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ししゃもの唐揚げ弁当

こっちの世界もすっかり秋の陽気になってきた少し寒い日。

暖かさはすっかり鳴りを潜め、少し涼しいぐらいである。

そんな中でも宅配の注文は入ってくる。

店の制服も完全に秋服に衣替えしたようだ。

「今回の届け先ってどこかな」

「３番街のカルミナさんの家ですね」

「ならそんなに遠くないね」

「では行きましょう」

今回の届け先は３番街。

そんなに遠くはないのでさっさと届けてしまう事に。

「今回の注文って何かな」

「ししゃもの唐揚げ弁当ですね」

「ししゃも？それを唐揚げにしたんだよね」

「はい、ししゃもという魚みたいですよ」

「魚なんだね、どんな魚なの」

「細くて小さい魚みたいですね、頭から尻尾まで全部食べられるとか」

「マジ？そんな魚がいるんだ」

「実際ししゃもは焼いたり揚げたりして頭からかぶりつくのが美味しいとか」

「頭や尻尾まで食べられる魚って珍しいよね？」

「普通は魚は頭や尻尾までは食べないですからね」

「まあそうだよね、あたしの故郷も漁師は多いけど、そういう事はしないし」

「魚にも様々という事なんでしょうね」

「でも頭や尻尾まで食べられるって事はそういうところも食べても平気って事か」

「ししゃもは身も柔らかいらしいですしね」

「ししゃもってそれこそ全部食べられるんだね」

「ええ、頭や尻尾どころか骨まで食べられるらしいですから」

「骨まで食べられるのか、まさに全部食べられる魚って事だね」

「ええ、なので綺麗に食べるというのは全部食べるという事になりますね」

「丸ごと全部食べられる魚、そんな魚もいるんだなぁ」

「結構美味しいらしいですからね」

「でもししゃもって不思議な名前に感じるね」

「割と寒い地域の海に多く生息しているらしいですから」

「寒い海に多い魚なのか、いろいろいるね」

「ししゃもは丸ごと食べられるからこそ美味しいらしいですし」

「ししゃも、不思議な魚だ」

「焼いたり揚げたり食べ方もありますしね」

「こっちかな」

「二つ目の角を右ですね」

ししゃもはそれこそ頭から尻尾、骨まで全部食べられる魚だ。

なので唐揚げなどにして頭からかぶりつくのが美味しい。

そんなししゃもの骨は調理すれば柔らかくもなる。

魚の骨は本来は取り除いて食べるものではある。

だがししゃもはそんな必要もないので、お手軽な感じはある魚だ。

面倒な事をしなくても食べられることこそがししゃもの強さである。

「それにしてもししゃもって面白い魚だね」

「サイズが小さいのでたくさん取れるとも言っていましたしね」

「そっか、小さい魚だからまとめてたくさん取れるんだよね」

「ええ、なのでたくさん取ってそれを調理するのがよくあるそうですね」

「あたしも魚はたくさん食べるけど、ししゃもは初耳だし」

「リーザさん、離島の生まれなので魚はよく食べるんですよね」

「うん、あたしの家は農家だけど、魚自体はたくさん食べるよ」

「それは今もなんですか？」

「この国は内陸の国だから、魚が貴重なのが辛いけどね」

「とはいえ魚自体はお好きなんですよね」

「うん、魚は好きだよ」

「離島育ちらしい感じはしますね、魚を食べる機会が多かったというのは」

「だから都会での魚の高さには驚くんだよねぇ」

「確かに魚は高いですよね」

「こっちかな」

「三つ目の十字路を左ですね」

そのまま３番街に入っていく。

カルミナさんの家はすぐそこだ。

「ここだね」

「すみませーん！キッチンハウスの宅配です！」

「はい！」

「お待たせ」

「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨二枚をいただきます」

「これでお願い」

「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文のししゃもの唐揚げ弁当になります」

「ありがとう」

「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」

「分かったわ」

「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」

「さて、いただこうかしら」

ししゃもの唐揚げ弁当、ししゃもの唐揚げとライスと漬物がついた弁当だ。

ししゃもはスパイスの効いた唐揚げになっていて頭から食べられる。

丸ごと食べられるからこそからこそ弁当にも向いている魚と言える。

魚系の弁当は基本的にはフライや切り身を使う事が多い。

そんな中ししゃもは丸ごと食べられるので、当然一匹丸ごと使える。

弁当のししゃもは５匹入っているとの事らしい。

「うん、美味しいわね、この魚は丸ごと食べられるのね」

「油で揚げてある事もあって魚の味もスパイスの味も美味しいわ」

「この味はライスともよく合うものなのね」

「こっちの漬物も美味しいし流石だわ」

「このししゃもって骨とか頭とか全部食べられるなんて凄いわ」

「身も柔らかいし、このししゃもって魚凄く美味しいわね」

その頃のリーザ達は帰り際に休憩していた。

冷たい麦茶が体に染みる。

「ふぅ、美味しいね」

「麦茶はいいものですね」

「麦茶は癒やしの飲み物だよ」

「体に染み渡りますよね」

飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。

帰ったらまた仕事である。

「ただいま戻ったよ」

「お帰り、はい、おしぼり」

「ありがとうございます」

「外はすっかり涼しい感じデスか」

「うん、もうすっかりね」

「なら秋服にも衣替え完了かな」

「はい、特に問題もなく」

「冬になる前には冬服も用意しないとデスね」

外はすっかり秋模様の様子。

ここから少しずつ冬に変わっていく。

季節はそうして移りゆくのだから。