たらこおにぎり
すっかり冬本番となり宅配の際にも防寒着が必要になった季節。
宅配も限定メニューを増やそうかと考えている様子のアヌーク。
次は新たにおにぎりを宅配とテイクアウト限定で売る事に。
おにぎりはどの程度売れるかも見ているようだ。
「今回の届け先ってどこかな」
「8番街のランゴバルドさんの家ですね」
「8番街か、そんなに遠くはないね」
「はい、行きますよ」
今回の届け先は8番街。
そんなに遠くはないのでさっさと届けてしまう事に。
「今回の注文って何かな」
「たらこおにぎりですね」
「たらこおにぎり?」
「はい、宅配とテイクアウト限定で始めた新メニューみたいです」
「また宅配とテイクアウト限定の新メニューなんだね」
「ハンバーガーやおにぎりは手軽に食べられるというのがコンセプトの食べ物ですから」
「つまりお店で座って食べるより持ち歩いて出かけた先で食べるみたいな食べ物なんだね」
「みたいですよ、なので宅配とテイクアウト限定で出すんだとか」
「でもそういうのっていいかも、作るのも簡単そうだし」
「シンプルにライスに塩を振っただけのおにぎりも美味しいって言ってましたよ」
「そんなシンプルなおにぎりでも美味しいんだ」
「ええ、そもそもハンバーガーやおにぎりは携帯食としての側面が大きいですから」
「携帯食、サンドイッチなんかは前々からやってたよね」
「はい、サンドイッチは宅配とテイクアウトで売るメニューの初期メニューからありましたね」
「サンドイッチにハンバーガーにおにぎり、宅配とテイクアウト限定のメニューか」
「時間がない時に素早く食べられたり、遠くに出かける際の携帯食としての役目が大きいのかと」
「それに加えて片手で食べられるから、それもあるのかな」
「サンドイッチは異国の貴族がゲームをしながら食べられる食事が発祥だそうですし」
「つまりそういう手軽に食べられる事が売りの食べ物でもあるんだね」
「ええ、サンドイッチはそうして生まれたそうですよ」
「そういう手軽に食べられるのっていいかもね」
「時間がない時には素早く食べられ、遠くに行く際には持ち運びもしやすいという事ですし」
「そういう食べ物を考えられるのは凄いかも」
「手軽さが何よりも大きな売りであり、そして包み紙なども処分しやすいという事もありますね」
「サンドイッチ、ハンバーガーにおにぎり、携帯食っていろいろあるね」
「旅人などにはウケるかもしれませんね」
「こっちかな?」
「二つ目の角を左ですね」
サンドイッチにハンバーガーにおにぎり。
そうした携帯食として便利な食べ物は何かとある。
旅人や時間がない人にとってはその手軽さもまた魅力の一つだ。
そして結構腹持ちがいいのもまたメリットでもある。
なので宅配とテイクアウト限定で売るのもそうした需要を見越した上でなのか。
実際すでに始めているサンドイッチやハンバーガーは長距離移動をする人が買っていくとか。
「それにしてもおにぎりか、ライスは手に入るけど海苔は買えるのかな」
「東の国の人がやってる食品店なら買えるかもしれませんね」
「なるほど、でも海苔を巻かないタイプのおにぎりもあるんだっけ」
「はい、混ぜ込みご飯と呼ばれるものですね」
「そういうのでも作れるのなら、家でもおにぎりって作れるのかな」
「ライスと塩、あとは混ぜる具材があれば混ぜ込みご飯は作れるそうですね」
「何がいいんだろう、おにぎりだからやっぱり魚とか?」
「焼いたサーモンの身を細かくほぐしたものとか、海藻類なんかが定番らしいですね」
「そういうのでいいんだね、なんとかなるのかな」
「まあここは内陸の国ですけどね」
「水産組合が売ってる魚とかはあったと思うけど」
「確かにありますけど、魚はそれなりにいい値段がしますよ」
「海産物以外だと、高菜とかそういう菜類でもいいのかな」
「そういうのもあるとは言ってましたね」
「こっちだよね?」
「二つ目の角を北西ですよ」
そのまま8番街に入っていく。
ランゴバルドさんの家はすぐそこだ。
「ここかな」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「今行く!」
「待たせたな」
「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨一枚をいただきます」
「これで頼む」
「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文のたらこおにぎり三つになります」
「うむ、確かに」
「包み紙は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」
「分かった」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただくとするか」
たらこおにぎり、焼きたらこを使ったおにぎりだ。
たらこの塩気とおにぎりの米が口の中で弾ける。
たらこはほぐしたものを使っているので、食べやすくもある。
焼きたらこはおにぎりの具材としては一般的なもの。
とはいえ明太子の方がおにぎりの具材としては定着している感じはある。
たらこおにぎりは明太子と同じ材料で味が違うだけではあるが。
「うむ、これは美味しいな、ライスの塩気がいい感じだ」
「その中に包まれている小さな粒がたらこというもののようだな」
「たらこはライスと一緒に食べる事でさらに美味しくなるという感じがする」
「おにぎりについていた漬物もまたその塩気がおにぎりを美味しくするな」
「たらこというのは魚の卵だと聞いているが、内陸のこの国で海産物とは」
「しかし漬物とおにぎりの組み合わせもまた素晴らしいな」
その頃のアレッシオ達は帰り際に休憩していた。
温かい麦茶が体に染みる。
「はぁ、美味しいね」
「温かい麦茶もまた美味しいですよね」
「麦茶は大麦から作るって聞くけど」
「大麦、育てている農家もいるんでしょうか」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻りました」
「お帰り、はい、温かいおしぼり」
「ありがとうございます」
「外はすっかり冬本番デスかね」
「うん、もう冬本番だね」
「冬服への衣替えなんかも済んでるっぽいしね」
「ええ、暖かいですよ」
「なら問題はなさそうデスね」
そうして外はすっかり冬本番である。
店では温かい汁物やお一人様から頼める鍋などもよく売れる。
寒い日には温かい汁物が嬉しい季節だ。




