332/402

ホルモン丼

すっかり夏本番となり暑さが体に刺さる季節。

夏が終わったら秋が来て、秋の味覚が美味しい季節がやってくる。

とはいえ秋になっても突然涼しくなるわけでもない。

暑さは秋になってからも少しの間続くのだ。

「今回の届け先はどこかしら」

「４番街のシェイルさんの家ですね」

「４番街ね、なら早く届けちゃいましょうか」

「はい、行きましょう」

今回の届け先は４番街。

そんなに遠くないのでさっさと届ける事に。

「今回の注文って何かしら」

「ホルモン丼ですね」

「ホルモン丼？ホルモンって何よ」

「豚の腸の事みたいですよ」

「ふーん、腸まで食べたりするのね」

「牛なんかはタン、舌を食べたりしますけどね」

「そう考えると肉って意外と生き物一頭のあらゆる部位が食べられたりするのかしら」

「かもしれませんね、肉の部位だけでもその生き物のほぼ全身になるので」

「でもホルモンって美味しいのかしら」

「ぷりぷりしてて美味しいみたいですよ、辛味噌なんかで味付けすると美味しいとか」

「へぇ、辛味噌って豆板醤とかコチュジャンの事よね」

「はい、そういうので焼いたホルモンは美味しいそうです」

「でも豚の腸、家畜って食べない部位はほぼないのかしらね」

「だと思います、骨までは流石に食べないそうですが」

「それはそうだと思うけど、肉の幅広さは感じさせるわね」

「ホルモンも焼いて食べるのが美味しいそうですが、モツ鍋なんかもありますからね」

「でもホルモンってぷりぷりしてるのね、エビとかそういうのに近いのかしら」

「そうでもないとは思いますが、ライスにもよく合いますからね」

「やっぱり塩気のあるものってライスと合うのねぇ」

「ホルモンは肉好きの人にも人気のメニューらしいですし」

「ホルモン、ぷりぷりとした食感の豚の腸ね」

「食肉は家畜の全身をいただけるという事でしょうね」

「こっちかしら」

「この先を右ですね」

ホルモンは店では結構人気のメニューでもある。

特に辛味噌炒めは定番の味でもある。

ホルモンのその食感を好きになる人もまた多いのだとか。

ちなみにホルモンは酒飲みの人が好きな料理らしい。

ホルモンは子供にも好きな子が結構いるとアヌークは言っている。

辛味噌とは言うがそこまで辛くないのが理由なのか。

「でもホルモンって美味しそうね」

「辛味噌で味付けするのが一般的ですが、そんなに辛くないらしいですしね」

「確かに豆板醤とかコチュジャンって辛味噌って言いながらそこまで辛くないわよね」

「あれは甘い味付けも加えているからなんだそうですが」

「ふーん、それでホルモンって鍋とかもあるのよね」

「ええ、モツ鍋のモツってホルモンの事みたいですし」

「つまりモツ鍋ってホルモン鍋でもあるのね」

「ただホルモンは牛や豚の腸に限定した呼び方らしいですよ」

「ふーん、だとしたら家畜の腸全般を言うのがモツなのね」

「そうらしいです、モツは家畜の腸全般を言うみたいなので」

「でもホルモンってそんなに美味しいものなのね」

「辛味噌炒めにするとスタミナもつくので、暑い夏を乗り切るには最適なんだそうですね」

「確かに辛味噌とにんにくで炒めるみたいなのはスタミナもつくわよね」

「夏を乗り切るには最適な料理とも言えますよね」

「こっちかしら」

「二つ先の角を右ですね」

そのまま４番街に入っていく。

シェイルさんの家はすぐそこだ。

「ここかしら」

「すみませーん！キッチンハウスの宅配です！」

「はい！」

「お待たせ」

「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨三枚をいただきます」

「これでお願い」

「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文のホルモン丼になります」

「ありがとう」

「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」

「分かったわ」

「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」

「さて、いただきましょうか」

ホルモン丼、コチュジャンで焼いたホルモンを乗せた丼だ。

ホルモンの脂とコチュジャンがライスに染み込みそれもまた美味しい。

ホルモンもぷりぷりで食べごたえがあるように焼かれている。

さらに同じように焼いた豚肉とニンニクの芽も一緒に乗っている。

豚肉と豚ホルモンとニンニクの芽の丼がホルモン丼だ。

ニンニクの芽もコチュジャンで焼いた事で食べやすくなっている。

「ん、これは美味しいわね、ぷりぷりの肉がライスとよく合うわ」

「ホルモンの他にも豚肉も一緒に使われているのね、また美味しいじゃない」

「この緑の細長いものは確かニンニクの芽っていうものだったかしら」

「こういう味付けは暑い夏には最適ね」

「豚肉とホルモン、ニンニクの芽、不思議な食材だわ」

「ホルモンって腸って聞くけど、肉は本当にいろいろあるのね」

その頃のエト達は帰り際に休憩していた。

冷たい麦茶が体に染みる。

「美味しいわねぇ」

「冷たい麦茶は最高ですね」

「夏にはこれがないと物足りないわよね」

「すっかりそうなってしまいましたね」

飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。

帰ったらまた仕事である。

「ただいま戻ったわよ」

「お帰り、はい、冷たいおしぼり」

「ありがとうございます」

「外は暑いのデスよね」

「はい、とはいえ暑さ対策でなんとかなってますよ」

「ならいいんだけど」

「夏はもうしばらく続きそうだしね」

「なら暑さ対策ももうしばらく継続デスね」

夏の暑さもすぐに治まるわけではない。

とはいえ秋の足音は少しずつしてくるもの。

季節は思っているより早く巡るのだ。