味噌煮込みハンバーグ
冬のフェアメニューも順調に売れている冬の寒い日。
寒いという事もあり、暖房の効いている店にそれ目当てで来る客もいる。
とはいえある程度はきちんと注文してくれるので、そこは助かっている様子。
安価なメニューも置いているからこそ出来る話ではある。
「今回の届け先ってどこかな」
「12番街のルイさんの家ですね」
「12番街か、ならそんなに遠くないかな」
「はい、行きましょうか」
今回の届け先は12番街。
そこまで遠くはないので速やかに届ける事に。
「それで今回の注文って何かな」
「味噌煮込みハンバーグセットですね」
「味噌煮込みハンバーグって、味噌味のハンバーグって事かな」
「そうなりますね」
「味噌煮込みか、味噌って東の国の調味料の事だよね」
「ええ、そうらしいです」
「味噌って美味しいんだけど、なんか不思議な味だよね」
「味噌は汁物に使うと美味しくなる事が多いとは聞いてますね」
「確かにお店でもスープバーに味噌汁が置いてたりするもんね」
「味噌はそのままだと塩分が高すぎるので、汁物にするのがいいみたいな話ですよね」
「スープとかソースとかにするといい感じになるのかな」
「味噌は味も濃いめなので薄めて使うとちょうどいいのかもしれませんね」
「そういえば東の国の調味料だと、この国でも買えるのかな」
「東の国の人が経営してるお店に行けば買えると思いますよ、私も見た事があるので」
「なるほど、高くなかったらそういうのを買ってみてもいいかも」
「高くはないですけど、確か味噌や醤油が銅貨一枚程度で買えたはずですよ」
「銅貨一枚程度か、それなら買えないっていう事もないかな」
「味噌や醤油を使いこなせるようになれば料理のレパートリーも広がりますし」
「でもアヌークさんが言うには出汁っていうのが必要って言ってたけど」
「それも東の国の人が経営してるお店で買えると思います、粉末出汁があるはずなので」
「粉末出汁なんてものもあるのか、財布と相談して見てみようかな」
「アレッシオさん、すっかり料理好きになりましたね」
「こっちかな」
「ここの先をもう一つ進んだ先ですよ」
アレッシオもすっかり料理に目覚めている様子ではある。
とはいえ店のものと家庭のキッチンではいろいろ違うのでそこは難しい。
ちなみにこの国でも東の国の人が経営する店に行けば味噌や醤油が買えるという。
味噌や醤油は大体銅貨一枚程度らしく、輸入品だから少し割高らしい。
さらに粉末出汁なんかも置いているらしく、東の国の技術が窺える。
調味料や出汁関係は手に入らないという事もないらしい。
「でも味噌や醤油が買えるなんて驚いたな」
「東の国の人が経営するお店だと、4番街と18番街にあったはずですよ」
「4番街と18番街なんだ、二つお店があるって事?」
「二つというか、その区画に複数店舗がある感じですね」
「なるほど、そういう感じなんだ」
「味噌や醤油もそこのお店に行けば買えると思いますよ」
「そういえば味噌や醤油の他にも東の国の食べ物って買えたりするのかな」
「そうですね、他にもあったと思いますよ、ただ早めに使い切らないと駄目ですけど」
「早く使わないと腐るとかがあるのか」
「ただ料理に使うとなると調味料や出汁をメインに買うのがいいかと」
「そうだね、味噌や醤油を使った料理だと難易度の高いものはそんなになさそうだし」
「あとはみりんとかお酢なんかも買っておくといいかもしれませんね」
「和食とはいかないけど、あれば何かと便利ではあるかもね」
「ええ、東の国の食文化はこっちとは異なるという事らしいですし」
「この先かな」
「そこの先みたいですね」
そのまま12番街に入っていく。
ルイさんの家はすぐそこだ。
「ここかな」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨四枚をいただきます」
「これでお願いします」
「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文の味噌煮込みハンバーグセットになります」
「確かに」
「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただきますか」
味噌煮込みハンバーグ、文字通りの味噌で煮込んだ煮込みハンバーグだ。
ハンバーグは柔らかくそれでありながら味はしっかりとしている。
肉は牛と豚がアヌークオリジナルの黄金比で配合されている。
味噌のソースは味噌の味がしっかりとしているため肉にもよく合う。
そしてそこにいくつかのきのこと野菜が一緒に煮込まれている。
お好みで温泉卵を落とすのもまた美味しい食べ方だ。
「うん、これは美味しいですね、肉が柔らかくて簡単に切れる」
「ソースも味噌という東の国の調味料がまたよく合っていますね」
「ライスと一緒に食べるとまたそれも美味しいですね」
「この温泉卵というのを落とすと味がまたマイルドになるんですね」
「こっちの野菜もまた美味しい、ドレッシングというのも野菜とよく合いますね」
「ハンバーグ、侮れないものです」
その頃のアレッシオ達は帰り際に休憩していた。
温かい麦茶が体に染みる。
「ふぅ、美味しいね」
「麦茶というのは不思議な飲み物だと思いますしね」
「この水筒も保温機能がある魔法瓶っていうんだっけ」
「不思議な技術ですよね」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻りました」
「お帰り、はい、温かいおしぼり」
「ありがとうございます」
「外は寒いデスか?」
「寒いけど、防寒着があるので結構暖かいですよ」
「なら問題はなさそうかな」
「はい、まあ寒さは強い時も弱い時もありますから」
「今は防寒着があれば今は足りそうデスね」
そうして冬の寒い日でも宅配には行かねばならない。
それでも防寒着のおかげでかなり暖かい。
寒さというのはそれだけ強敵という事でもある。




