冷製パンプキンスープ
フェアメニューも秋のフェアメニューに切り替わった異世界キッチン。
そんな中開店前にイクスラから少し相談があると言われる。
国の会談などで出す料理の参考にしているとのことで、今回もそれだ。
珍しい料理を出すというのは来客にもいい反応がもらえるらしい。
「おはようございます」
「ハイ、おはようございマス」
「ねえ、イクスラが相談があるらしいからまた聞いてやってくれる」
「相談デスか?また何か料理のレシピでも聞きたいとかデスか?」
どうやら何か相談があるとのこと。
とりあえずその相談を受ける事にした。
「おはよう」
「おはようございマス、美紗子サン」
「何か相談でもしてたかな」
「ええ、実は今度国王陛下が会談を行うのですが、そこで出すものを」
「お父様も何か喜ばれる料理を出したいとは言っていたから」
「なるほど、何かその人が気に入りそうな料理か」
「何が好きとかそういう情報はあるのデスか?」
「えーっと、確か豊かな食文化の国で野菜とかが好きって言ってたわね」
「それとスープにはうるさい人だと言っていましたね」
「スープか、それで野菜だとミネストローネとかそういうのかな?」
「でも会談でそんなガッツリ食べたりはしないと思うわよ」
「ふむ、なら冷製スープとかはどうデスか?」
「冷製スープ、冷たいスープですか?」
「確かに冷たいスープってここではあるけど、食事で出たりはしないわよね」
「こっちだと冷製スープは珍しいのか」
「ミネストローネなどのスープはどちらかと言えば食事になりマスから」
「ならそれでいいんじゃない?」
提案に出たのは冷製スープ。
会談の席などでガッツリ食べるようなものは向かないだろう。
それでありながらスープにうるさそうな来客を驚かせられそうなスープ。
こっちの世界では冷製スープは存在しない。
そもそも飲み物を除けば基本的に料理は温かいものである。
生や冷たくして食べるのは生野菜ぐらいなものなのだという。
「冷製スープだと何がありますか?」
「基本的なものだとパンプキンスープやポタージュスープだよね?」
「ハイ、野菜を使ったものならパンプキンスープなんかはいいかと思いマス」
「パンプキンスープってかぼちゃのスープよね」
「作るのはそこまで難しくもないデスからね」
「ならそれでお願いします、かぼちゃや生乳は手に入りますから」
「分かりマシタ、とりあえずサッと作るので覚えていってクダサイ」
そうして開店前の厨房でサッと冷製パンプキンスープを作る。
イクスラの成分分析機能でそれを解析しレシピを覚えればそれで終わりだ。
冷たい料理の珍しいこの世界で冷たい料理が受け入れられるかは分からない。
とはいえエトなんかは冷たい料理も割と気に入っていたりする。
「ふむ、確かに覚えました」
「でも冷たい料理って普通に美味しいわよね」
「冷たい方が美味しい料理というのもありマスからね」
「冷製スパゲティとか気に入ってたよね」
「冷製パンプキンスープは特に問題なく作れそうですね」
「ただ客からしたら冷めたスープを出すのか!って怒られそうよね」
「これは冷たくして食べるものですって説明するところからだよね」
「冷えた料理は早くに食べてしまわないといけないのがネックですからね」
「ハイ、保存するのにも冷たくするのは大切デスがその場合は温めないといけマセン」
「そう考えると保存するのに冷やす必要があって、でも早くに食べないと駄目なのね」
「料理でも食材でも日持ちする期限ってある程度あるからね」
「どんな食べ物でもさっさと食べてしまえっていう事なのよね」
「そういう事デス、冷やすというのは日持ちする期限を伸ばすだけに過ぎないのデスよ」
「結局を言うと夏には腐りやすいけど冬だって長く放置すれば普通に腐るんだよ」
冷たい料理は基本的に珍しい世界である。
だからこそ冷たい料理を食べる国もあるが、文化的には珍しい国でもある。
そんな来客に冷製スープを出そうというのは大胆だと思う。
とはいえその美味しさが伝わるようにするのもまた仕事だ。
「おはよう」
「おはようございます」
「リーザサン、アレッシオサン、おはようございマス」
「とりあえずアドバイス感謝します」
「驚かれるとは思うからきちんと説明しなきゃね」
「それじゃ着替えてきてね」
「はーい、今日も稼ぐよ」
「リーザさんは逞しいですね、僕もしっかり働かないと」
そうして国の会談の際に冷製パンプキンスープを出す事に。
驚かれるのは当然だろうが、同時に珍しい文化にも触れる事になる。
冷たい料理は珍しい文化なのだから。




