焼きカレー
夏のフェアが来週から始まるためメニューの切り替えが始まる。
その一方で宅配やテイクアウトでも汁物以外のフェアメニューは対応する。
汁物は電子レンジが必要になるので宅配やテイクアウトには対応出来ない。
そういうところは異世界の事情でもある。
「今回の届け先ってどこかな」
「14番街のネメシアさんの家ですね」
「14番外だね、なら早く届けちゃおうか」
「焦らなくても間に合いますよ」
今回の届け先は14番街。
そこまで遠くはないのでゆるりと届ける事に。
「それで今回の注文ってなんなの」
「焼きカレーですね」
「焼きカレーってドリアみたいに焼いたカレーの事かな」
「そんな感じですね」
「カレーって焼いたり煮たりスープにしたりとかなんでも出来るなぁ」
「リーザさん、カレーが好きですよね」
「好きだね、まあ食べやすいからなのかも」
「香辛料がまだ貴重だからこそではありますよね」
「胡椒で戦争が起こるってエトが言ってたけど、本当なのかな」
「歴史を振り返ると本当に起こっているみたいですよ」
「でもカレーっていいよね、大体何を入れても美味しくなるし」
「そうですね、肉でも野菜でも魚でも美味しくなりますから」
「あたしとしてもカレーの可能性って凄いと思うし」
「リーザさんは豚肉のカレーが好きなんでしたっけ」
「うん、豚肉が一番食べ慣れてる味だからかな」
「故郷の離島だと畜産なんかもやってるんでしたか」
「そうそう、だから肉は牛も豚も食べてたよ」
「そういうところは一次産業をやっている人という感じはしますよね」
「うん、野菜も肉も乳製品も全部島で作ってたから」
「離島なのに産業は結構あるんですね」
「まあ離島だから規模はそこまで大きくないけどね」
「リーザさん自身が農業とかに詳しいのが分かった気がします」
「ただ年頃なのか、そういうのもつまんないって感じるようにはなってたけど」
「反抗期ですか」
「それは否定しないけどね」
「リーザさんがなんだかんだでそういう知識に詳しいのは納得ですけど」
「でも流石に香辛料は作ってなかったかな、作ろうと思えば作れるのかな」
「どうなんでしょうね、香辛料も植物ですから知識があれば出来るのかも」
「カレーは自作出来そうにないかな」
「香辛料が手に入りませんからね」
「こっちかな」
「ここから真っ直ぐですね」
カレーはまかない飯としても人気のメニューではある。
ただこっちの世界では香辛料は言うまでもなくお高いものである。
そんな香辛料を当たり前に使える店はまずこっちにはない。
世界の違いと言えばそれまでではある。
カレー人気は必然だったのかもしれないとは思う。
ただこちらの世界にも辛い料理がないというわけではないようで。
「そういえば胡椒とかは高いけど唐辛子とかは普通に売られてるよね」
「ええ、私達がイメージする辛い味というと唐辛子ですからね」
「辛い料理はあるけど、胡椒とかが恐ろしく高いんだっけ」
「辛い料理を作るとなれば唐辛子は必須ですね」
「香辛料は高いものってイメージだけど、唐辛子は不思議と安いよね」
「その辺は栽培などの技術が確立されているからなのでしょうね」
「カレーは唐辛子じゃ作れないしなぁ」
「そもそも唐辛子はカレーより他の料理のイメージも強いですし」
「うーん、辛い食べ物でもそういう違いはあるのか」
「唐辛子はそこまで貴重でもないのでしょうね」
「カレーに必要なスパイスはどこでも高いよね」
「砂漠の方にある地方だとカレーに必要なスパイスも一般的らしいとは聞きましたけど」
「マジ?砂漠の地域ってそういうものなんだ」
「香辛料も砂漠の外に行くと一気に高騰するので何かとあるんだと思いますよ」
「事情とかがあるって事なのかな」
「かもしれませんね」
「この先だね」
「早く届けてしまいますか」
そのまま14番街に入っていく。
ネメシアさんの家はすぐそこだ。
「ここかな」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「えっと、まず先に銅貨一枚と青銅貨一枚をいただきます」
「これでお願いします」
「ちょうどいただきます、ではこちらが焼きカレーになります」
「ありがとうございます」
「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただきますか」
焼きカレー、カレーをオーブンで焼いたもの。
要するにカレードリアのような感じの料理だ。
ただあくまでも焼きカレーなので、チーズは使用していない。
それに加えカレーはひき肉を使ったキーマカレーのようなものでもある。
なのでひき肉カレーをドリアのように焼き上げている。
辛さもいい感じにマイルドで食べやすさもある。
「ふむ、これは美味しいですね、辛すぎずという感じです」
「ライスも美味しいですし、カレーは細かい肉のカレーなんですね」
「でもカレーというのは香辛料を使っている料理でしたか」
「香辛料を使った料理を提供出来るなんて凄いですね、それもこの値段で」
「それにしてもカレーというのはスプーンが止まりませんね」
「この味はクセになりそうです」
その頃のリーザ達は帰り際に休憩していた。
冷たい麦茶が美味しくなる季節だ。
「ふぅ、美味しいね」
「麦茶というのは体に染み渡りますね」
「だね、癒されるって感じ」
「この美味しさは独特な感じがありますね」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻ったよ」
「お帰り、はい、おしぼり」
「どうも」
「外はもう暑さは始まってるようデスね」
「うん、でもまだ暑いとまではいかないかな」
「夏になると食品も痛みやすくなるからね」
「その辺は気をつけないとですよね」
「食中毒は怖いデスから、そこも対策しないとデスね」
夏に怖いものは言うまでもなく食中毒だ。
その辺もしっかりと対策をしなくてはいけない。
夏は食べ物も傷みやすいからこそそこは気をつけねばならない。




