豚キムチ丼
すっかり春の陽気になり服装も薄着になり始める季節。
店の制服も春服に変わり暖房も使わなくなった。
その一方で宅配も確実に国内に知られ始めている様子。
アヌークもスタッフの増員、宅配スタッフを増やすか検討しているという。
「今回の届け先ってどこかな」
「13番街のダリエルさんの家ですね」
「13番街だね、ならそんな遠くないし早く行こうか」
「では行きますか」
今回の届け先は13番街。
そこまで遠くないのでさっさと届けてしまう事に。
「それで今回の注文って何かな」
「豚キムチ丼ですね」
「豚キムチってあれだよね、豚肉とキムとの炒めものだよね」
「そうですね、キムチは漬物の事みたいですよ」
「キムチって結構美味しいよね、辛いものは得意じゃないけど、結構好きだし」
「あの不思議な美味しさはなんなんでしょうね」
「だよねぇ、でも豚肉と一緒に炒めるとなんであんな美味しいんだろ」
「キムチは元々肉との相性がいいんでしょうね」
「でもキムチって結構辛いのは驚いたけどね」
「とはいえ食べられない辛さではないんですよね」
「そうそう、辛いんだけど不思議と美味しく感じるというか」
「苦手な人は苦手な味だとは思いますけどね」
「まあそれは確かに」
「それにしてもリーザさんは漬物とか好きなんですね」
「あたしの故郷だとピクルスを漬けてる人とかいたからね」
「なるほど、それで漬物には抵抗がないんですか」
「うん、まああたしはキムチは嫌いじゃない味かも」
「リーザさんって意外と悪食ですよね」
「まあ確かに苦手な食べ物は少ない気がする」
「そういう人って少し羨ましいですね」
「そういえば豚キムチ炒めってお店でも人気の定食メニューの一つなんだっけ」
「そうらしいですね、労働者なんかに人気のメニューみたいですよ」
「へぇ、そういうのは栄養価的な意味もあるのかな」
「かもしれませんね」
「肉料理はやっぱり人気なんだなぁ」
「多くの人が好きなものですからね」
「こっちかな」
「ここを真っ直ぐですね」
豚キムチは定食メニューとしても人気のメニューでもある。
特に労働者なんかには嬉しいものなのだとか。
ちなみにキムチはアヌークが選び抜いた美味しいものを用意している。
辛いのだが、旨味が溢れ出る感じのキムチだ。
豚肉との相性もよく、豚キムチ定食だけでなく今回のように丼にも使っていたりする。
白米との相性が抜群なのだとアヌークは言っているようだ。
「それにしてもなんで豚キムチってあんなに美味しいんだろう」
「それは恐らく白米との相性がいいからでは」
「ライスとの相性?」
「ライスは塩気のあるものとの相性がいいと言っていましたから」
「そういえば確かに定食のおかずって塩気が強いものばかりだよね」
「ええ、ライスは甘みがあるので、塩気があるものと相性がいいみたいですよ」
「なるほど、そういう理由なのか」
「みたいですね」
「豚キムチが美味しい理由ってそれか」
「そのままでも美味しいですが、ライスと合わせるとその美味しさが跳ね上がるんでしょうね」
「ライスは塩気のあるものと相性がいいか、それが定食の美味しさの理由かな」
「なので定食はおかずでライスを食べるための合理的な組み合わせなんでしょうね」
「塩気があるもの、ライスはしょっぱいものと相性がいいのか」
「しょっぱいものというか味が濃いものかもしれませんね」
「この先かな」
「みたいですね、もう少しですよ」
そのまま13番街に入っていく。
ダリエルさんの家はすぐそこだ。
「ここかな」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨一枚をいただきます」
「これでお願いします」
「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文の豚キムチ丼になります」
「確かに」
「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただきますか」
豚キムチ丼、名前の通り豚キムチ炒めを乗せた丼だ。
キムチの辛味が白米に染みていてその美味しさを引き立てる。
豚肉もキムチの汁が一緒になる事でその美味しさを倍増させる。
そしてそんな豚肉とキムチは白米と一緒に食べると何よりも美味しい。
定食のおかずに塩気の強いものが多い理由は日本という国の食文化なのかもしれない。
豚キムチ丼もそんな辛味が白米と一緒になるからこその美味しさなのだ。
「うん、確かにこれは美味しいですね、ピリッとした辛さがいい」
「肉も美味しいですし、ライスと一緒に食べるとまた美味しいんですね」
「これはライスと一緒に食べる事を想定しているんでしょうか」
「豚肉とキムチという漬物の組み合わせは凄いですね」
「ライスに炒めた肉の油とキムチの汁が染みているからこその美味しさですか」
「この味は実に素晴らしいですね」
その頃のリーザ達は帰り際に休憩していた。
冷たい麦茶が染み渡る。
「ふぅ、美味しいね」
「麦茶は体に染みますね」
「不思議な飲み物だよね、体に染みるのがいいよ」
「暖かい日には最適ですね」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻ったよ」
「お帰り、はい、おしぼり」
「ありがとうございます」
「外は暖かくなっている感じデスかね」
「うん、すっかりね」
「なら制服を春服にして正解だったかな」
「ええ、気持ちいいぐらいです」
「では特に問題はなさそうデスね、何かあったら言ってクダサイ」
気候はすっかり春の暖かさになった。
異世界とはいえそうした気候の変化はあるもの。
暑すぎず寒すぎずな感じがこっちの世界らしい。




