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あんかけチャーハン

異世界も夏に突入したようで、外はすっかり暖かくなった。

とはいえ夏本番はまたこれからである。

夏のフェアメニューはいつも通り冷たい料理やスタミナ系がメインとなる。

夏だからとはいえしっかりと食べる事は大切なのだ。

「今回の届け先ってどこかしら」

「９番街のミリンダさんの家ですね」

「９番街ね、なら早く届けちゃいましょ」

「ええ、行きましょう」

今回の届け先は９番街。

そんな遠くはないのでさっさと届けてしまう事に。

「それで今回の注文は何かしら」

「あんかけチャーハンですね、チャーハンに野菜あんをかけたものみたいですよ」

「あんかけチャーハンね、チャーハンって確かに美味しいわよね」

「ええ、あのパラパラになったライスが美味しいんですよ」

「そういえばチャーハンのお米って普通のライスと違うわよね？」

「チャーハンは細米、つまり細いお米を使うと美味しくなるんだそうですよ」

「そうなの？つまりお米の種類が違うって事なのかしら」

「はい、ライスに使ってるお米とチャーハンなどの炒め物に使うお米は違うとか」

「ふーん、だから食感とかも違うのね、納得だわ」

「細米は炒め物に適していて、チャーハンやビリヤニなんかは細米で作るんだとか」

「細いお米、そういう種類もあるものなのね」

「なのでお米にも向いている料理があったりするみたいですよ」

「細米、チャーハンやビリヤニ、ジャンバラヤとかの炒める料理はそれなのね」

「普通のお米でも美味しくはなりますが、向いているのは細米なんだとか」

「そういうところには料理人としてのこだわりが見えるわね」

「実際細米で作った炒め料理は違うんだそうですし」

「なるほどね、やっぱり向いてるお米だからこその美味しさってあるのね」

「ええ、実際炊いて作る米料理に細米は向かなくて、美味しくならないんだとか」

「こっちでいいのよね？」

「ここの先の角を左ですね」

チャーハンやビリヤニなどの炒める米料理には細米がよく合う。

実際本場のチャーハンは細米で作られている事も多い。

過去に日本であったタイ米は不味いという話。

あれは調理法を知らずに、炊いて食べた人が多かったから起きた話でもある。

細米は炊いて食べても美味しくない、炒めて食べるのが正解なのだ。

調理法が分かっていれば細米は普通に美味しいのだから。

「それにしてもお米って意外と奥が深いのね」

「そうですね、細いお米の食べ方とかも含めて」

「でも細いお米って炊いて食べても美味しくないものなの？」

「食べられなくはないですけど、美味しくはならないそうですね」

「細米は炒めると美味しいから、そういう料理によく使われるって事だものね」

「実際本場のチャーハンは細米で作るそうですよ」

「お米にも向き不向きはある、美味しい料理って難しいのね」

「そうですね、向いている食材みたいなのはあるんでしょう」

「細米はそれこそ炒めて食べれば凄く美味しいって事なのかしら」

「本場の炒めた米料理はそういうものらしいですよ」

「その食材が手に入りにくいから、別のもので代用する事は普通って事でもあるのよね」

「そうみたいですね、別のもので代用する事は珍しくないそうですし」

「その土地では手に入りにくい食材ってあるわけでしょうしね」

「実際遠くの国の食材を輸入するのも簡単な話ではないですしね」

「そういう問題もついてくるのね」

「輸入は運ぶ距離が長かったりもしますしね」

「確かにそういうのは難しい話よね、外国のものが食べられるだけでも凄いのに」

「輸送にはお金もかかるからこそですよね」

「こっちかしら」

「二つ目の角を右ですね」

そうして９番街に入っていく。

ミリンダさんの家はすぐそこだ。

「ここみたいね」

「すみませーん！キッチンハウスの宅配です！」

「はい！」

「お待たせしました」

「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨二枚をいただきます」

「これでお願い」

「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文のあんかけチャーハンになります」

「どうも」

「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いします」

「分かりました」

「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」

「さて、いただきましょうか」

あんかけチャーハン、チャーハンに野菜あんをかけたものだ。

チャーハンの美味しさはもちろん、熱々のあんがまた美味しい。

野菜あんというだけあり様々な野菜が使われている。

チャーハンは細米なので、それにあんがよく絡む。

パラパラチャーハンと野菜あんの組み合わせはどんどん食べられる美味しさだ。

あんかけのあんも熱が逃げないようにしてあるからこそその美味しさが分かるのである。

「うん、これは美味しいわね、炒めたライスにあんかけっていうのをしているのね」

「チャーハンも美味しいし、このあんかけも熱々で美味しいわ」

「野菜もたっぷりで、食べごたえがあるしね」

「それにしてもこれだけ野菜を使ってるのは凄いわね」

「チャーハンとの組み合わせはその美味しさを引き立ててる感じね」

「このあんかけがまたいろんな味が溶けてていいわね」

その頃のエト達は帰り際に休憩していた。

冷たい麦茶が体に染みる。

「はぁ、美味しいわね」

「麦茶は暑い季節にはたまりませんね」

「ええ、体の奥に染みていく感じよ」

「麦茶はやはり冷たいものに限りますね」

飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。

帰ったらまた仕事である。

「ただいま戻ったわよ」

「お帰り、はい、おしぼり」

「ありがとうございます」

「外は暑くなってきてマスか」

「ええ、でもまだ暑いとまではいかないわね」

「ならまだ夏服には変えなくていいかな」

「衣替えはまだ早いと思います」

「ならそうしておきマスね」

夏本番まではもう少しである。

とはいえまだ夏本番には遠い。

ここから少しずつ暑くなっていき、夏本番には冷房目当てで来る客も増えてきそうだ。