333/402

バクダン炒め

夏のフェアメニューも終わりが近づいてきた夏の日。

季節が変わればフェアメニューもまた変わる。

秋のフェアメニューは秋の味覚を中心に考えるのはいつもの事。

また洋食や中華も海外の秋の味を考えるとか。

「また来てしまった、すっかり常連ですね」

「ここは安くて美味しい食事がいただけるのが嬉しいんですよ」

「それに品数も豊富だから何を食べても飽きないのがいい」

「さて、行きますか」

彼の名はミゲイル、亜人の学者である。

国で植物の研究をしている植物学者らしい。

「この扉の仕組みは面白いものですね」

「中は涼しい、夏ももう少し続きそうですね」

「いらっしゃいませ！何名様ですか！」

「一人ですよ」

「かしこまりました、おタバコはお吸いになられますか」

「いえ、吸いません」

「かしこまりました、では禁煙席にご案内しますね」

「スタッフが若いのもいいですね」

そうして席に案内される。

説明は理解しているのでスムーズに進む。

簡単に説明を受けそのまま次へ。

タブレットの使い方も理解している様子。

「タブレットの使い方は分かりますね」

「はい、問題なく」

「分かりました、では何かあればお呼びください」

「さて、先に水ですね」

そうしてリーザは一旦下がり別の料理を運びに行く。

ミゲイルは先に水を取りに行く事に。

「ここの水は飲み放題で美味しいからいいんですよね」

「あとは氷と手拭き、使い捨てにもメリットはあるんですよね」

「さて、注文を決めてしまいますか」

「注文、やはりいつものあれですか」

「これしこれとこれで確定と」

「このタブレットというのは便利ですね」

そうしてミゲイルはドリンクバーに飲み物を取りに行く。

迷わずに手を伸ばしたのはアイスミントティーだった。

その清涼感が何より気に入っているという。

アイスミントティーは温かい食べ物を食べたあとに飲むとまた美味しいとか。

そのついでに料理のサービスのスープバーも持っていく。

中華スープは多くの料理に合う美味しいスープだ。

「ふぅ、この清涼感が何より美味しいんですよね」

「冷たいお茶がミントの清涼感でさらに冷たく感じる」

「そのスーッとした感じが何よりも美味しい」

「お茶が豊富な中でアイスミントティーは至高ですね」

そうしているとバクダン炒め定食が運ばれてくる。

豚キムチに似た肉野菜炒め定食だ。

「お待たせしました、バクダン炒め定食になります」

「どうも」

「デザートが必要なときはお呼びください、それでは」

「さて、いただきますか」

バクダン炒め、豚キムチに似た肉野菜炒めだ。

豚肉と白菜キムチやニラ、もやしやキャベツなどを炒めた炒め物である。

旨辛に仕上げられたその味はライスとの相性も抜群である。

旨辛とはいえ辛味は少しだけ強めで、辛いものが苦手な人は要注意だ。

とはいえ豚肉と野菜の炒め物はやはりその食欲を掻き立てる。

ちなみに定食になるとライスの他に漬物とスープバーもついてくる。

店のメニューでも固定ファンを多く掴んでいる料理なのだとか。

特に肉体労働系の労働者に人気の高いメニューらしい。

豚キムチに似た肉野菜炒めなので、スタミナ料理のそれに近い。

旨辛の炒め物とライスの組み合わせはまさにゴールデンコンビなのだから。

「うん、やはりこれは美味しいですね、辛くてでもどんどん食べられる」

「ライスと一緒に食べるとまたその美味しさが増すんですよね」

「ライスが甘めなのが辛い味との相性がいいのか」

「肉と野菜の炒め物というだけなのにここまで美味しいのは何かあるのか」

「こっちの漬物もまたコリコリしていて美味しいですね、ザーサイというものでしたか」

「ザーサイ、これもまたライスとよく合う」

「そしてこの中華スープが食後のお腹を流してくれる」

「スープバーが無料でついてくるのもまた太っ腹ですよね」

そうしているうちにバクダン炒め定食を完食する。

続いてデザートを頼む事に。

「お待たせしました、デザートですか」

「はい、お願いします」

「かしこまりました、では器はお下げしますね、少々お待ちください」

それから少しして愛玉子が運ばれてくる。

レモンの酸味が効いたゼリーだ。

「お待たせしました、愛玉子になります」

「どうも」

「こちらは伝票です、会計の際にお持ちください、それでは」

「さて、いただきますか」

愛玉子、レモンシロップでいただくゼリーだ。

つるりと食べやすく、食後にも優しい台湾デザートである。

「うん、やはりこれは美味しい、酸味がありながらも甘いのがいい」

「つるりとしていて食べやすいし、食後にも優しいですからね」

「この甘くて酸っぱいシロップ、作れないものか」

そうしているうちに愛玉子を完食する。

飲み物を飲み干し会計を済ませる事に。

「支払いをお願いします」

「はい、バクダン炒め定食と愛玉子とドリンクバーですね」

「全部で銀貨一枚と青銅貨一枚になります」

「これでお願いします」

「ちょうどいただきます」

「満足していただけていマスか」

「これはシェフの方」

「バクダン炒めがすっかりお気に入りのようデスね」

「はい、あれは辛いのにどんどん食べられる不思議な料理ですね」

「ライスには塩気のあるものや辛いものが合うのデスよ」

「しかしなぜ爆弾なんですか？」

「諸説ありマスが、混ぜる事を爆発に例えたり混ぜた事を爆薬に見立てたという説が強いデスね」

「なるほど、食べ物の名前の由来というのには面白いですね」

「バクダンというのは混ぜて食べる料理に使われる事が多い例えデスから」

「混ぜる料理、それによく使われる表現なんですね」

「ハイ、他にも口の中で美味しさが弾けるという意味のバクダンおにぎりなんかもありマス」

「バクダンという表現はまた面白いものですね」

「他にも乾燥野菜くずをかやくと言ったりもしマスから」

「そういう言葉もあるんですね」

「ハイ、言葉は物騒デスが、立派な食べ物デスよ」

「混ぜる事への例え、面白いものですね」

「あくまでも一説であり、確定ではないデスが」

「おっと、ではそろそろ行きます、また食べに来ますね」

「バクダン炒めって固定ファンが多いよね」

「好きな人には刺さる料理のようデスね」

そうしてミゲイルは満足して帰っていった。

固定ファンを多く掴んでいるという料理がバクダン炒めらしい。

辛くて美味しい炒め物はやはり強いのか。