チーズドリア
こっちの世界もすっかり元の日常が戻ってきた様子。
新年を祝うのはアヌーク達の世界と同じだが、一年の日数が少し異なる。
とはいえ異世界と繋いでいる道具のおかげなのか、時期は不思議と合うようだ。
スタッフも通常業務に戻り変わらずに働いている。
「今回の届け先ってどこかな」
「今回の届け先は20番街のエレンさんの家ですね」
「20番街か、少し遠いけどまあなんとかなるよね」
「ええ、ただ少し急ぎますよ」
今回の届け先は20番街。
店からは少し遠いが、そこは自転車の出番である。
「そういえば今回の注文ってなんだっけ」
「チーズドリアですね」
「チーズドリアってミートドリアとは違うものなの?」
「ミートドリアにチーズを倍にしたものがチーズドリアみたいですね」
「なるほど、つまりチーズの量をシンプルに増やしたものって事か」
「ええ、そういう元々のメニューに食材を増やしたものは元のものより少し高いですが」
「そこは使ってる食材が多いから仕方ないんだよね」
「ええ、大盛りを並盛りと同じ値段で提供したら採算が取れませんからね」
「そこにいくら増えるかは食材のコストによるのかな」
「みたいです、ただ店では基本的には青銅貨一枚を基準にしてるっぽいですよ」
「大盛りで青銅貨一枚の金額加算か」
「特盛になると青銅貨二枚ですね」
「でも大盛りを食べられる人って尊敬するよ、僕は大盛りを食べられるほどでもないし」
「アレッシオさん、今が成長期なんだと思うんですが」
「元々食が細いっていうわけでもないんだよね、ただ大盛りは多いというか」
「そういえばまかないでも大盛りの半分ぐらいを食べてますよね」
「うん、店ではやってないけど、まかないって事もあるし中盛りにしてもらってる」
「つまり大盛りの増量分の半分の増量って事でいいですか?」
「それぐらいだね、ちょうど食べ切れる量だと」
「アレッシオさんも成長期ですし、もう少し食べてもいいと思いますが」
「それより急ごう」
「そうですね、前は見てくださいね」
使っている具が多いものは相応に値段も高くなる。
ラーメンと同じ値段でチャーシュー麺を提供すれば当然大赤字だ。
アヌーク曰く肉類を使う料理は特にコストパフォーマンスが高いという。
なので肉を多く使っている料理は相応に高い値段になるとか。
牛丼やハンバーグはなんとかの値段なのだともいう。
ただアヌークの基準にしている値段は仕入れる食材の値段と合わせて見ているとも。
「でもチーズドリアか、お店の料理のチーズって凄く美味しいよね」
「ええ、普段食べているチーズと比べると全然違いますよ」
「そういうのはチーズに使ってる牛乳から違うのかな」
「モノによってはヤギのチーズとかもあるらしいですよ」
「ヤギのチーズか、そういうのも含めてチーズに使ってるミルクが違うのかもね」
「そもそもチーズの種類は普通に何百とあるとかアヌークさんは言ってましたね」
「そんなにあるの?それは凄いね」
「チーズって作り方とか味によって名前がたくさんあるみたいに言っていましたし」
「チーズの世界って深いなぁ」
「中にはカビの生えたチーズもあるとか、もちろん食べても平気なものですね」
「本当に多様なチーズがあるんだね」
「それも種類によって合う料理やお酒があるとかもありますしね」
「チーズって一言で言えない世界だなぁ」
「料理とはそういうものなのでしょうね」
「こっちかな、急ごう」
「すぐそこですからね」
そのまま20番街に入っていく。
エレンさんの家はすぐそこだ。
「ここかな」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「はい、では先に代金として銅貨一枚いただきます」
「これで」
「確かに、ではこちらがご注文のチーズドリアになります」
「はい、確かに」
「容器は行政区分に従って可燃ごみでお願いしますね」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただこうかしら」
チーズドリア、ミートドリアにチーズを倍使った料理。
元々はミートドリアなので、普通にサフランライスだしミートソースも使っている。
シンプルにミートドリアに使うチーズの量を倍にしたものである。
なのでチーズが好きな人にはよく頼まれる料理でもある。
チーズを倍にするみたいな料理は他にもありそれも含めての人気だ。
チーズが好きな人にとっては大人気な料理なのである。
「ん、これは美味しいわね、チーズが凄いたっぷりだわ」
「それにライスもチーズが絡んで凄く美味しいわね」
「このライスは黄色いけど、何かで味付けしたライスという事なのかしら」
「チーズの他にこれは肉のソースかしら」
「ソースとチーズ、ライスのバランスが絶妙だわ」
「この値段でこんな美味しいものが食べられるなんて凄いわね」
その頃のアレッシオ達は帰り際に休憩していた。
冬の麦茶はホットになるのだ。
「はぁ、麦茶は暖まるね」
「冷たいのも美味しいですけど、温かくしても美味しいものですよね」
「体の中から温まるって感じだね」
「温かい飲み物はありがたい限りですね」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻りました」
「お帰り、はい、温かいおしぼり」
「ありがとうございます」
「外は思っているよりは寒くないみたいデスね」
「ただ防寒着はあった方がいい程度には冷えますね」
「なら防寒着はそのままでもよさそうかな」
「寒すぎるというわけでもないしね」
「なら特に問題はなさそうデスね、あとは天気と相談デス」
そうして冬でも寒すぎない程度の寒さなのが幸いではある。
とはいえこっちの世界でも寒波が来て突然寒くなる事はある。
あくまでも気候との要相談という話なのだ。




