表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/402

ちゃんぽん

異世界キッチンの開店からしばらくが経ち、経営も順調に出来ている。

客足も伸びていてモーニングや夕食時にも人が多く入っている。

深夜営業はしていないため閉店は日付の変わる24時なのもこっちに合わせたためだ。

そんな店の噂は確実に広まっているようで。


「この辺りかしら、噂のお店って」


「なんでも美味しい料理が安く食べられるらしいけど」


「それに話だと凄く美味しい野菜が食べられるって聞いたんだけど、本当かしら」


「あ、ここみたいね、入ってみましょうか」


彼女の名はミランダ、八百屋の娘で主に仕入れをしている。


そんな彼女もここの野菜を使った料理の噂は気になるようで。


「二重扉にベル、一応清潔にはしてるのね」


「中は暖かいわね、音楽も流れててキカイもたくさんある」


「とりあえず野菜よ、それを確認しなきゃ」


「いらっしゃいませ!何名様ですか!」


「ん?一人よ」


「かしこまりました、おタバコはお吸いになられますか」


「パイプなら吸わないけど」


「かしこまりました、それでは禁煙席にご案内します」


「給仕かしら、可愛いわね」


そうして席に案内される。

そこで一通りの説明を受ける。


説明は問題なく分かってくれたようで特に問題はない。

由菜は一旦奥に下がっていく。


「そういえば水は自分で取りに行くのね、取りに行かなきゃ」


「えっと、ここにコップを押し当てて…これだけで飲み水が出るなんてどういう仕組み?」


「あと氷ね、氷もこんなに…キカイを使ってるのは分かるけど、凄いわね」


「さて、注文を決めなきゃね、野菜よ野菜」


「いろいろあるわね、コメに麺に肉に魚にもちろん野菜、あと甘味も」


「とりあえず…うーん、野菜料理だと何がいいかしら」


「まずは…サラダよね、あとは…ん?これがよさそうだわ、これにしましょう」


「確かこのベルで…」


ベルを鳴らして店員を呼ぶ。

少ししてアレッシオが出てくる。


「お待たせしました、ご注文はお決まりですか」


「さっきとは違う人なのね、えっと、これとこれあと甘味でこれとセットドリンクも」


「ちゃんぽんとオニオンサラダ、紫芋のモンブランにドリンクバーですね」


「このケーキってお芋なの?」


「はい、今が旬の紫芋っていうお芋らしいです」


「そう、ならそれでお願い」


「かしこまりました、デザートは食後でよろしいですか」


「ええ、構わないわよ」


「かしこまりました、ではオーダーを復唱させていただきます」


「ちゃんぽんとオニオンサラダ、紫芋のモンブランにドリンクバーです」


「オーダー!ちゃんぽんとオニオンサラダ、紫芋のモンブランにドリンクバーです!」


「喜んで!」


「それでは少々お待ちください」


「料理人は奥なのね、それより飲み物取りに行きましょうか」


そうしてドリンクバーに飲み物を選びに行く。

一通り見てから選んだのはキャロットジュースだった。


野菜ジュースではなくキャロットジュースというのがアヌークらしいところである。

もちろん仕入先は信頼する相手からだ。


「これにんじんのジュースなのかしら、甘くて美味しいわね」


「砂糖の甘さは感じないから、純粋ににんじんだけ?」


「それなのにこんなに甘いなんて、そんなにんじんがあるの?」


「野菜が甘いなんて、はじめての経験だわ」


そうしているうちに先にサラダが運ばれてくる。

ちゃんぽんはもう少しかかるようで。


「お待たせしました、先にオニオンサラダになります」


「ええ、ありがとう」


「ちゃんぽんはもう少しお待ち下さい」


「さて、とりあえず食べてみなきゃ」


先にオニオンサラダを食べてみる事に。

信頼する仕入先から仕入れたその野菜はもちろん美味しいわけで。


「美味しい…何これ…葉物もそうだけど、オニオンがこんな美味しいの?」


「生のオニオンってこんな美味しいの?普通は辛くて食べられたものじゃないのに」


「それにこのソースも凄く美味しい、野菜の味を知るにはサラダだけど、これなんなのよ…」


「他にもトマト?小さいトマトなんてあるのね、これも美味しい…悔しいけど、凄いわね」


そうしているうちにちゃんぽんも運ばれてくる。

豚骨のスープとたっぷりの野菜が乗った野菜ちゃんぽんだ。


「お待たせしました、ちゃんぽんになります」


「ありがとう」


「デザートが必要な時はお呼びください、それでは」


「野菜がたっぷりね、下には麺なのね、それじゃいただいてみましょ」


ちゃんぽん、長崎発祥の麺料理だ。

ベースとなっているのは中国福建省の福建料理。


発祥については諸説あるが、詳しくは定かではない。

だが異説では明治初期にはすでに食べられていたともされる。


野菜と豚肉、蒲鉾などをラードで炒め豚骨と鶏ガラのスープで味を整える。

そこにちゃんぽん用の麺を入れ煮立てるのが基本的な作り方だ。


ちなみにちゃんぽん用の麺は長崎と他県では成分が異なる。

そのため味が違うのが特徴だ、長崎のちゃんぽん用の麺は独自の規格が定められているのだ。


「これは美味しいわね、炒められた野菜も凄く美味しいし…これは何かしら?」


「肉は豚の肉みたいね、でもこの白とピンクのやつは何?魚っぽい味だけど」


「でも美味しい、野菜を炒めるだけでこんな美味しくなるのね」


「野菜本来の味もそうなんだけど、野菜から感じるのは甘さなのよね」


「甘い野菜なんて聞いた事がないわ、基本的に野菜って苦味とか酸っぱいものなのに」


「どうやって栽培したらこんな甘い野菜になるのかしら、何か秘密とかあるのかしら…」


「うーん…野菜の事については勉強ね、でも美味しい…」


そうしているうちにちゃんぽんとサラダも完食する。

味には満足したようで、デザートを頼む事に。


「お待たせしました、デザートですか」


「ええ、お願い」


「かしこまりました、それではお皿はお下げしますね、少々お待ちください」


そうして由菜が器を下げて奥に戻る。

それから少しして紫芋のモンブランを運んでくる。


「お待たせしました、紫芋のモンブランです」


「ありがとう」


「こちらは伝票です、会計の際にお持ちください、それでは」


「さて、いただいてみましょう」


そんなわけで紫芋のモンブランをいただく。

紫芋のモンブラン、栗の代わりに紫芋を使ったモンブランである。


「これは美味しいわね…砂糖とか使ってるけど、でもお芋の味もしっかりする」


「紫芋って紫色のお芋なのね、でもお芋の味はしっかりしてるわ」


「知らない野菜もあるのね、勉強になるわ」


そうしているうちに紫芋のモンブランも完食する。

飲み物を飲み干し会計を済ませる事に。


「支払いを頼みたいのだけど」


「はい、お支払いですね」


「ちゃんぽんとオニオンサラダ、紫芋のモンブランとドリンクバーで銀貨一枚と銅貨五枚です」


「ならこれで頼むわね」


「ちょうどいただきます」


「満足していただけマシタか」


「あなたが料理人?ええ、美味しかったわ」


「それは何よりデス」


「ねえ、あの野菜凄く甘かったんだけど、どうやって作ってるの」


「そうデスネ、私は農家ではないデスガ、そういう栽培法があるそうデス」


「へぇ、そうなのね」


「野菜には詳しいのデスガ、農家ほどの専門的な知識はないデス、スミマセン」


「そう、でも生のオニオンがあんな美味しいなんて知らなかったわ」


「ただ食材の勉強の一環で農業も経験はしていマス、デスガ基本的には料理人デス」


「なんにしても面白かったわ、また食べにくるわね」


「ハイ、お待ちしていマス」


「それじゃ仕事に戻るわね、またそのうちに来るから」


「野菜関係の仕事かな」


「だと思いマスよ」


こうしてミランダはその味を覚えて帰っていった。

帰ってから家族にその味について話したら驚かれたそうな。


ちなみに基本的に野菜は日本産なので、世界の違いなのであろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ