カルボナーラピザ
夏のフェアメニューが終わるまでもう少し。
秋のフェアメニューは主に秋の味覚を用意する予定。
その一方で汁物メニュー以外は大体は宅配やテイクアウトにも対応させる。
汁物は電子レンジが必要になる事も多く、こっちの世界では厳しいのだ。
「今回の届け先ってどこなの」
「18番街のシャーリーさんの家ですね」
「18番街だね、少し離れてるけど急ぐ距離ではないかな」
「そうですね、とりあえず待たせない程度には行きましょう」
今回の届け先は18番街。
少し離れているので待たせない程度に行く事に。
「そういえば今回の注文って何」
「カルボナーラピザですね」
「カルボナーラピザか、ピザって割となんでもありなんだね」
「ピザは基本的に好きに作れるって言っていましたからね」
「定番の味があるとしても好きに作れるっていいよね」
「ピザ窯が理想ですが、ピザ窯でなくても一応焼けるらしいですね」
「へぇ、その辺は気になるかも」
「まあピザも具材が多くなるとその分高くなりますから」
「そこは料理屋は避けて通れないよね」
「特に肉関係は量が増えると特にコストが上がるとか」
「それはよく聞くけど、肉ってそんなにお金がかかるものなんだね」
「肉を多く使っている料理の値段を見ればそれは分かりますよね」
「でもピザもそんな感じなんだね」
「シンプルなピザは安く提供出来ますし、その辺は客の好みでもありますから」
「ピザは客側が好きにアレンジ出来るからトッピングが増えればそれだけ高くなるか」
「持ち帰りや宅配でも結構出るメニューですしね、ピザは」
「やっぱり持ち帰りがしやすいっていうのは強いんだなぁ」
「でもピザみたいな料理ってあまり聞きませんよね」
「アヌークが言うには外国発祥の料理らしいけど」
「ピザとピッツァの違いはよく分かりませんけどね」
「ボリュームがあってパン生地のやつがピザなんじゃないの?」
「確かにピッツァは生地がサクサクしててシンプルなものが多いですね」
「ピザはパン生地、ピッツァはクリスピー生地なのかな」
「あとピザは具が多め、ピッツァはシンプルなものが多いですか」
「よく分からん」
「似てるけど別の料理って事なんでしょうか」
「こっちだね、行くよ」
「早めに届けてしまいますか」
ピザとピッツァの違いは意外と分からないものである。
ただピザはアメリカの料理、ピッツァはイタリアの料理というイメージはある。
なので国が違えば料理に対する認識も変わってくるのだろう。
ピザとピッツァは似ているようで実は違うという事だ。
そしてさらに日本のピザはそれとは違う進化をした。
料理の進化もまたお国柄が出るという事なのかもしれない。
「ピザに限らず外国でその料理が独自に発展するってあるのかな」
「それはあるんじゃないですか」
「そう考えると原型は残しつつ独自に進化していくって感じなのかも」
「実際外国で食べる本場の味とその国で食べる料理は同じでも違うとは聞きましたね」
「そういうところが料理の進化なんだね」
「アヌークさんが言うには進化というより魔改造らしいですよ」
「魔改造って」
「その国の人達の口に合うように改造されたものは多いと聞きますから」
「それが魔改造って事か、なるほど」
「なのでそのままでは美味しくなかったとかもあるのかもしれませんね」
「本場の味そのままだと口に合わないから好みの味に変える、魔改造ってそういう事か」
「それでも原型は残しておくのが魔改造なんだと思いますよ」
「本場の味を原型を残しつつ好みに作り変える、魔改造ってそんな感じなのかな」
「別物になったらそれは魔改造ではないとも言ってましたね」
「料理って想像よりずっと奥が深い…」
「魔改造も立派な料理の発展の形なんでしょうね」
「こっちだね、行こう」
「もうすぐそこですね」
そのまま18番街に入っていく。
シャーリーさんの家はすぐそこだ。
「ここだね」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨二枚をいただきます」
「これで」
「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文のカルボナーラピザになります」
「ありがとうございます」
「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いします」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただきますか」
カルボナーラピザ、カルボナーラソースを使ったピザだ。
クリームソースにチーズやパンチェッタを使った濃厚な味がする。
カルボナーラソースの濃厚な味が美味しさを引き立てる。
ベーコンではなくパンチェッタを使う辺りがアヌークなりのこだわりでもある。
また半熟卵も乗っていてそれを割ると卵の美味しさがピザに広がる。
ただでさえ濃厚なクリームソースに半熟卵が加わる背徳的な味なのだ。
「うん、これは美味しいですね、チーズの味が凄く濃厚です」
「それに卵が乗っていて、それを割るとまた卵の味が加わっていいですね」
「濃厚なチーズの味と卵の黄身の味が美味しさの理由なんでしょうか」
「生地ももっちりとしたパンで食べごたえがありますし」
「カルボナーラというのはチーズクリームの料理という事ですか」
「この背徳感のある味は実に最高ですね」
その頃のリーザ達は帰り際に休憩していた。
冷たい麦茶が体に染みる。
「はぁ、癒されるねぇ」
「麦茶は美味しいですよね」
「不思議な味だとは思うけどね」
「でもそれが美味しいんですよね」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻ったよ」
「お帰り、はい、冷たいおしぼり」
「ありがとうございます」
「外はまだ暑いデスか」
「暑いには暑いけど、結構落ち着いてきた感じかな」
「なら制服とははまだこのままかな、もう少し涼しくなってからだね」
「秋本番になったぐらいでいいかと」
「分かりマシタ、ではそっちで調整しマスね」
夏も落ち着きを見せ始めている程度の暑さ。
とはいえまだ夏は続くので、衣替えなどはまだ先だ。
秋のフェアメニューに切り替わるのはもう少し先である。




