ハンバーグカレー
夏のフェアメニューも順調に売れている異世界キッチン。
その一方で宅配やテイクアウトも多く出ている。
店で食べてから持ち帰る人も結構いるとアヌークは言う。
家族へのお土産などとしての持ち帰りもあるのだろう。
「今回の届け先ってどこかな」
「16番街のジェシーさんの家ですね」
「16番街だね」
「はい、早めに終わらせてしまいますか」
今回の届け先は16番街。
自転車を使うようになり届けるのも快適になった。
「それで今回の注文ってなんなの」
「ハンバーグカレーですね」
「ハンバーグカレーか、うちのチビ達が好きそうなメニューだね」
「アレッシオさんの家って大家族なんでしたっけ」
「うん、僕が次男で下にも妹や弟もたくさんいるよ」
「子供はハンバーグカレーみたいな料理は好きそうですよね」
「レシピを覚えてたまに作るようになってから喜ばれてるよ」
「いいお兄さんですね、アレッシオさんは」
「お店は閉店時間より早くに上がるから家で作る時間とかもあるしね」
「由菜さんと美紗子さん以外のスタッフは夜の7時に上がりますからね」
「そこは治安とかそういうのも考慮してくれてるもんね」
「そうですね、なので家族で一緒の時間とかもありますし」
「ソアレって一人暮らしなんだっけ?」
「そうですよ、だから自炊で使えるレシピは助かってます」
「そういうところは助かるよね、料理を覚えるって楽しいし」
「アレッシオさんも家族の人気者になったみたいですしね」
「家でカレーを作る時なんかも少し辛くてもチビ達は美味しそうに食べるしね」
「そういうのは嬉しいですよね」
「子供は辛いものは苦手かなとも思ったけど、想像より美味しいって言ってくれるしね」
「母親の負担なんかも減らしてあげられますから、親孝行なのでは?」
「確かにそれはするようになったかも」
「ハンバーグカレーなんかも子供に人気っていうのが分かりますね」
「この先が16番街かな、早く行こうか」
「ですね、急ぎましょう」
家で料理などの家事も手伝うようになったアレッシオ。
その関係でカレーやハンバーグなどは下の子達の人気メニューらしい。
店で出すメニューでもこっちで作るにはそこまで問題はないとか。
なので店の味とはいかなくとも家で作る事は出来る。
そんなぶきっちょな家庭料理も今ではすっかり子供のお気に入りだ。
世界が変わってもカレーやハンバーグなどは子供には人気なのだ。
「そういえばハンバーグって割といろんなソースで食べられるよね」
「お店でもそうしたものを出していますからね」
「おろしポン酢とかデミグラスソースとかチャップでも美味しいし」
「そういうのは子供に食べさせる料理としても好きそうな味ですからね」
「作るのは割と大変だからうちだとケチャップが多いかな」
「でもケチャップは子供には人気なのはお店で働いていると分かりますよね」
「美味しいと感じられるのは素晴らしい事なのかもね」
「繊細すぎる味覚は不幸しか呼ばないと言ってましたからね」
「この先かな?」
「そのようです、行きますよ」
そのまま16番街に入っていく。
ジェシーさんの家はすぐそこだ。
「ここだね」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「えっと、先に代金として銅貨一枚と青銅貨二枚いただきます」
「これで」
「ちょうどいただきます、こちらがご注文のハンバーグカレーになります」
「ありがとう」
「容器は行政区分に従った上で可燃ごみでお願いします」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただこうかな」
ハンバーグカレー、文字通りカレーソースをかけたハンバーグだ。
そこにライスがついているのでカレーライスにハンバーグがつくという感じである。
ハンバーグはアヌーク自慢のビーフハンバーグである。
大人にも子供にも美味しく食べて欲しいと考えて作ったもの。
アヌーク曰くハンバーグは牛肉の方が美味しいとのこと。
美味しいを追求するからこそこだわりがあるのだろう。
「ん、こいつは美味しいね、ライスと一緒に食べるのが美味しいって事か」
「ハンバーグも肉が柔らかくてカレーとよく合うし、これはいい」
「ライスについていた漬物も美味しいのはそういう味付けなのかな」
「ライスとカレーとハンバーグ、全てがベストマッチという事か」
「しっかり食べたい時にはこういうのもいいものだね」
「んー、これはまた食べたくなる味だ、また頼もう」
その頃のアレッシオ達は帰り際に休憩していた。
夏に冷たい麦茶は美味しいものだ。
「麦茶が美味しいね」
「この魔法瓶という水筒も気になりますけど」
「確かに不思議な水筒だよね、冷めないしぬるくもならないし」
「どういう仕組みなのやら、分からないものです」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻りました」
「お帰り、はい、冷たいおしぼり」
「ありがとうございます」
「自転車も問題なく乗りこなせているみたいデスね」
「はい、もうすっかり慣れました」
「それでも転倒にだけは気をつけてね」
「はい、なるべく広いところを走るようにはします」
「事故だけは気をつけないとデスね」
自転車に慣れるのはすぐだった。
とはいえ事故にだけは気をつけるように言われる。
そうしたケアもオーナーの務めである。




