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天津チャーハン

冬の寒さが吹き抜ける異世界の冬。

そんな寒い日でも宅配の注文は入ってくる。

防寒着を着込み宅配に行くのが冬のお約束でもある。

やはり寒さは着込むのが一番暖かくなるという事か。


「今回の届け先はどこかしら」


「2番街のシグナスさんの家ですね」


「2番街ね、そんなに遠くはないわね」


「はい、行きますよ」


今回の届け先は2番街。


そんなに遠くはないのでさっさと届けてしまう事に。


「今回の注文は何かしら」


「天津チャーハンですね」


「天津チャーハン?」


「はい、チャーハンを天津飯みたいに卵で綴じてあんかけをかけたものですね」


「なるほど、でも天津飯ってチャーハンでもイケるのね」


「みたいですね、天津飯自体は割と食べやすいものですし」


「でも天津飯って美味しいわよね、姫は好きよ」


「エトさん、味覚はまだ子供っぽいですよね」


「大人が好きって言ってる食べ物の美味しさはよく分からないもの」


「大人になると好みが変わるとはアヌークさんも言ってましたけど」


「そんなものなのかしら、姫も大人になればそういうものを食べられるのかしら」


「それは私には分かりませんけれど」


「でも天津飯っていいわよね、あんかけの染みたライスも美味しいし」


「天津飯って本場の天津っていう街にはない食べ物らしいんですよね」


「そうなの?それなのになんで天津っていう名前がついてるのよ」


「そういう本場にはないけど、その街や国の名前がついた食べ物はいくつかあるらしいです」


「ふーん、なんでそういう名前になったのかしら」


「そこは私にはよく分かりませんけど、なんとか風みたいな感じなのかもしれませんね」


「つまり本場の味に近い味の外国生まれの食べ物的な感じかしら」


「そんな感じだと思います、本場にはないけど本場ではポピュラーな味付けみたいな」


「本場にはないけど、なぜか外国の国名や街の名前がついてる食べ物って不思議ね」


「生み出した人は外国の人みたいな事はあるらしいですしね」


「つまり外国のシェフが生み出した和食みたいな感じなのね」


「それが結果として定着したみたいな感じらしいですね」


「食べ物の名前の由来って不思議なものね」


「本場にはない食べ物も多いそうですしね」


「こっちよね?」


「二つ目の角を左ですね」


天津飯は天津にはない食べ物。

他にもトルコライスやナポリタン、そういった本場にはない食べ物もある。


ちなみにエトは卵料理やチーズ料理が好きなのはまだ味覚は子供なのか。

なんにせよ天津飯は日本生まれの中華料理である。


中華料理と中国料理は似ているようで別物なのである。

なので中華料理は日本生まれのアレンジ中国料理みたいなものなのだ。


「それにしても天津チャーハンね、美味しいところのいいとこ取りなのかしら」


「チャーハンを天津飯にした料理ですからね」


「でもそういうのはいいわよね」


「天津飯自体が子供でも好きな味の食べ物ですしね」


「大人が好きな食べ物って姫も大人になれば好きになるのかしら」


「そこはエトさん次第ではないかと」


「美味しさが分からない食べ物っていくつかあるものねぇ」


「私も苦手な食べ物はありますからね」


「ソアレって好き嫌いは少なそうなイメージだけど、意外ね」


「好き嫌いは少ない方だと思います、それでも苦手な食べ物はありますよ」


「まあそれはそうよね、好き嫌いが少ないのは本当っぽいけど」


「はい、それでも好き嫌いはあるんですよ」


「何が苦手なのかしら、ちょっと気になるわね」


「そこは秘密ですよ、まあ知られても困りませんけど」


「こっちよね?」


「二つ目の角を西ですよ」


そのまま2番街に入っていく。

シグナスさんの家はすぐそこだ。


「ここかしら」


「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」


「今行く!」


「待たせたな」


「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨二枚をいただきます」


「これで頼む」


「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文の天津チャーハンになります」


「すまない」


「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」


「分かった」


「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」


「さて、食べるとするか」


天津チャーハン、チャーハンを卵で綴じてあんかけをかけたものだ。

なので天津飯の白米をチャーハンに変えたものとも言える。


あんかけが染みたチャーハンもまたそれはそれで美味しいもの。

卵もふわふわで、とても食べやすいのがある。


ちなみにチャーハンは店のメニューのチャーハンとはまた違うものである。

この手のものに使われるチャーハンはシンプルな卵チャーハンなのだ。


「うむ、これは美味しいな、炒めた米に卵を被せてとろみのあるソースをかけているのか」


「ライスの方がチャーハンというものなのだろうな」


「チャーハンはシンプルに卵だけで作っているようだな」


「この被せている卵もふわふわで実にいい」


「このとろみのあるソースが染みたチャーハンも卵もまた美味しいな」


「こういう料理が食べられるのは実に便利なシステムだ」


その頃のエト達は帰り際に休憩していた。

温かい麦茶が体に染みる。


「ふぅ、美味しいわね」


「寒い日に温かい飲み物は美味しいですよね」


「この魔法瓶っていうのも不思議だけど」


「冷めない水筒ってどういう仕組みなのか」


飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。

帰ったらまた仕事である。


「ただいま戻ったわよ」


「お帰り、はい、温かいおしぼり」


「ありがとうございます」


「外は寒さはどれぐらいデスか」


「寒いけど、それでもまだ本当に寒い国に比べたら暖かい程度かしら」


「なら特に何かを変える必要はなさそうだね」


「ええ、この国はまだ暖かい方なので」


「なら寒さ対策は問題なさそうデスね」


こうして寒いながらもまだ暖かいのがこの国。

本当に寒い国はもっと寒いとエトは言う。


寒い日は温かい料理が美味しいものである。

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