ガリバタチキン炒め
夏のフェアメニューも順調に売れている様子の異世界キッチン。
その一方で夏になった事で宅配に出る際にも暑さ対策が求められる。
暑さはこっちの世界は幾分かはマシとは聞いている。
それでも暑いのでしっかりと準備は整える事に。
「今回の届け先ってどこかな」
「15番街のリズリーさんの家ですね」
「15番街か、ならそんなに遠くないね」
「では行くとしますか」
今回の届け先は15番街。
そこまで遠くないので時間はかからない距離だ。
「それで今回の注文って何かな」
「ガリバタチキン炒めのライスセットですね」
「それってスタミナ料理みたいなやつかな」
「ですね、にんにくとバターですから」
「それにしても鶏肉も今じゃすっかり広まったよね」
「ええ、少し昔までは鶏肉は骨が多くて食べにくい肉というイメージでしたし」
「それが今では安くて美味しい肉になってるもんね」
「鶏肉が便利な肉っていうのは加工する方法が広まった結果でもありますしね」
「でも鶏肉は煮ても焼いても炒めても美味しいのが強いよね」
「それもあって卵を卸してた人達が鶏肉も売り始めましたからね」
「ただ鶏肉も若い鶏じゃないと美味しくないんだっけ」
「それは牛なんかも同じでは?」
「若い家畜の肉の方が美味しいっていうのは牛も豚も鶏も変わらないのか」
「だからこそ食肉用の豚や牛が育てられているわけですから」
「それもそうだね、肉にするための飼育と卵や牛乳のための飼育とかあるのか」
「卵を主力にしていた人達が鶏肉用の鶏も育て始めて上手くいってるようですし」
「そういうのは上手くいくものなんだね」
「元々の知識があるからなのかは分かりませんけどね」
「でも鶏肉が本格的に広まるのはまだこれからかな」
「調理法がもっと増えていけばですかね」
「だね、シチューなんかは出来るだろうけど、カレーは出来ないだろうし」
「スパイスは高価ですが、香草ならそれなりに安く手に入りますからね」
「あとは油なんかもそれなりに手に入るしね」
「調理法に関しては各自の家庭が作っていったりすればですかね」
「そういうのが共有されていくとかな」
「そうなると思います」
「こっちかな、行こう」
「焦らなくても間に合いますよ」
鶏肉も割と広まりつつあるというのはこの街で暮らすからこそ感じる。
こっちの世界でも鶏肉は安くて美味しい肉のようでもある。
鶏肉を扱う精肉店なども少しずつ増えているとアレッシオは言う。
元々は骨がたくさんあって食べにくい肉が鶏肉だった。
そこを解消出来た事により鶏肉も広まったのだろう。
また骨からスープが取れる事も大きいのだろう。
「でも鶏肉は使い道も多くて安く手に入るのは大きいよね」
「それに加えて骨からスープが取れるとかもありますしね」
「骨にも使い道があるっていうのは大きいよね」
「ええ、鶏のスープは美味しいですからね」
「ラーメンとかは鶏のスープで作ってるって言ってたよね」
「鶏ガラスープでしたか」
「うん、ああいうスープを使っていろいろ作れるみたいだし」
「その辺はまた勉強ですね」
「でも鶏っていろいろ使い道があったんだね」
「肉から骨まで使えるというのは便利なものですよ」
「料理のレパートリーも増えそうだしね」
「ただ揚げ物とかはまだ難しいですね」
「油の扱いが難しいもんね」
「油の質もありますしね」
「こっちかな」
「もう少しですね」
そのまま15番街に入っていく。
リズリーさんの家はすぐそこだ。
「ここかな」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「はい、えっと、先に銅貨一枚と青銅貨二枚になります」
「これでお願いします」
「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文のガリバタチキン炒めのライスセットになります」
「どうも」
「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いします」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただきますか」
ガリバタチキン炒め、つまりガーリックバターチキンだ。
柔らかい鶏肉にガーリックバターの味がよく染みている。
夏には頼もしいスタミナ系の料理でもある。
ライスが進む味付けはそれこそ夏には助かる。
濃いめの味付けがライスをどんどん進ませてくれる。
こうした味はライスあってこそでもある。
「ふむ、これは美味しいですね、ライスと合わせると凄く進む」
「味付けからしてライスと合わせる事を前提とした感じですか」
「確かにこの味ならライスをモリモリと食べられますね」
「それに夏にはこういう濃いめの味が欲しくなりますし」
「鶏肉を炒めて濃いめの味付けにする、ガーリックというのは素晴らしいです」
「バターとガーリックの相性はまさに止まらない味ですね」
その頃のアレッシオ達は帰り際に休憩していた。
夏は冷たい麦茶の他に塩タブレットも持たせる事にした。
「麦茶は本当に暑い日にはいいものだね」
「塩分も摂るようにと渡された塩タブレットも意外と美味しいですし」
「暑さ対策は水分と塩分って言ってたもんね」
「塩タブレットはそうした塩の塊なんでしょうね」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻りました」
「お帰り、はい、冷たいおしぼり」
「ありがとうございます」
「外の暑さはどんな感じデスか」
「暑くはありますけど、まだなんとかなりますね」
「とはいえ体を冷やせるものも持たせるべきかな」
「もう少し暑くなってからなら場合によっては」
「なら気温とも相談デスね」
暑さの本番はまだこれからだ。
とはいえアヌークはこっちの世界の暑さは想像よりは暑くないと考える。
それはただ日本が暑すぎるだけである。




