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クロックムッシュ

こっちの世界もすっかり春の陽気になった様子。

宅配も防寒着はもう使わなくても寒さはそこまで感じない。

とはいえまだたまに寒い日があるので、まだ防寒着は残してある。

それでも寒さはかなり落ち着いてきたようだ。


「今回の届け先ってどこかしら」


「10番街のラナーさんの家ですね」


「ならそんな時間はかからないわね、早く行くわよ」


「急がなくても間に合いますよ」


今回の届け先は10番街。


そこまで遠くないので急がずに行く事に。


「それで今回の注文ってなんなの」


「クロックムッシュですね」


「クロックムッシュってあれよね?温かいパンのサンドイッチよね」


「はい、それにチーズやハムなんかを挟んであるものですね」


「温かいサンドイッチなんて面白いものよね」


「溶けたチーズがまた美味しいんですよね、適度な塩気もあって」


「でもハムとチーズだけでもないのよね」


「ええ、温かくして食べられるものなら割となんでも美味しいですね」


「温かくして食べられるものね、でもチーズの新しい食べ方をいろいろ知れるのはいいわ」


「エトさん、チーズが好きですよね」


「好きね、特にパンに乗せて熱で溶けたチーズは最高よ」


「でもお店だと他にもいろいろな食べ方がありますよね」


「グラタンとかラザニアとかも好きなんだけど、オーブンが問題なのよね」


「オーブンの代わりに窯とかでは駄目なんですか?」


「窯というかオーブンみたいにじっくりと熱で焼く設備がないのよ」


「確かオーブンは赤外線で焼いてるって言ってましたね」


「隣国ならオーブンもあるのかしら」


「そもそも赤外線がまずよく分からないですし」


「オーブンの代わりに窯全体に熱を巡らせられる窯とかじゃ駄目なのかしら」


「でも火で熱するのではなく熱を当てて焼くみたいな感じでしたよ」


「うーん、オーブンがあれば城でもチーズの料理が食べられるのに」


「チーズを溶かすだけなら火でもいいんですけどね」


「グラタンとかラザニアみたいなのを作るならオーブンが必須よねぇ」


「お店のまかないで我慢するしかなさそうですね」


「こっちよね、行くわよ」


「急がなくても大丈夫ですよ」


エトも味覚は割と子供っぽいところがある。

なのでチーズは好きだし、クロックムッシュのようなものも好きだ。


城ではオーブンはないので、グラタンやラザニアは作れない。

チーズを溶かすだけなら出来るが、ラザニアなどを焼くのが出来ない。


店のまかないではチーズやホワイトソースの料理を好む。

オーブンはまだこっちの世界にはないようである。


「赤外線ってなんなのかしらね」


「そういう技術の事では?」


「オーブンを見る限り、火じゃなくてまた別の方法で熱を発してるみたいだし」


「お店の設備はずっと進んだ技術みたいですし」


「そうなのよねぇ、どこから手に入れた技術なのかしら」


「それは分からないですけど」


「それで焼いてるって事なのよね、オーブンって」


「まあそうなるでしょうけど」


「オーブンって難しいのね」


「でもそれがあるからグラタンとかも焼けるわけですしね」


「まあそうなんだけどね」


「オーブンって不思議な技術ですよね」


「こっちね、行くわよ」


「急がなくても間に合いますよ」


そのまま10番街に入っていく。

ラナーさんの家はすぐそこだ。


「ここみたいね」


「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」


「はい!」


「お待たせしました」


「はい、では先に代金として銅貨一枚いただきます」


「これでお願い」


「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文のクロックムッシュになります」


「ありがとう」


「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いします」


「分かったわ」


「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」


「さて、いただきましょうか」


クロックムッシュ、ハムとチーズをトーストでサンドした軽食だ。

場合によっては卵を挟む事もあったりする。


とはいえ基本的には軽食に分類される料理でもある。

なので本格的な食事というわけでもない。


それでも軽く食べたい人には店で食べる際にも人気のメニューだ。

軽く食べたい時には最適の料理なのだから。


「ん、これは美味しいわね、肉とチーズを挟んで焼いてあるのね」


「焼いたパンのサクサク感もまたいいわ」


「チーズは溶けてパンにその味がしっかりと染みてるし」


「焼いたチーズをパンに挟むなんて考えたわね」


「肉は塩の味がしっかりしてるからいい感じだわ」


「この塩気が美味しさの理由なのかしらね」


その頃のエト達は帰り際に休憩していた。

冷たい麦茶が体に染みる。


「はぁ、美味しいわね」


「麦茶って美味しいですね」


「不思議な飲み物だとは感じるけどね」


「体に染み渡りますね」


飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。

帰ったらまた仕事である。


「ただいま戻ったわよ」


「お帰り、はい、おしぼり」


「ありがとうございます」


「外はもう寒くなさそうデスね」


「でもまだ突然寒い日が来るから」


「ならもう少し防寒着を残しておこうか」


「ええ、そうしてください」


「突然寒くなるのはまだありそうデスね」


春になっても寒い日は突然にやってくる。

完全に暖かくなる日はまだ先だ。


それでも春にはなっているのだから。

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