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ポークステーキ丼

こっちの世界もすっかり夏模様になってきた様子の異世界キッチン。

冷たい料理やデザート、ラガービールの売れ行きが好調とのこと。

またその一方で夏だからこそ熱いものを食べに来る客もいるようだ。

家から出たくない需要による宅配も同時に増えている。

「今回の届け先ってどこだっけ」

「１１番街のテリーさんの家ですね」

「１１番街か、ならそこまで遠くないね」

「はい、なるべく早く終わらせてしまいましょう」

今回の届け先は１１番街。

一応全域を範囲に指定しているものの、遠くからの注文は不思議と少ない様子。

「今回の注文ってなんだっけ」

「ポークステーキ丼ですね」

「ポークステーキ丼って豚肉のステーキだよね」

「はい、それの香味醤油ソースですね」

「そういえばソースは選べるんだっけ」

「ええ、好みで選べるのでそこはお客の好みが出ますしね」

「でも豚肉って安くて美味しいからいいよね、島でも人気だったし」

「リーザさんの故郷の島って家畜なんかも飼ってたんですよね」

「うん、まあ基本的には食肉用だから丸々太ってると美味しくなれって思ったな」

「豚肉だと食べ方も多くていいですしね」

「でもこういう丼ってソースの染みた白米が美味しいんだよね」

「リーザさん、分かっていますね」

「ポークステーキってお肉の美味しい食べ方だとあたしは思うよ、焼くのが一番だよ」

「リーザさんって料理とか出来ます？」

「大層なものは作れないけど、食べられるものは作れるかな」

「でも豪快に肉を焼いてそうなイメージはありますよね」

「あたしをなんだと思ってるの」

「肉が好きそうだなとは思ってます」

「まあいいけど、でもお店のまかないで食べるお肉は美味しいんだよね」

「それだけ質のいい肉というわけでもないとは聞いていますけど」

「それであの美味しさか、どんな国から来たんだろうね、アヌークは」

「料理が上手いのも美味しさを引き立ててますからね」

「…早く届けちゃおうか」

「そうですね、行きましょう」

豚肉はこっちの世界では人気が高い肉でもある。

その理由としては庶民などにも人気があるからなのだろう。

鶏肉は最近人気が高まっているが、元々は不人気な肉だった。

牛肉は主に貴族や王族といった富裕層に人気の肉だとエトは言っていた。

アレッシオなんかも豚肉料理を覚えて家でたまに作るようになったとか。

肉の事情にもなにかとあるのだという事のようだ。

「ポークステーキ丼のソースって選べるって言うけどどんな味があるの」

「今選べるのはジンジャーとガーリックと醤油ですね」

「肉にはやっぱりそういう味の方が合うのかな」

「焼いた肉の場合は濃い目の味の方が美味しいとは言ってましたよ」

「ふーん、ならあたしもそういうソースでも作ってみようかな」

「ソースは自作してるんですね」

「簡単なものではあるけどね」

「リーザさんは簡単に作って簡単に食べる感じなんですか？」

「うん、シャレた料理は作れないから」

「だから焼いた肉なんですね」

「それはもういいでしょ、それよりそろそろだから行くよ」

「そうですね、もうすぐそこです」

そのまま１１番街に入っていく。

テリーさんの家まではすぐそこだ。

「ここかな」

「すみませーん！キッチンハウスの宅配です！」

「はい！」

「お待たせしました」

「えっと、先に代金として銅貨一枚と青銅貨一枚をいただきます」

「これでお願いします」

「ちょうどいただきます、こちらがご注文の香味醤油のポークステーキ丼になります」

「ありがとうございます」

「容器は行政区分に従った上で可燃ごみでお願いしますね」

「分かりました」

「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」

「さて、いただきますか」

ポークステーキ丼、厚切りのポークステーキを乗せた丼ものだ。

ソースはジンジャーとガーリックと醤油から選ぶタイプ。

それに加えビネガーに漬け込んだ野菜も少し乗っている。

野菜はビネガー漬けというだけあって酸味が強い。

また丼ものにありがちなソースやタレが染み込んだ白米の美味しさ。

それもまた丼ものの楽しみの一つである。

「ん、これは美味しいですね、肉が厚くて食べごたえがある」

「こっちの野菜は酸っぱいですけど、それが美味しい」

「ソースの染みたライスもまた美味しいのがいいですね」

「今回は香味醤油という事ですけど、ソースもしっかりと美味しいのがいい」

「ソースの染みた肉とライスが食欲をそそりますからね」

「肉を焼いただけでこうも美味しいというのは凄いものです」

その頃のリーザ達は帰り際に休憩していた。

暑い季節に冷たい麦茶は美味しいのだ。

「ふぅ、美味しいね」

「この魔法瓶という水筒は素晴らしい限りですよ」

「麦茶は喉に染みるぅ～って感じがいいよね」

「夏には美味しい飲み物っていうのも納得ですね」

飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。

帰ったらまた仕事である。

「ただいまー」

「お帰り、はい、冷たいおしぼり」

「ありがとうございます」

「自転車も乗れているようデスね」

「うん、思ってるよりは楽に覚えられたかな」

「その様子ならとりあえずは安心かな」

「はい、おかげで宅配も楽になりましたね」

「夏は熱中症にならないように気をつけないとデスね」

自転車もきちんと乗りこなしている様子ではある。

夏場は日差し対策として帽子なども用意する事にしている。

夏は何かと準備などが必要になるものである。