感じの弁当だ。
肉のタレは甘口、バーベキュー、ポン酢から客が選ぶシステムになっている。
ポン酢人気は特に大人に高いのだという。
「うん、これは美味しいですね、焼いた肉を乗せたライスが肉の脂で美味しくなっている」
「このポン酢タレをかけると肉がまた一層美味しくなる」
「この野菜も美味しくて食べやすいですね」
「しかし肉がこんなに美味しくなるとは、何か焼き方に秘密とかがあるのか」
「豚の肉という事ですが、ライスと一緒に食べるとまた実に美味しい」
「肉と一緒に食べるとライスのお医師が増しますね」
その頃のリーザ達は帰り際に休憩していた。
冷たい麦茶が体に染みる。
「ふぅ、美味しいね」
「麦茶の不思議な美味しさはなんなんでしょうね」
「体に染みていく感じが美味しさの理由なのかな」
「麦茶は暖かい日には特に美味しいですからね」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻ったよ」
「お帰り、はい、おしぼり」
「ありがとうございます」
「外はすっかり春本番デスかね」
「うん、もう寒さは完全に過ぎ去ったね」
「なら衣替えも完全に完了した感じだね」
「そうですね、これから夏が近づいてくる感じになるので」
「夏服の発注なんかも済ませておかないとデスね」
そうして春の暖かさは徐々に夏の暑さへと変わっていく。
夏はまだ来ないが、気温は少しずつ高くなっていく。
季節は思っているよりも早く過ぎていくものなのだ。




