表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/402

ダブルチーズピザ

異世界キッチンが開店してしばらく。

客足は着実に増え始め、食事時には結構入るようになった。

とはいえ食事時以外にもやってくる客はいる。

噂は徐々に広がっているようで。


「この辺りだよね、噂の料理屋っていうのは」


「聞いた話だと凄く美味しい料理が食べられるそうだけど」


「どんな料理が食べられるのやら」


「あ、ここみたいだ、それじゃ入ってみようか」


彼の名はケント、この街の中流貴族だ。


噂を聞いてやってきたようで、ちなみに彼はチーズマニアでもある。


「二重扉にベル、一応衛生には気を使ってるのか」


「中は涼しいな、音楽も流れてるしキカイもたくさんある」


「見た感じ清潔っぽいけど…」


「いらっしゃいませ!何名様ですか!」


「あ、えっと、一人だけど」


「かしこまりました、おタバコはお吸いになられますか」


「パイプかな?吸わないけど」


「かしこまりました、それでは禁煙席にご案内いたします」


「ハキハキしたいい子だな」


そうして席に案内される。

そこで説明を一通り受ける。


特にこれといった問題はなさそうですんなり話は進む。

そんなわけで注文を考える事に。


「そういえば水は自分で取りに行くんだっけ、取りに行かなきゃ」


「ここにグラスを押し当てて…これだけで飲み水が出るのか、凄いな」


「あと氷だね、氷もこんなに用意出来るなんて凄いや」


「さて、注文を決めなきゃ」


「えっと、チーズを使ったものがいいな、あるのはコメに麺、野菜に肉に魚に甘味まで…」


「ん?これは…よし、これにしよう、これしかないな」


「確かこのベルで呼ぶんだよね」


そうしてベルを鳴らして由菜を呼ぶ。

少しして奥から由菜が出てくる。


「お待たせしました!ご注文はお決まりですか!」


「ああ、えっと、これを頼む、あと甘味でこれもお願い出来るかな、あとセットドリンクも」


「ダブルチーズピザとレアチーズケーキ、ドリンクバーですね」


「ケーキは食後でよろしいですか?」


「ああ、それでいいよ」


「かしこまりました、それではオーダーを復唱させていただきます」


「ダブルチーズピザとレアチーズケーキを食後、ドリンクバーです!」


「オーダー!ダブルチーズピザとレアチーズケーキを食後!ドリンクバーです!」


「喜んで!」


「それでは少々お待ちください」


「シェフは奥にいるのか、まあ当然だけど」


「それより飲み物を取りに行こうかな」


そんなわけで飲み物を取りに行く。

ドリンクバーを物色して飲み物を選ぶ。


そうして選んだのは紅茶だった。

ちなみにアイスティーでミルクのみである。


「これは美味しいな…いつも飲んでいるものよりずっと美味しい」


「ミルクを入れるのはいつもなんだけど、それでも美味しい」


「このお茶はどこのものなんだろう、仕入先とか知りたいね」


「でも冷たい紅茶なんてはじめてだ、美味しいんだけどね」


そうしているうちに料理が運ばれてくる。

丁寧に焼き上げられた熱々のダブルチーズピザである。


チーズのいい香りとトマトソースの香り。

他の具は一切乗っていないシンプルなチーズのみのピザである。


「お待たせしました!ダブルチーズピザです!」


「これが…実に美味しそうだね」


「こちらを使ってカットしてお召し上がりくださいね」


「これでカットするんだ、分かった」


「デザートが必要な時はお呼びください、それでは」


「チーズをこんなに使ってあるなんて…これは僕にはたまらないな、ではいただこう」


ちなみにここのピザのチーズは主に水牛の乳を使っている。

要するに一般的なものとは違う乳を使って作っているチーズだ。


アヌークが開店に当たりメニューの参考にと様々な店の料理を食べ歩いた結果である。

普通のチーズよりまろやかでなおかつコクがとてもある。


そんな水牛の乳のチーズを普通のピザの倍使っているのだ。

しかもシンプルにチーズとトマトソースのみで焼き上げている。


純粋にチーズを味わうために考えたピザでありチーズの暴力である。

普通のマルゲリータにも同じチーズを使っているが、これはそれの倍使っている。


値段は当然マルゲリータより少し高くなるが、それに見合うチーズの味を味わえる。

チーズの物量による暴力をこれでもかと言わんばかりに差し向けるピザである。


「これは凄く美味しいな…シンプルなんだけど、凄くチーズの味がする」


「周囲の知人にチーズマニアとか言われるけど、それでも満足する味だ」


「このチーズは普通のチーズじゃないのかな?味が違う…」


「でもこれはまさにチーズの暴力と言わんばかりの味だね」


「こんなにチーズを乗せて焼いているなんて恐ろしい…」


「これを普通のお店で出したら銀貨で五枚ぐらい取られるよ」


「それなのに値段を見て驚いたな…あぁ、チーズは幸せだなぁ」


「こんな美味しいチーズ料理ははじめてだ、止まらない!」


「やっぱりチーズは最高だね」


そうしているうちにあっという間にダブルチーズピザを完食する。

そのあまりの美味しさにチーズ好きとしての心も完全に満たされたようだ。


そのあとはデザートを持ってきてもらう事に。

ベルを鳴らして由菜を呼ぶ。


「お待たせしました!デザートですか」


「うん、頼めるかな」


「かしこまりました、ではお皿はお下げしますね」


「うん、そうしてくれ」


「それでは少々お待ちください」


そうして由菜は奥に引っ込んでいく。

少ししてレアチーズケーキを持って由菜が出てくる。


「お待たせしました!レアチーズケーキです!」


「ありがとう」


「こちらは伝票です、会計の時にお持ちください」


「分かった、すまないね」


「それではごゆっくり」


「さて、いただこうか」


ここのレアチーズケーキはとてもひんやりした冷たいデザートだ。

冬でも美味しいそのレアチーズケーキは信頼する店との提携した一品である。


「うん、美味しいな、これもチーズなんだね」


「でもこんな生に近いチーズなんてはじめて食べるな」


「それにチーズを甘味に使うという発想はなかった」


「実に美味しいね、チーズの甘味…帰ったら家政婦に相談してみようかな」


「あぁ、チーズは至福の味だ…」


そんな事を言っている間にあっという間にレアチーズケーキを完食する。

飲み物を飲み干し、会計を済ませる事に。


「すまない、支払いを頼めるかな」


「かしこまりました、ダブルチーズピザとレアチーズケーキとドリンクバーですね」


「全部で銅貨9枚になります」


「ではこれで頼むよ」


「銀貨一枚いただきます、お釣りの銅貨一枚になります」


「確かに受け取ったよ」


「満足いただけマシタか」


「あなたがシェフですか」


「ハイ、シェフ兼オーナーのアヌークといいマス」


「とても美味しかったですよ、それにしてもあんなにチーズを使って赤字なのでは?」


「そうでもありマセン、たぶん物価の違いがあると思いマス」


「なるほど、そういう事か」


「ハイ、産地から直接仕入れているので安くなるのデスヨ」


「直送とは考えましたね」


「仕入先などは全部信頼出来る相手とやっていマス」


「そういえばあのチーズは普通のチーズとは違うように感じましたけど」


「あれは水牛の乳を使ったチーズデス、普通のチーズよりまろやかなのデスヨ」


「水牛ですか、普通の牛ではなく」


「ハイ、ちなみに山羊の乳を使ったチーズなどもおいていマス」


「へぇ、それは興味深いですね」


「チーズについてはいろいろ食べて選びマシタ」


「それは凄い」


「料理人デスカラ」


「さて、それでは私はそろそろ行きます、また来ますね」


「お気をつけて!」


「チーズが好きみたいデスネ」


「みたいだね」


こうしてチーズマニアを唸らせたそのダブルチーズピザ。

この世界ではチーズは高級品らしい。


やはりチーズは美味しいのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ