ネギ塩チキン
少しずつ暑くなってきたため店も冷房が稼働し始めた。
そして夏のフェアメニューに切り替わり汁物以外は宅配にも対応している。
そんなフェアメニューにも冷たい料理が多く並ぶ。
宅配に出る際も暑さ対策はきちんとしてから出る事になる。
「今回の届け先ってどこかな」
「13番街のジニーさんの家ですね」
「13番街だね、ならそんな遠くないかな」
「では行きますよ」
今回の届け先は13番街。
そこまで遠くないとはいえ早くに届けるのも宅配の仕事だ。
「それで今回の注文ってなんだっけ」
「ネギ塩チキンのライスセットですね」
「ネギってあの長い野菜だよね」
「そうですね、主に麺類に入れたりする事が多いやつです」
「でもネギって美味しいよね、主役にはなりにくいけど脇役としては凄く強いというか」
「野菜ってそういうのが結構ありますよね」
「ネギとか玉ねぎは主役にはなりにくいけど脇役としては凄い優等生っていうか」
「主役になる料理も当然ありますけどね」
「そうなんだけどね、でもアヌークも野菜は主役と脇役がはっきり分かれるって言ってるし」
「ただネギというのは輪切りにして焼いて食べたりしても美味しいらしいですよ」
「へぇ、そんなものなんだ」
「ええ、ネギはそのまま食べると辛いらしいですから」
「ネギはあたしの故郷の島でも育ててなかったなぁ」
「お店で使ってる野菜は似てるものなら知ってるんですけどね」
「あと鶏肉も元々は不人気な肉の代名詞だったよね」
「鶏肉は骨ばかりでとにかく食べにくい肉と言われてましたよね」
「アヌークが入れ知恵したんだろうね」
「骨からスープが出るというのも大きいですからね」
「あたしの故郷の島でもニワトリって言うとメインは卵っていうのが共通認識だったし」
「鶏肉の扱いなんてそんなものでしたよね」
「その辺はプロの料理人の入れ知恵だよねぇ」
「とはいえ鶏肉の需要は確実に今は出来上がっていますからね」
「鶏肉の美味しい食べ方も広まってるしね」
「卵と肉の両方で安くて美味しい食材ですよ、今では」
「シンプルに焼いて食べるのが人気みたいだけどね」
「今回のネギ塩チキンも焼いた鶏肉ですしね」
「こっちかな」
「急がずともと間に合いますよ」
鶏肉が流行ったのは完全にアヌークが店に来た客に教えたからである。
それにより鶏肉の料理などが今では上流階級から平民にまで広まっている。
またそれにより肉用に育てるニワトリも養鶏関係の人達で研究されている。
元々は卵がメインだったのがこっちの世界のニワトリだ。
今はまだ若鶏のようなものはないが、工夫次第では美味しい鶏肉にもなる。
鶏肉は焼いて食べると美味しいというのが今の主流だ。
「でもお店で出されてるような鶏肉料理はまだ無理そうかな」
「フライドチキンは美味しいですけど、スパイスが貴重ですからね」
「そういえばお店の常連でカレーを頼む人は家庭の味がカレーって言ってたよね」
「恐らくスパイスの原産国ではスパイス料理が普通に食べられているのかと」
「なるほど、だとしたら外国に輸出する時はそれだけ高級品に化けるって事か」
「カレーの人は故郷ではカレーが食べられる程度にスパイスは普通なんでしょうね」
「まさに原産地の特権かなぁ」
「アヌークさんも言ってましたが、外国では高級品のものが産地では安いとかあるそうで」
「ふーん、なんか不思議な話だね」
「恐らく保存の問題ではないかと思います、なので輸出する際には高くなるとか」
「スパイスが安くならないとフライドチキンは無理そうかな」
「ただスパイスではなくとも香草は割と安いので、香草焼きみたいなのが人気料理ですね」
「こっちかな」
「もう少しですね」
そのまま13番街に入っていく。
ジニーさんの家はすぐそこだ。
「ここかな」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「えっと、先に銅貨一枚と青銅貨一枚をいただきます」
「これで」
「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文のネギ塩チキンのライスセットになります」
「どうも」
「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いします」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただきますか」
ネギ塩チキン、グリルで焼いた塩味のチキンだ。
皮までパリパリに焼き上げられているのが美味しさの理由だ。
塩味のソースが焼き上げられた鶏肉との相性もとてもいい。
そこに細かく切ったネギを乗せているのが美味しさの理由でもある。
ネギは塩味のソースとよく合うらしい。
そんな塩味のグリルチキンとネギの組み合わせによる鶏肉料理だ。
「うん、これは美味しいですね、塩の味が実にいい」
「ライスとの相性もいいですし、ソースがライスによく合います」
「鶏肉もしっかりと焼き上げられてて美味しいですし」
「鶏肉がここ近年流行り始めたのはこのお店が理由なんでしょうか」
「でも鶏肉の美味しさに目覚めたのは確かにありますね」
「鶏肉は焼くと美味しい、それが今の定番ですね」
その頃のリーザ達は帰り際に休憩していた。
冷たい麦茶が美味しい季節だ。
「ふぅ」
「麦茶が体に染みますね」
「だよねぇ、暑い日には最高というか」
「麦茶の美味しさはなんなんでしょうね」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻ったよ」
「お帰り、はい、おしぼり」
「ありがとうございます」
「こっちもすっかり夏のようデスね」
「そうだね、暑さ本番はまだこれからだけど」
「夏服はもう少ししてからでいいかな」
「ですね、まだ夏服は早いかと」
「では頃合いは見ておきマスね」
夏にはなったが夏本番はこれから。
夏本番になったら宅配の際には塩タブレットも持たせる事にする。
夏は食材の扱いも気をつけねばならない。




