表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
287/402

ネギたま豚カルビ丼

すっかり秋の陽気となり制服も秋冬に切り替わった季節。

秋のフェアメニューも順調に売れているので、期間限定はやはり強い様子。

そんな中でもいろいろ試行錯誤していくのがアヌークでもある。

季節の味覚以外にも様々なものをあれこれ考えるのは楽しいらしい。


「今回の届け先ってどこかな」


「10番街のカティさんの家ですね」


「10番街か、ならさっさと届けちゃおうか」


「はい、行きましょう」


今回の届け先は10番街。


そんなに遠くはないのでさっさと届ける事に。


「それで今回の注文って何かな」


「ネギたま豚カルビ丼ですね」


「それってネギと卵の豚丼って事かな」


「そんな感じですね」


「でも豚丼ってお店で出してるものは肉の種類が違うんじゃなかったっけ」


「みたいですよ、肉の部位によって同じ丼でも味なんかが変わるみたいです」


「肉って奥が深いんだなぁ」


「簡単に言うと肉の部位というのは家畜の体のここの部分の肉みたいな感じらしいです」


「つまりお腹の肉とか足付近の肉とか、背中の方の肉とかそういう事?」


「そういう事みたいですね、少ししか取れない部位の肉なんかもあるみたいですし」


「肉ってそんな細かいのか」


「だからこそ安く提供出来る肉の部位はそれだけ一頭の家畜から多く取れるという事ですし」


「でもあたしの故郷でも畜産はやってたから、肉はそこそこ見てるんだよね」


「リーザさんの故郷は離島でしたよね」


「うん、それもあるけど食肉用の牛とかはいたけど、乳牛はあまり見なかった気がする」


「つまり牛や豚は食べるためのものが多くて、乳搾りなんかはしてなかったと」


「ミルクはヤギのミルクが多かったよ、お菓子作りなんかもヤギのミルクでやってたし」


「なるほど、だとしたらそういう食文化なのかもしれませんね」


「農家が野菜を育ててるのと、家畜は主に食肉用が島の産業だったかも」


「あとは卵なんかもですか」


「そうそう、鶏肉は最近は村にも伝わったらしくて食肉用の鶏肉を始めたって」


「そういうところは逞しさを感じますね」


「こっちかな」


「この先の角を曲がるみたいですね」


リーザの故郷はそれこそ田舎の離島なので、農業や畜産が主な産業ではある。

実際この王都にもリーザの故郷から野菜や肉が卸されていたりする。


馴染みのある味ではあるが、リーザも故郷の味が食べられるのは落ち着くのだろう。

そうした理由もあり、リーザの故郷の肉や野菜はブランド化もされていたりする。


その辺は逞しさでもあるし、販売戦略でもあるのだろう。

ちなみにリーザ曰く島の物価が当たり前で育ったので、王都の物価に驚いたという。


「それにしても肉もいい肉は相応に高いんだよね、美味しいのは確かだけどさ」


「ですね、とはいえお店で出す高い肉は相応な食べ方もあるんでしょうね」


「お店に来る身分の高い人から聞いたんだけど、ステーキが高すぎるらしいよ」


「そうなんですか?」


「ステーキに使ってる肉がいい肉なのはいいけど、ステーキにしては高いとか」


「つまりステーキは本来はもっと安い料理という認識なんでしょうか」


「だと思う、お店のステーキは肉の品質を加味してもやっぱり高く感じるんだって」


「その辺は食文化の違いなんでしょうか」


「アヌークの出身の国だとステーキは高いみたいだし」


「肉が貴重だった時代のままの価格なんでしょうか」


「そこはなんとも言いにくいけど」


「ステーキの価格、そこはちょっと興味深いかもしれません」


「肉の品質とかは関係なくなのかな」


「どうなんでしょうね」


「この先かな」


「そこの角を曲がった先ですね」


そうして10番街に入っていく。

カティさんの家はすぐそこだ。


「ここかな」


「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」


「はい!」


「お待たせしました」


「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨一枚を頂きます」


「これでお願い」


「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文のネギたま豚カルビ丼になります」


「ありがとう」


「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」


「分かったわ」


「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」


「さて、いただきましょうか」


ネギたま豚カルビ丼、豚カルビを使った豚丼である。

そこにコチュジャンベースのソースを掛けた青ネギと半熟卵が乗っている。


ソースが染みたライスに卵を崩す事でその味はまた美味しくなる。

肉もそうしたソースがよく絡んで美味しい。


丼ものはライスに合う味付けをするのが鉄板なのだという。

豚丼も肉の種類によって変わるという事である。


「うん、美味しいわね、肉にソースがよく絡んでる」


「ライスと一緒に食べるとまたそれはそれで美味しいものね」


「この味はライスに合うように作られているのかしら」


「この卵も崩してライスと絡めると一層美味しくなるわね」


「それにしても半熟卵なんて凄いわね、美味しいけど」


「半熟卵が食べられるお店、興味深いわ」


その頃のリーザ達は帰り際に休憩していた。

麦茶はまだ冷たいものを持たされている。


「ふぅ、美味しいね」


「麦茶はやっぱり冷たい方が美味しいですね」


「温かい麦茶になるのはもう少し先かな」


「でしょうね」


飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。

帰ったらまた仕事である。


「ただいま戻ったよ」


「お帰り、はい、おしぼり」


「ありがとうございます」


「外はもう涼しくなりマシタか」


「うん、だいぶ涼しくなったよ」


「ならもう完全に秋だね」


「はい、そんな感じです」


「夏服とかはもう片付けてもよさそうデスね」


すっかり秋の涼しさが本格化している様子。

これからはさらに涼しくなり冬へと季節は変わっていく。


冬になれば温かい料理がよく売れる季節となる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ