菜の花のかた焼きそば
休みの日でも変わらずに営業する異世界キッチン。
こっちの世界では休みは基本的に営業時間は平日より短しものらしい。
それでも休みは家族連れの客が多くなるため書き入れ時らしい。
子供にも人気になりやすいメニューやキッズプレートなどもあるからこそだ。
「この辺りかな、噂の料理屋は」
「美味しい料理が安く食べられるらしいけど、本当なのかな」
「せっかくだから食べてから帰ろうと思うし、いい思い出にしよう」
「お、ここかな、では」
彼の名はエイル、この国に滞在している旅行者だ。
変える前に噂で聞いた店に行ってみようと思ったらしい。
「防犯はされているのか」
「中は客も多いね、それだけ入りやすいって事か」
「いらっしゃいませ!何名様ですか!」
「一人だよ」
「かしこまりました、おタバコはお吸いになられますか」
「いや、吸わないよ」
「かしこまりました、では禁煙席にご案内します」
「店員は若いんだな」
そうして席に案内される。
そこで一通りの説明を受ける。
説明は問題なく理解した様子。
続いてタブレットの説明に移る。
「タブレットの説明をしますね、まずは画面にタッチしてください」
「こうかな」
「続いて食べたい料理をタッチします」
「こうだね」
「そしてよろしければここをタッチ、そして確定をタッチします」
「こうだね」
「一旦リセットして…では説明は以上になります、それでは」
そうしてエトは一旦下がり別の料理を運びに行く。
エイルは一旦水を取りに行く事に。
「さて、水を取りに行かないと」
「ここにコップを当てて…美味しい水なんて大層だな」
「あとは氷と手拭き、それにしても飲み水がこんなに使えるなんて凄いな」
「さて、注文を決めてしまおう」
「いろいろあるな、何にするかな…」
「ふむ、これなんかよさそうだ、これとこれあとこれで確定っと」
「このタブレットっていうのは便利なものだね」
そうしてエイルはドリンクバーに飲み物を取りに行く事に。
一通り見て選んだのはカフェオレだった。
牛乳は早めに消費しないといけないもの。
そのためこの世界では好んで飲まれるものではないとの事のようだ。
「ん、これは美味しいな、コーヒーっていうやつだっけ」
「確か砂漠の地方で飲まれているものだよね」
「それに色からして牛の乳かな、いい感じに甘さと苦さが混ざってる」
「こういう飲み方もあるんだね、興味深い」
そうしていると菜の花のかた焼きそばが運ばれてくる。
揚げ麺に菜の花を使った白湯スープをかけたかた焼きそばだ。
「お待たせしました、菜の花のかた焼きそばになります」
「どうも」
「デザートが必要な時はお呼びください、それでは」
「さて、いただこうかな」
菜の花のかた焼きそば、かた焼きそばの餡の具に菜の花を使ってあるもの。
春のフェアメニューの一つで、菜の花が白湯スープといい相性で美味しくいただける。
麺はかた焼きそばの麺だが、中太麺程度の少し太めの麺を使っている。
それに野菜や肉の旨味が溶け出した白湯スープが染み込んでいて美味しいのだ。
野菜も結構豊富に使われていて、キャベツやもやしや人参が結構たくさん採れる。
かた焼きそばだけありスープが染みて麺が少しふやけたぐらいが食べ頃だ。
肉は豚肉を使っていてスープとの相性もいい。
また菜の花も結構使われていて、春の味としても楽しめる。
菜の花は具の野菜と一緒に使われているので、食べやすくもある。
こっちの人には少し不思議な味のようだが、評判は概ね好評である。
「ん、これは美味しいな、野菜がたくさん乗ってる」
「カリカリの麺に白いスープ、それが染み込んで麺が柔らかくなるのか」
「肉も入ってて具だくさんだ」
「菜の花っていうのはこの緑のこれかな、うん、これはこれで美味しい」
「スープが染みて食べ頃になった麺も適度にカリカリが残ってていいな」
「硬いカリカリ麺をスープで柔らかくして食べる、面白い発想だなぁ」
「確かにこれは面白い料理って感じがするね」
そうしているうちに菜の花のかた焼きそばを完食する。
続いてデザートを頼む事に。
「お待たせしました、デザートですか」
「うん、頼むよ」
「かしこまりました、では器はお下げしますね、少々お待ちください」
それから少ししてチョコソースのソフトクリームが運ばれてくる。
器に盛ったソフトクリームにチョコソースをかけたシンプルなものだ。
「お待たせしました、ソフトクリームのチョコソースになります」
「どうも」
「こちらは伝票です、会計の際にお持ちください、それでは」
「さて、いただこうかな」
ソフトクリームのチョコソース、ここはそういうソースをかけたデザートもある。
いちごソースや黒蜜、チョコソースなどの他にも何かと種類はある。
「ん、これは確かに美味しいな、これも牛の乳を使ったものなのかな」
「それにチョコレートをかけてあるってわけか」
「冷たくて甘くてそれが凄く美味しい、これはいいな」
そうしているうちにチョコソースソフトクリームを完食する。
飲み物を飲み干して会計を済ませる事に。
「支払いを頼みます」
「はい、菜の花のかた焼きそばとチョコソースソフトクリームとドリンクバーですね」
「全部で銀貨一枚と青銅貨一枚になります」
「これで」
「ちょうどいただきます」
「満足していただけマシタか」
「あなたが料理人かな」
「ハイ、シェフ兼オーナーのアヌークといいマス」
「とても美味しかったよ」
「それは何よりデス」
「そういえばここでは牛の乳を使った飲み物や甘いものもあるんだね」
「ハイ、デザートやコーヒーに紅茶など牛乳はいろいろ使いマスよ」
「牛の乳はそんなに使うんだね」
「こっちでは牛乳は飲んだりしないのデスか?」
「飲まないというわけではないけど、日持ちしないので一般的じゃないかな」
「なるほど、そういう理由デスか」
「うん、冷やしておけばいいというのは分かってるけどね」
「まあ確かに冷蔵庫に入れても一週間持たないデスからね」
「きちんと大丈夫なうちに全部飲むのを忘れるとかもあるから」
「牛乳を使ったお菓子とかがある国も知ってるけど」
「飲み切れないとかもあるから、デスね」
「まあもう少し理解が進めば普及しそうではあるけどね」
「事情はあるという事デスね」
「うん、さて、そろそろ行くね、またこの国に来たら食べに来るよ」
「牛乳の扱いは難しいんだね」
「技術的な問題も関係しているのでショウね」
そうしてエイルは満足して帰っていった。
牛乳の扱いはまだ課題があるという話。
飲み物の問題は何かとあるようだ。




