四種のチーズピザ
外はすっかり春の陽気が訪れている暖かな季節。
店の方でもスタッフは春服に衣替えが完了した様子。
流石に寒い日はもう来ないようではある。
そして春のフェアメニューも順調に売れているようだ。
「今回の届け先はどこかしら」
「1番街のステラさんの家ですね」
「1番街ね、ならさっさと届けちゃうわよ」
「はい、行きましょう」
今回の届け先は1番街。
そんなに遠くないのでさっさと届けてしまう事に。
「今回の注文って何かしら」
「四種のチーズピザですね」
「四種のチーズピザ?そういえばチーズにも種類があるっていう話よね」
「ええ、使ってあるのはカマンベールとチェダーとゴーダとエメンタールですね」
「種類が違うと味とかも変わってくるのよね?やっぱり」
「みたいですね、そのまま食べても美味しいとは聞いてますよ」
「ふーん、でも姫はチーズは美味しいから好きよ」
「エトさん、チーズがお好きですよね」
「好きね、パンと一緒に食べると特に美味しいのよ」
「チーズはパスタなんかにソースにしてかけても美味しいそうですよ」
「チーズソースって事?そんな食べ方もあるのね」
「チーズソースに粗挽き胡椒をかけるのがシンプルにして美味しいとか」
「胡椒って高いのに、よく使えるものよね」
「独自の仕入先があるんですよ、きっと」
「でもチーズに種類があるって言われても、よく分からないのよね」
「そうですね、お話によく出てくる穴空きチーズはエメンタールチーズなんだそうです」
「あれがエメンタールチーズだったの?それは初耳だわ」
「カマンベールチーズなんかは白い色が強いチーズみたいですね」
「そういうので見分けるしかないのかしら」
「意外と言われてもよく分からないですしね」
「そうね、まあ美味しいならそれでいいとは思うけれどね」
「エトさんらしい考え方だとは思いますけどね」
「こっちよね」
「ここの先を左ですね」
エトもチーズは好きなので、よく食べていたりする。
特にドリアやラザニアなどを気に入っているようである。
とはいえ異世界ともなるとチーズの種類みたいなものは伝わらないものなのか。
野菜の品種や肉の部位の名前なども伝わらないという事らしい。
ただそれでも種類はあるようで、複数の種類が存在していたりする。
あくまでもアヌーク達の世界の名前が伝わらないという話のようだ。
「それにしてもチーズって本当にたくさん種類があるのねぇ」
「アヌークさんが言うには100種類以上種類があるみたいですよ」
「100って、チーズだけでもそんなに種類があるのね」
「ええ、アヌークさんでも全種類までは把握してないそうですし」
「チーズって奥が深いのね、凄い話だわ」
「それにチーズは種類によって向いている料理もあるそうですから」
「ピザなんかだとカマンベールやチェダーなんかは定番なのかしら」
「みたいですね、カマンベールやチェダーはピザみたいなパン系の料理に合うんだとか」
「チーズの種類も多様だし、世の中は面白いものね」
「チーズはそれだけいろいろあるんですよ、中には青カビチーズなんてものもあるとか」
「青カビチーズって、食べても平気なものなの?」
「お酒の肴なんかにいいみたいですね、青カビチーズは」
「ふーん、チーズって面白いのねぇ」
「それだけ多様なんだと思いますしね」
「こっちでいいのかしら」
「はい、ここの先の三つめの角を右ですね」
そのまま1番街に入っていく。
ステラさんの家はすぐそこだ。
「ここみたいね」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨三枚をいただきます」
「これでお願いします」
「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文の四種のチーズピザになります」
「ありがとうございます」
「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いします」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただきますか」
四種のチーズピザ、四種類のチーズを使ったチーズたっぷりピザだ。
店のピザは追加料金でチーズを倍にしたりも出来るがそれとはまた違う。
使っているチーズはカマンベールにチェダー、ゴーダにエメンタール。
定番とも言える四種類のチーズだが、定番だからこそ美味しいとも言える。
そんな定番の四種のチーズがこれでもかと乗っているチーズの暴力ピザなのである。
チーズの暴力が押し寄せてくる、それはチーズの大海原である。
「ん、これは美味しいですね、チーズが山盛りです」
「パン生地にたっぷりのチーズを乗せて焼いてあるんですね」
「こんなたくさんのチーズを乗せてあるなんて凄いです」
「確かカマンベールやチェダー、ゴーダにエメンタールでしたか」
「そういう種類のチーズがあるという事なんですよね」
「このチーズの暴力はまさにチーズの海ですね」
その頃のエト達は帰り際に休憩していた。
冷たい麦茶が体に染みる。
「はぁ、癒やされるわねぇ」
「麦茶は疲れた体によく染みますよね」
「麦茶って不思議な飲み物よねぇ」
「でもそれが美味しいんですよね」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻ったわよ」
「お帰り、はい、おしぼり」
「ありがとうございます」
「外はすっかり暖かくなりマシタか」
「ええ、すっかり暖かいわよ」
「ならもう春服でも問題ないかな」
「たぶん大丈夫だと思いますよ」
「なら冬服はもう片付けてもよさそうデスかね」
外はすっかり春の陽気である。
冬服はもう片付けてもいいという判断になった様子。
これから春はさらに深まっていく。




