三種のきのこピザ
すっかり秋の季節になり外もだいぶ涼しくなった。
そんな中でも宅配の注文は入ってくる。
この気候は外を自転車で駆け抜けるにはちょうどいい。
秋が過ぎれば冬が来る、季節は巡るのである。
「今回の届け先はどこかな」
「10番街のロウエンさんの家ですね」
「10番街だね、ならそんな遠くないね」
「はい、行きましょう」
今回の届け先は10番街。
そんなに遠くはないのでさっさと届けてしまう事に。
「今回の注文って何かな」
「三種のきのこピザですね」
「三種のきのこピザ?」
「はい、エリンギとヌメリイグチとマッシュルームというきのこを使ったピザみたいです」
「ふーん、聞いた事のないきのこだね」
「アヌークさんの故郷だと割と一般的なきのこらしいですが」
「そこは国による違いなのかな」
「そうだと思いますよ、リーザさんはきのこは特に苦手というわけでもないですよね」
「あたしは寧ろきのこは好きかな、食べられるきのこをバターで炒めるだけでも美味しいよ」
「リーザさんは料理は出来る人なんですよね?」
「一応出来るよ、凝ったものは作れないけど」
「それできのこのバター炒めですか」
「うん、シンプルにバターとかソースで炒めるだけでも美味しいものだしね」
「寧ろその方が美味しいまである感じですかね」
「それはあるかも、凝った料理は味が複雑で美味しさがよく分からないというかさ」
「リーザさんはシンプルな味の方が舌に合うんでしょうか」
「かもしれないね、だからアヌークに教えてもらったレシピもシンプルなものが多いし」
「シンプルに調味料で味付けしただけの料理とかの方が好きなんでしょうか」
「肉なんかもソースかけて焼いたものとかの方が好きだしね」
「リーザさんの意外な好みを見た気がします」
「だから複雑な味付けの料理とかは美味しいとは感じてもどこかモヤッとする感じなんだよ」
「その辺は味覚の問題ですから、なんとも言えないのかもしれませんね」
「こっちかな?」
「三つ目の角を西ですね」
リーザはシンプルな味付けの料理を好む傾向にあるということ。
自炊する時もバターやソースなどで炒めたり焼いたりした料理が好きらしい。
またきのこ自体は普通に好きなようで、店で食用のきのこは買うのだという。
それをバターで炒めて食べるみたいな食べ方が好きなのだと。
なのでリーザは料理は出来るが、凝ったものは作れない感じ。
食べられるものが作れるだけ大したものなのかもしれないが。
「でも秋ってきのこが美味しい季節なんだね」
「アヌークさん曰く、秋のきのこは美味しいものが多いらしいですよ」
「ふーん、旬の食べ物ってその季節が一番食べ頃って事なのかな」
「そういう事なんでしょうね、この季節のきのこは特に美味しいそうなので」
「でもきのこピザかぁ、きのことチーズって合うのかな」
「チーズは割とどんな食べ物にも合うと行っていましたが」
「そうなんだ、意外と万能なんだね、チーズって」
「きのこピザもチーズときのこですけど、特に不評はないそうですし」
「チーズはどんな食材もおいしく包み込むみたいな感じなのかな」
「チーズは主張がそこまで強くないのがあるんでしょうね」
「なるほど、だからどんな食材とも合うのか」
「そういう事なのかもしれませんね」
「きのこピザ、秋の味覚か」
「この季節のきのこは美味しいらしいですからね」
「こっちだよね?」
「この先の角を西ですね」
そのまま10番街に入っていく。
ロウエンさんの家はすぐそこだ。
「ここだね」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨二枚をいただきます」
「これで頼みます」
「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文の三種のきのこピザになります」
「ありがとうございます」
「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いします」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただきますか」
三種のきのこピザ、文字通り三種のきのこを使ったピザだ。
使っているきのこはエリンギとヌメリイグチとマッシュルーム。
それらを乗せて焼き上げたピザである。
三種のきのこはチーズが絡む事でまた美味しくなる。
弾力があるきのこは食べると旨味が溢れ出す。
きのこの旨味が染みたピザ生地もまたサクサクで美味しいのだ。
「うん、これは美味しいですね、きのこがどれも美味しい」
「チーズもいい具合に焼かれていてそれがまたいい」
「生地もサクサクで、トマトのソースがまたよく合っている」
「きのことチーズの組み合わせがこんなに美味しいとは」
「このきのこはどれも美味しくてたくさん食べたくなりますね」
「きのことチーズの組み合わせって美味しいものだったんですね」
その頃のリーザ達は帰り際に休憩していた。
冷たい麦茶が体に染みる。
「はぁ、美味しいね」
「麦茶の美味しさは不思議なものですよね」
「この味は体に染みるもんね」
「体の芯に染み渡る感じですよね」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻ったよ」
「お帰り、はい、おしぼり」
「ありがとうございます」
「外はすっかり涼しくなってマスかね」
「うん、もうすっかり涼しいよ」
「なら衣替えとかも終わってると考えていいかな」
「はい、みなさん秋服に変わってますし」
「なら冬までには冬服なんかも手配をしておきマスか」
そんな外はすっかり秋の涼しさ。
ここから数ヶ月後には冬が来る。
冬になれば温かい料理が美味しくなるのである。




