よだれ鶏
夏のフェアメニューも終わりが近づいてきた。
秋のフェアメニューを何にしようかと今は計画中だ。
切り替えのタイミングは9月の頭からという事になる。
秋のフェアメニューは主に秋の味覚や料理を揃える予定だ。
「また来ちまったな、あいつには感謝しないといけないな」
「美味い酒と料理が食えるっていうのはやっぱいいもんだ」
「ここにはそのどっちもあるんだからな」
「さて、行くか」
彼の名はライオネル、国の剣闘士でありエンターテイナーである。
同じ仕事の仲間に教えてもらってここを知ったという。
「この扉は面白いもんだよな」
「中は涼しいな、この涼しさがいいんだ」
「いらっしゃいませ!何名様ですか!」
「一人だぜ」
「かしこまりました、おタバコはお吸いになられますか」
「いや、吸わないぜ」
「かしこまりました、では禁煙席にご案内します」
「若い奴が働いてるのを見るのはいいもんだな」
そうして席に案内される。
説明は理解しているのでスムーズに進む。
簡単に説明を受けそのまま次へ。
タブレットの使い方も理解している様子。
「タブレットの使い方は分かりますね」
「ああ、問題ないぜ」
「分かりました、では何かあればお呼びください」
「さて、水を取りに行くか」
そうしてエトは一旦下がり別の料理を運びに行く
ライオネルは先に水を取りに行く事に。
「ここは水も美味いからいいよな」
「あとは氷と手拭き、にしてもこんだけ用意出来るのはすげぇもんだ」
「さて、注文を決めちまうか」
「酒と酒の肴、何にするかな」
「ふむ、こいつとこいつ、あとはこいつで確定っと」
「このタブレットっていうのは便利だな」
それから少ししてレモンサワーが運ばれくる。
酒も多様に揃えているので選択の幅は広い。
「お待たせしました、レモンサワーになります」
「おう、サンキュ」
「おつまみはもう少々お待ちください、それでは」
「さて、飲むか」
こっちの世界ではレモンサワーのような酒は珍しいという。
基本的にはエールやワインがよく飲まれているようだ。
「はぁ、このレモンサワーってのは美味いな」
「普段飲んでるのはエールなんだが、こういう酒は知らなかったぜ」
「このレモンのスッキリした味がいいんだよな」
「はぁ、やっぱこの飲みやすさはいいぜ」
そうしているとよだれ鶏と肉味噌きゅうりが運ばれてくる。
どっちも酒の肴として美味しいものだ。
「お待たせしました、よだれ鶏と肉味噌きゅうりになります」
「おう、サンキュ」
「こちらは伝票です、会計の際にお持ちください、それでは」
「さて、食うか」
よだれ鶏、思い出すだけでよだれが出てくるという事から名付けられた料理。
味付けは基本的には麻辣で味付けする事が多い。
棒々鶏と似ているが、調理法が違うので別の料理という事になっている。
酒の肴としてもいいが、そのままおかずなどにしても美味しい。
麻辣の辛味などからご飯が進む料理でもある。
ちなみによだれ鶏は冷菜である、茹でた鶏肉を冷やして食べるものだ。
辛いものが好きな人や酒好きには人気の酒の肴でもある。
その麻辣の刺激的な味が酒や白米を進ませるのだろう。
まさに想像するだけでよだれが出てくるという言葉に相応しい。
四川料理のお約束であるかのように辛味が効いているのがよだれ鶏だ。
「うん、こいつは美味いな、この辛い味が酒とよく合う」
「こっちの肉味噌きゅうりもいいな、辛い味の肉味噌っていいもんだ」
「はぁ、酒の肴にはこういうもんが一番よく合うな」
「このよだれ鶏ってのは名前はともかく味は最高だぜ」
「肉味噌きゅうりも美味いし、酒も酒の肴も困らないってのはいいもんだ」
「はぁ、酒と一緒に食うこのよだれ鶏は本当に酒が進むってもんだ」
「でもこの赤い色になるまで味付けされてるってのはすげぇな」
「辛いからこそ美味いっていうのはあるんだろうけど」
そうしているうちによだれ鶏と肉味噌きゅうりを完食する。
酒も飲み干し会計を済ませる事に。
「支払いを頼む」
「はい、レモンサワーとよだれ鶏と肉味噌きゅうりですね」
「全部で銅貨一枚と青銅貨四枚になります」
「こいつで頼む」
「銀貨一枚いただきます、お釣りの青銅貨一枚になります」
「サンキュ」
「満足していただけているようデスね」
「お、シェフの、ああ、満足してるぜ」
「お酒は美味しいデスか」
「ああ、ここの酒はどれも美味いぜ、知らない酒も飲めるしな」
「それは何よりデス」
「サワーってやつが気に入っててな、どれも飲みやすくていいもんだ」
「なるほど、その辺は人によって違うものデスしね」
「酒の肴もどれも美味いしな、美味い酒と肴で仕事終わりにやるのがいいのさ」
「見た感じからして剣闘士の方デスか」
「ああ、剣闘は立派な娯楽だからな、殺生しない戦いっていうのもいいもんだろ」
「プロレスみたいなものデスかね」
「要するにショーだよな、観客を楽しませるのもまた剣闘士ってもんだ」
「なるほど、そこはプロの精神という事デスか」
「まあな、伊達に長年剣闘士をやっちゃいないさ」
「職種は違えどもプロというのは尊敬してしまいマスね」
「おっと、んじゃ行くぜ、また飲みに来るからよ」
「剣闘士か」
「娯楽としての剣闘、プロレスのようなものがあるのデスね」
そうしてライオネルは満足そうに帰っていった。
多様な酒があるからこそ好みも多様になる。
酒の肴は比較的安価なのも酒飲みには嬉しい限りだ。




