小倉バタートースト
冬のフェアメニューも終わりが近づきつつある寒い季節。
そんな寒さも落ち着き始め、春の近づきを感じさせる。
春のフェアメニューもいろいろ考案してある様子ではある。
またその一方で密かな人気を集めているものもある。
「また来てしまった、朝にここに来るのはすっかり日課ですね」
「昼以降の時間に来てもいいですけど、朝に来るからこそ意味がある」
「あれが食べられるのは朝限定だからこそですね」
「さて、行きますか」
彼の名はアデライト、国で研究をしている研究者である。
先日友人に誘われモーニングを食べに来てからあるものにドハマリしたという。
「この扉のシステムは面白いですね、鈴もなりますし」
「中は暖かい、冬には助かります」
「いらっしゃいませ!何名様ですか!」
「一人です」
「かしこまりました、おタバコはお吸いになられますか」
「いえ、吸いませんね」
「かしこまりました、では禁煙席にご案内します」
「朝はスタッフも少ないのですよね」
そうして席に案内される。
説明は理解しているのでスムーズに進む。
簡単に説明を受けそのまま次へ。
タブレットの使い方も理解している様子。
「タブレットの使い方は分かりますね」
「はい、問題ありません」
「分かりました、では何かあればお呼びください」
「さて、先に水ですね」
そうして由菜は一旦下がり別の料理を運びに行く。
アデライトは先に水を取りに行く事に。
「ここは水は無料で好きなだけ飲めるというのは凄いですよね」
「あとは氷と手拭き、使い捨てというのは衛生的にもいいのかもしれません」
「さて、注文を決めてしまいますか」
「朝といえばモーニング、頼むものは言うまでもなくですね」
「これとこれとこれで確定と」
「このタブレットというのは興味深いものですよね」
そうしてアデライトはドリンクバーに飲み物を取りに行く。
朝は決まってコーヒーを飲む事にしている様子。
コーヒーにはミルクだけを入れて飲む無糖カフェオレがお気に入りの様子。
苦いながらもミルクの味がその苦味を和らげてくれる。
ついでにモーニングで使う簡単な調味料も一緒に持っていく。
好みの味付けに出来るのもまた嬉しいものだ。
「ふぅ、コーヒーというのは不思議な味ですね、本当に」
「苦いのに不思議な美味しさがある、それがいいんです」
「そしてミルクだけを入れて飲む事で苦味も緩和されますしね」
「パンを食べる際はコーヒーに限りますよ」
そうしていると小倉バタートーストのセットが運ばれてくる。
小倉餡を乗せたトーストと簡単なサラダなどがつくセットメニューだ。
「お待たせしました、小倉バタートーストセットになります」
「どうも」
「デザートが必要な時はお呼びください、それでは」
「さて、いただきますか」
小倉バタートースト、トーストにバターを塗りそこに小倉餡を乗せたものだ。
パンの塩気とバターと小倉餡の甘さが何よりもクセになる一品だ。
トーストに使う食パンの厚さは客が決められるのもまたポイントが高い。
四枚切りの分厚いパンから、八枚切りの薄いパンなど食パンも多様である。
それとは別に完全な四角形ではないタイプの食パンまで選べる。
好みの分厚さで食べる食パンは客の好みも分かるというもの。
アヌーク曰く一番人気は実は四枚切りの分厚いやつなのだとか。
食パン自体が珍しいというのもあるが、気軽に分厚いパンが食べられるのがいいのだと。
分厚い食パンはモーニングメニューのパンセットでも特に人気なのだと。
それはボリュームに対して値段が安めなのが大きいという事のようである。
「うん、やはりこの小倉バタートーストは最高の味だ」
「パンもまたこれだけ分厚いのが食べごたえがあって実にいい」
「この小倉餡というのは豆を甘く煮たものだというそうですし、それが美味しいんですよ」
「パンとバター、そこにこの小倉餡を乗せるのがここまで美味しいんですから」
「そしてセットのサラダ、ドレッシングはフレンチドレッシングが最高ですね」
「野菜も鮮度がよくて、ドレッシングとよく合う」
「そして最後はゆで卵、定番は塩らしいですが、私はマヨネーズ一択ですね」
「この卵の食感とマヨネーズの濃い味の組み合わせ、たまりません」
そうしているうちに小倉バタートーストセットを完食する。
続いてデザートを頼む事に。
「お待たせしました、デザートですか」
「ええ、お願いします」
「ではお皿はお下げしますね、少々お待ちください」
それから少ししてごま団子が運ばれてくる。
あんこを包んだ団子に胡麻をまぶして揚げた中華風デザートである。
「お待たせしました、ごま団子になります」
「どうも」
「こちらは伝票です、会計の際にお持ちください、それでは」
「さて、いただきますか」
ごま団子、あんこを包んだ団子に胡麻をまぶして揚げた中華風デザートだ。
外はカリッと、中はモチモチで団子の中には熱々のあんこが包まれている。
「うん、この団子はやはり美味しいですね」
「外はごまでカリカリ、そしてもっちりした団子の中には熱々のあんこ」
「シンプルながらこの完成された味はたまりません」
そうしているうちにごま団子を完食する。
飲み物を飲み干し会計を済ませる事に。
「支払いをお願いします」
「はい、小倉バタートーストセットとごま団子とドリンクバーですね」
「全部で銅貨一枚と青銅貨四枚になります」
「これでお願いします」
「ちょうどいただきます」
「満足していただけていマスか」
「これはシェフの方」
「その様子だとモーニングがお気に入りなのデスね」
「はい、小倉バタートーストはもはや人生ですよ」
「相当に気に入ったのデスね」
「ええ、豆を甘く煮るというのが最初は何よりの衝撃でしたし」
「ですがお気に入りになったのデスね」
「朝しか食べられないというのが惜しいですが、それでも食べたくなりますから」
「モーニングは昼間とはまた違うメニューになっていマスからね」
「朝にしか食べられないというより、朝に食べるような簡単な食事という事ですか」
「ハイ、定番メニューの一部も出していマスが、モーニングは基本独立デスよ」
「朝だからこそ出せるという事なのでしょうか」
「朝は設備の稼働などが入るので、定番メニューは出しにくいのデスよ」
「なるほど、そういう理由もあるんですか」
「なのでモーニングが終わる頃には定番メニューの調理に移れるようにデスね」
「とはいえ朝からやってくれていて、安く食べられるのは助かりますよ」
「ハイ、人は少ないとはいえそれでも結構来てくれマスからね」
「仕事前に食べに来る人なんかもいるみたいですしね」
「モーニングに来てくれるのも嬉しい限りデスから」
「おっと、そろそろ行かないと、ではまた来ます」
「モーニングも結構人気あるよね」
「時間に余裕のある人には嬉しいのデスよね」
こうしてアデライトは満足して帰っていった。
モーニングでしか食べられない料理はいくつかある。
分厚い食パンは人気なのだ。




