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Ｒｅ：うな丼

最近はすっかり夏の暑さも本格化してきた季節。

宅配に出る際には暑さ対策もしっかりとさせる事を徹底している。

また暑さで自転車のフレームが熱くなる事もしっかりと考えている。

そして今年もあれが出る時期が来たようである。

「今回の届け先はどこかしら」

「９番街のガイルさんの家ですね」

「９番街ね、ならさっさと終わらせるわよ」

「ええ、行きましょう」

今回の届け先は９番街。

そんなに遠くはないのでサクッ届けてしまう事に。

「今回の注文って何かしら」

「うな丼ですね」

「うな丼って鰻よね？」

「はい、土用の丑の日なので」

「土用の丑の日ってなんなの？」

「なんでも鰻を食べて体力をつけようみたいな日だそうです」

「ふーん、でも明確にこの日って決まってたりはしないのよね？」

「しないですね、いつになるかはその年になるまで分からないみたいですよ」

「なんか面倒な日ね、でも鰻は結構美味しいけど」

「鰻って私達の国だとそんな食べられていないのに、凄いものですよね」

「そもそも鰻なんて漁師でも食べないようなものじゃない」

「それは調理法が確立されていないからでは」

「でもお店で出してる鰻は美味しいのよね、鰻の質が違うのかしら」

「調理法とかも関係してそうではありますよね」

「まあ姫は鰻は好きよ、というか働き始めてから好きになった感じよね」

「土用の丑の日は鰻が出回る季節ですからね」

「でもアヌークは鰻が美味しいのは冬だって言ってたわよね」

「みたいですね、なので土用の丑の日以外に冬季限定で鰻が出てくるみたいですよ」

「上手くやってるわねぇ」

「実際冬の鰻は夏の鰻よりずっと美味しいっていうお客の声もありますし」

「なら夏に出す必要はないんじゃないの」

「そこはなんとも言えませんよね」

「こっちかしら」

「ここを真っ直ぐですね」

鰻の瞬は本来は冬である。

土用の丑の日は昔の人が言い出しただけに過ぎない。

なので店では冬にもフェアメニューとして鰻を出している。

店の客からも冬の鰻の方が美味しいとの意見はいただいている。

とはいえ土用の丑の日に乗っかるのは商売人としての矜持である。

鰻が美味しいのは冬だが、土用の丑の日にもしっかりと乗っかるのだ。

「それにしても鰻も調理法次第であんなに美味しくなるものなのねぇ」

「我々が調理法を知らないだけで実は美味しい食べ物は多いのかもしれませんね」

「そうね、鶏肉なんかもそれだったし」

「鶏肉も骨を取り除く方法が一般に浸透してから一気に人気の肉になりましたし」

「結局は美味しく食べる方法を知らないっていうだけなのかしらね」

「鰻や鶏肉なんかはまさにそれですからね」

「でもそうした調理法が広まってるのはアヌークの功績なのかしらね」

「そうですね、食べられるようになったというのは大きいのかと」

「でも実はこれ食べられるみたいな食材もあるのかしら」

「結局は調理法次第なのかもしれませんしね」

「その辺は難しいものよね」

「お店で出している料理も意外な食材が使われてたりしますし」

「魚が出せるだけでも大したものよね」

「魚は輸送の方法の問題もありますからね」

「美味しいものはたくさんあるけど、やっぱり食べ方を知らないだけなのかしらね」

「かもしれませんね、ギルドなんかもそうした宣伝をしてますし」

「知らないだけっていうのは大きいのかしらね」

「調理法はきちんと存在するという事ですね」

「こっちかしら」

「ここの角を曲がった先ですね」

そのまま９番街に入っていく。

ガイルさんの家はすぐそこだ。

「ここかしら」

「すみませーん！キッチンハウスの宅配です！」

「はい！」

「待たせたな」

「えっと、先に銀貨一枚をいただきます」

「これで頼む」

「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文のうな丼になります」

「ああ、すまない」

「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いします」

「分かった」

「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」

「さて、食うか」

うな丼、その名の通りうなぎを乗せた丼の事である。

なおうな丼とうな重の違いは容器の違いであり、それ以外は同じものである。

丼に盛り付ければうな丼、重箱に盛り付ければうな重になる。

ちなみに鰻の旬は本来は冬であり、夏の鰻は土用の丑の日的な意味が強い。

なので鰻は本来は冬に美味しい食材でもある。

なおそれでもうな丼は人気の限定メニューでもある。

「うん、こいつは確かに美味いな、身がふわふわでいい」

「鰻ってこんなに美味しいものだったんだな」

「タレが染み込んだ鰻もライスもどっちも美味いのがいいな」

「あとこのセットの野菜もいい感じに塩気があっていいな」

「お新香っていう漬物みたいだが、鰻との相性もいい」

「鰻もしっかりと調理すれば美味しいものなんだな」

その頃のエト達は帰り際に休憩していた。

冷たい麦茶が体に染みる。

「はぁ、美味しいわね」

「麦茶は暑い日には嬉しいですよね」

「暑い日に飲む麦茶ってなんでこんなに美味しいのかしらね」

「冷たいからこそ美味しいとも言えますね」

飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。

帰ったらまた仕事である。

「ただいま戻りました」

「お帰り、はい、冷たいおしぼり」

「ありがとうございます」

「外はすっかり夏という感じデスかね」

「ええ、夏も本番って感じね」

「夏服に着替えたい時はいつでも着替えていいからね」

「はい、ありがとうございます」

「夏は食中毒にも気をつけないとデスね」

夏という季節は食中毒が怖い季節でもある。

それもあり宅配やテイクアウトに対しては出来るだけすぐ食べるようにも言う。

夏の暑さは食べ物にとっての天敵なのだから。