テリヤキチキンピザ
夏のフェアメニューも順調に売れている異世界キッチン。
その一方で宅配やテイクアウトを頼む客も多くいる。
家族がいる人などは家で店の味が食べられるのは大きいのだろう。
必ずしも店で食べなくていいのはメリットも多いのだ。
「今回の届け先ってどこかしら」
「19番街のエレンさんの家ですね」
「19番街ね、自転車があればすぐだわ」
「ですね、早く終わらせてしまいましょう」
今回の届け先は19番街。
少し遠いが自転車を使えばそこまで遠くでもない。
「そういえば今回の注文って何かしら」
「テリヤキチキンピザですね」
「テリヤキチキンピザ、いいじゃない、姫は好きよ」
「エトさんって割と味覚は子供ですよね」
「うるさいわよ、好き嫌いぐらいあるわよ」
「まあ美味しいものは体に悪いものだってアヌークさんも言っていましたから」
「そんなものなのね」
「アヌークさんが言うにはどんなものでも毒なのであって摂りすぎなければいいだけとか」
「つまり水でも塩でも毒だけど、たくさん体に入れなければいいのね」
「みたいです、水も飲みすぎれば死に至るそうですから」
「なんでも毒っていうのは人が生きていく上では大切な事よね」
「そういうエトさんはテリヤキチキンもピザも好きですよね」
「好きね、甘くて柔らかい鶏肉もチーズたっぷりのピザも凄く美味しいもの」
「太りそうですね」
「これでも体型の維持にはいろいろやってるのよ」
「そういえば結構ハイカロリーなものを食べてるのに体型は変わりませんね」
「当然でしょ、これでも体の事には気を使ってるのよ」
「王族というのも大変なんですね」
「美味しいものを食べるにはお腹も空かせなきゃいけないもの」
「意外と強欲なんですね」
「誰が強欲よ」
「でも好きなものを食べられるというのは素晴らしい事ですよ」
「当然よ、美味しいものを食べられるから健康なんだもの」
「持論ですか、それ」
「それよりほら、行くわよ」
「あ、はい」
エトも王族だからなのか健康には割と気を使っている様子。
だからなのかもしれないが普通にハイカロリーなものをガツガツ食べたりする。
テリヤキチキンももピザも好きなのは味覚は子供だからなのか。
実際エトは野菜が苦手だとイクスラがアヌークに漏らしていた様子。
食べられないわけではないが好きではないとのこと。
王族とはいえまだそういったところは子供なのだろう。
「そういえばピザって何を乗せてもいいものなの」
「基本的にはいいみたいですけど、本場だとそこまでたくさんは乗せないみたいですね」
「ふーん、そんなものなのね、ピザって」
「具が多くなるとその分値段も上がるわけですからね」
「だとしたら本場だとピザってそこまで高くないものなの?」
「それは国によるそうです、具の多いピザを作る国もあればシンプルな国もありますし」
「そこは国の事情みたいな感じなのかしら」
「あとチーズの関税が高いとかもあるそうですよ、輸入してる国の場合は」
「事情は国によって複雑、ピザもそんなお国事情なのね」
「この先が19番街みたいですね、早く届けますよ」
そのまま19番街に入っていく。
エレンさんの家はすぐそこだ。
「ここみたいね」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はいはい!」
「お待たせ」
「えっと、まずは代金として銅貨一枚いただきます」
「これでお願い」
「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文のテリヤキチキンピザになります」
「ありがとね」
「容器は行政区分に従った上での可燃ごみでお願いします」
「分かった」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただこうかな」
テリヤキチキンピザ、文字通りのテリヤキチキンを乗せたピザである。
テリヤキチキンは細かく刻んだものを乗せているのでペロリと食べられる。
また日本のピザ屋のように高額という事もなく、ファミレス価格のピザである。
宅配の人件費なども宅配サービスの一つなので、安く提供出来る。
日本のピザ屋が高いのはあくまでも人件費や光熱費込みの値段だ。
冷凍のピザやファミレスのピザは普通に安いのだから、値段には理由があるのである。
「んー、こいつは美味しいね、チーズも美味しいけど肉も美味しい」
「甘い味付けの肉を細かくして乗せてあるのは食べやすさもあるしね」
「それにしても鶏肉もすっかり人気になっちまってるねぇ」
「このピザもそんな甘く味付けした鶏肉のピザなんだし」
「でもチーズと肉っていうのは合うものなんだねぇ」
「肉に絡んだチーズが美味しいってのはいいもんだ」
その頃のエト達は帰り際に休憩していた。
冷たい麦茶はこの季節には美味しいものだ。
「はぁ、癒やされるわねぇ」
「冷たい麦茶ってなんでこんなに美味しいんでしょうね」
「夏だからこその美味しさなのかしら、これ」
「冷たくて飲みやすいのは大きいですよね」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻ったわよ」
「お帰り、はい、冷たいおしぼり」
「ありがとうございます」
「自転車も乗りこなせているみたいで安心デスね」
「ええ、とてもいいものだからもう一つ欲しいぐらいよ」
「それは何よりだね」
「時間も凄く短縮出来ますからね」
「特に問題なさそうデスね、これからも頼みマスよ」
自転車は誰も問題なく乗りこなしている様子。
適応力の高さはアヌークと由菜も驚いているようだ。
届けるのに使う時間は確実に短くなっている。




