289/402

明太子ピザ

すっかり秋になり涼しい季節へと季節は変わった。

それもあり温かい料理がよく売れるようになってきた。

また秋という季節は美味しいものもたくさんある季節でもある。

なのでそんな美味しいものを求めて食べに来る客はやはり多いのだ。

「今回の届け先ってどこかしら」

「８番街のアルバさんの家ですね」

「８番街ね、なら早く届けちゃいましょ」

「はい、行きますよ」

今回の届け先は８番街。

そこまで遠くないのでさっさと届けてしまう事に。

「それで今回の注文ってなんなの」

「明太子ピザですね」

「明太子ピザってあれよね、確か魚の卵だったかしら」

「はい、それを少し辛く味付けしたものですね」

「明太子は嫌いじゃないけど、魚の卵なんてよく食べようと思ったものよね」

「それが意外と美味しかったという事なのかもしれませんね」

「明太子って辛いんだけど、辛すぎないからそこはいいわよね」

「エトさんは辛いものはそんなに得意でもなかったんでしたっけ」

「ええ、食べられないっていうわけではないけど」

「でも明太子はパンに乗せて焼いたりしても美味しいですよね」

「明太子ピザはまさにそのパンに乗せて焼いたものだものね」

「明太子というのは意外といろんな料理とマッチするのは凄いというか」

「でも明太子って要するにたらこを辛い味にしたものの事よね」

「そうらしいですね、たらこの加工品が明太子らしいので」

「魚を食べるのはまあ分かるとしても、卵まで食べようっていうのはなかなかよね」

「明太子は小さいつぶつぶの塊ですからね」

「そうなのよね、このプチプチ感が美味しいんだけど」

「エトさんは好き嫌いはあってもきちんと食べますからね」

「そりゃ王族なんだから、それぐらいは出来ないと始まらないもの」

「外交の席なんかでも会食はありますからね」

「だから苦手なものでも食べられるようには努力はしてるわよ」

「その辺は王族として立派ですよね」

「こっちかしら」

「ここの先の角ですね」

エトも割と偏食家ではあったりする。

とはいえ苦手なものでも食べられるように努力はしているという。

それは会食などの席で苦手なものを食べられないというのは失礼だと知っているからこそ。

なのでしっかりと食べられるようにしているものの、苦手なものはやっぱり苦手だ。

それでも苦手なものを食べられるように努力をしているのはやはり流石である。

王族たる者失礼のないように振る舞うのもまた大切だと。

「それにしても魚をこの内陸の国で食べられるとは思わなかったわよね」

「どうやって仕入れているのかが気になるところではありますよね」

「お店だと凍らせて保存してたりするし、そういう技術があるのよね」

「魚を凍らせる事で腐らなくしているという事ですかね」

「でしょうね、冷凍庫があるぐらいだし」

「冷凍の技術があるっていうのは凄いですよね」

「姫達の国にもないし、隣国でもそんな技術はまだないのにね」

「ええ、そこは大したものというか」

「アヌーク達ってどこの国から来たのかしらね」

「相当に文明が進んだ国から来ているんでしょうね」

「どこにそんな国があるのかしら」

「そればかりは私にもなんとも」

「世界はそれだけ広いっていう事なんだろうけど、そんな国は聞かないし」

「でも悪い人には見えませんから、それだけは救いでしょうね」

「こっちかしら」

「ここの先二つ目の角ですね」

そのまま８番街に入っていく。

アルバさんの家はすぐそこだ。

「ここかしら」

「みたいですね、すみませーん！キッチンハウスの宅配です！」

「少し待ってろ！」

「待たせたな」

「はい、えっと、先に銅貨一枚と青銅貨一枚を頂きます」

「これで頼む」

「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文の明太子ピザになります」

「すまない」

「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」

「分かった」

「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」

「さて、食うか」

明太子ピザ、明太子ソースに海苔を散らしたピザである。

そこにチーズを乗せてこんがりと焼き上げてある。

明太子の味がピザ生地との相性もよく、子供でも食べやすい味だ。

明太子は辛いとはいえ、そこまで辛い食べ物でもない。

子供でも食べられる程度の辛さなので、割と安心ではある。

シンプルな明太子ソースとチーズ、焼き海苔の美味しさがあとを引く味なのだ。

「うん、こいつは美味いな、チーズがよく焼いてある」

「明太子ってのはこのピンク色のつぶつぶのソースか」

「この黒いのは海苔っていう海の草の事だって書いてあったな」

「シンプルなんだけど、それが美味しさなんだろうな」

「明太子、それを使ったソースはこんな美味いんだな」

「ピリッと辛いけど、全然食べられる辛さだ」

その頃のエト達は帰り際に休憩していた。

麦茶はまだ冷たいものを渡される様子。

「麦茶が美味しいわね」

「そろそろ温かいものになる季節ですかね」

「冬はもう少し先だものね」

「その時は温かい麦茶になるんですね」

飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。

帰ったらまた仕事である。

「ただいま戻ったわよ」

「お帰り、はい、おしぼり」

「ありがとうございます」

「外はもうすっかり涼しいみたいデスね」

「ええ、もう完全に秋ね」

「なら秋服でも問題ないかな」

「ええ、問題ないと思います」

「では寒くなり始めた時には言ってクダサイね」

外はすっかり秋模様である。

なので秋服に衣替えも完了している。

ここからどんどん涼しく、そして寒くなる。