エビとタラバガニのドリア
冬の寒さが少しだけ落ち着いてきた感じの王都。
春は少しずつだが確実に近づいてきている様子。
冬のフェアメニューは二月いっぱいで終わり、三月からはまた切り替わる。
春のフェアメニューは春の味覚が中心になるようである。
「また来てしまいましたね、ここは美味しい料理が多いので」
「特にここのチーズ料理はどれも美味しいのですよね」
「チーズを使った料理のバリエーションも多く、勉強になります」
「さて、行きますか」
彼女の名はメディア、農村部で酪農をしている酪農家の娘だ。
作ったチーズなどを王都に卸しに来た際にこの店に寄るのが今ではお約束らしい。
「この扉の仕組みは面白いものですよね」
「中は暖かい、冬はこの暖かさが寒い日にはいいんですよ」
「いらっしゃいませ!何名様ですか!」
「一人ですよ」
「かしこまりました、おタバコはお吸いになられますか」
「いえ、吸いませんよ」
「かしこまりました、では禁煙席にご案内しますね」
「スタッフが若いのもいいですよね」
そうして席に案内される。
説明は理解しているのでスムーズに進む。
簡単に説明を受けそのまま次へ。
タブレットの使い方も理解している様子。
「タブレットの使い方は分かりますね」
「はい、問題なく」
「分かりました、では何かあればお呼びください」
「さて、先に水を取りに行きましょうか」
そうしてエトは一旦下がり別の料理を運びに行く。
メディアは先に水を取りに行く事に。
「ここの水は飲み放題なのにとても美味しいのが驚きですよね」
「あとは氷と手拭き、使い捨てというのもいい面があるのですよね」
「さて、注文を決めてしまいましょうか」
「チーズ料理、何にしましょうか」
「ん?これは…うん、これにしましょうか、これとこれとこれで確定と」
「このタブレットというのは不思議な限りですね」
そうしてメディアはドリンクバーに飲み物を取りに行く。
迷わずに手を伸ばしたのはアップルジュースだった。
りんごはこちらの世界でもポピュラーな果物ではある。
とはいえそのジュースの美味しさはぜんぜん違うようだが。
「ふぅ、やはりアップルジュースは美味しいですね」
「アップルは割と定番の果物なのにここまで美味しくなるとは」
「それで作ったジュース、ここまで美味しいものなんですね」
「この甘さがまたいいものなんですよ」
そうしているとエビとタラバガニのドリアが運ばれてくる。
エビドリアにカニを加えた少し贅沢な冬のドリアだ。
「お待たせしました、エビとタラバガニのドリアになります」
「ありがとうございます」
「デザートが必要な時はお呼びください、それでは」
「さて、いただきましょうか」
エビとタラバガニのドリア、エビドリアにタラバガニのほぐし身を加えたものだ。
さらにほうれん草なども使ってあるので、普通のドリアに比べて贅沢感はある。
なので冬のちょっと贅沢な一品といった感じのドリアでもある。
定番メニューのエビドリアと比べると、カニがその値段を大きく上げていたりもする。
やはりカニというのは高級食材という事なのか。
冬の海で捕れるカニは日本の冬では定番の高級食材だ。
カニの身はドリアのチーズともよく合う焼きガニになっているのもまたポイントだ。
ベースとなっているのはエビドリアなのでエビはそのままエビドリアのものを使っている。
とはいえ大ぶりのエビなので、食べごたえはある。
このドリアの値段の半分はカニで出来ているのだ。
「うん、これは美味しいですね、チーズとライスがよく合っている」
「この赤いほぐし身がタラバガニというものなのでしょうね」
「この緑色の野菜もチーズと絡んで実に美味しいです」
「この丸まっているものがエビ、エビドリアのエビと同じものみたいですね」
「それにしてもチーズとライスはこんなにも合うとは」
「ここのチーズ料理はどれも美味しいだけに、やはりドリアはいい」
「それにしても海の食材を使っているというのは、どうやって運んでいるのか」
「それにしてもこのカニというのは実に美味しいですね」
そうしているうちにエビとタラバガニのドリアを完食する。
続いてデザートを頼む事に。
「お待たせしました、デザートですか」
「はい、お願いします」
「かしこまりました、では器はお下げしますね、少々お待ちください」
それから少ししてショコラキャンディアイスが運ばれてくる。
チョコレート味のキャンディアイスで冬のフェアメニューのデザートだ。
「お待たせしました、ショコラキャンディアイスになります」
「ありがとうございます」
「こちらは伝票です、会計の際にお持ちください、それでは」
「さて、いただきますか」
ショコラキャンディアイス、チョコレート味のキャンディアイスだ。
冬のフェアメニューのデザートで、濃厚なチョコの味が美味しいものだ。
「うん、美味しいですね、この濃厚なチョコは実に美味しいです」
「チョコレートの濃厚さと、甘さがいい感じのバランスですし」
「チョコレート、異国のお菓子だとは聞いていますが」
そうしているうちにショコラキャンディアイスを完食する。
飲み物を飲み干し会計を済ませる事に。
「支払いをお願いします」
「はい!えっと、エビとタラバガニのドリアとショコラキャンディアイスとドリンクバーですね」
「全部で銀貨一枚と銅貨一枚と青銅貨一枚になります」
「これでお願いします」
「ちょうどいただきます」
「満足していただけているようデスね」
「これはシェフの方」
「チーズ料理がお好きなのデスね」
「はい、ここのチーズ料理はどれも美味しいので」
「チーズに何か特別な思い入れとかあるのデスか」
「家で酪農をしているので、乳製品にはいろいろありまして」
「なるほど、だからチーズ料理がお好きという事なのデスか」
「ええ、ですがここはチーズの種類も豊富なんですね」
「様々な国のチーズを仕入れていマスから」
「それだけの種類のチーズがあるんですね」
「しかし酪農家デスか、チーズ以外にも作っているのデスよね」
「はい、ヨーグルトや生乳、あとはそれの加工品のお菓子なんかも」
「お菓子まで作っているのデスか」
「酪農家は貴族並みの収入がありますから」
「そんなに稼いでいるとは大したものデスね」
「なので砂糖なども買えるんです、それで生乳を使ったお菓子なんかも作ってるんですよ」
「お金持ちだからこそお菓子も作れるという事なのデスね」
「おっと、そろそろ行きます、また来ますね」
「酪農家って稼いでるんだねぇ」
「農家は実は貴族みたいな話はありマスからね」
そうしてメディアは満足して帰っていった。
酪農家は実は相当に稼いでいるという話。
農家は実は貴族様みたいな話がこの世界にはあるのだろう。




