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味噌カツ丼

春のフェアメニューも順調に売れている異世界キッチン。

その一方で宅配とテイクアウトも順調に売れ行きが伸びている。

家で食べられるというのは家族連れなどにも嬉しいのだろう。

やはり店以外でも店の味が食べられるというのは需要があるのだ。

「今回の届け先ってどこかな」

「１５番街のトールさんの家ですね」

「１５番街か、ならそこまで遠くないかな」

「はい、さっさと届けてしまいますか」

今回の届け先は１５番街。

王都は広いのでやはり移動手段は欲しくなるのだ。

「そういえば今回の注文ってなんだっけ」

「味噌カツ丼ですね」

「味噌カツって確かアヌークさんの国の一地域の料理だっけ」

「確かナゴヤという地域の料理だそうですよ」

「味噌は割と美味しいと思うんだけど、カツに味噌って合うものなのかな」

「不味くはないですね、ただ少し味が濃いとは感じますが」

「なるほど、味噌汁なんかも家で作ろうとしたけど上手くいかないんだよね」

「味噌汁はダシというのが大切だそうなので、味噌をお湯に溶いても駄目だとか」

「それで家で作ろうとしても上手くいかないのか」

「アヌークさんの国だと粉末状のダシとかがあるそうですけど」

「そういうのがあるのは凄いなぁ」

「味噌自体はこっちでも東の国の人のお店に行けば手に入るんですけど」

「ダシが問題って事だもんね」

「そうなりますね、この国だと味噌は主に野菜につけて食べたりするのが一般的ですよ」

「そういえばお店でもきゅうりのスティックに味噌をつけて食べるよね」

「あれはモロキュウという食べ方みたいですよ」

「モロキュウか、きゅうりに限らず野菜に味噌って合うのかな」

「お店みたいにスティックにして食べるのは割と合うと思いますよ」

「それも試してみようかな」

「味噌、もう少し使い方を教わってみようかな」

「それがいいと思いますよ」

「だね、そうしよう」

「この先が１５番街ですね、行きましょう」

こっちの世界でも東の国の人が経営する店に行けば味噌や醤油は手に入る。

ただ店で食べる時に使うものに比べると味は少々違ってくるとか。

同じ味噌や醤油でも異世界ではその味も微妙に違うのだろう。

なお店でも味噌カツなどは濃い味が好きな人には人気らしい。

塩分が高い？和食ですでに塩分の塊なのでそれは野暮である。

５グラムの塩分などカップ麺をスープまで飲み干せば一発アウトである。

「でも味噌って肉とかも使えるものなんだね」

「味噌焼きみたいな調理法もありますし、味噌炒めとかもありますからね」

「なるほど、そういえばそうだね」

「味噌にも種類があって赤味噌白味噌合わせ味噌とあるそうですよ」

「赤と白と合わせ味噌、味が違うとかあるのかな」

「使う料理によってどの味噌が合うとかはあるみたいですね」

「料理によって合う味噌も微妙に違ってくるものなんだね」

「そこはアヌークさんに聞いた方が早いかもしれませんね」

「だね、そこはいろいろ聞いてみよう」

「この先みたいですね、行きましょう」

そのままトールさんの家の方へと向かう。

こちらの世界には電子レンジなどはないので、早くに食べてもらわねばならない。

「ここかな」

「すみませーん！キッチンハウスの宅配です！」

「はい！」

「お待たせしました」

「はい、先に銅貨一枚と青銅貨一枚いただきます」

「これで」

「はい、確かに、ではこちらがご注文の味噌カツ丼になります」

「はい、確かに」

「容器は行政区分に従った上で可燃ごみでお願いしますね」

「分かりました」

「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」

「さて、いただきますか」

味噌カツ丼、ソースカツ丼のような感じのカツ丼である。

白米にキャベツと味噌カツを乗せているので、味噌がライスにも染みていい味になる。

カツは普通のカツ丼と違い卵で閉じていないのも大きい。

それによりカツもサクサク感が残っていて味噌ダレの味もよく合うようになっている。

ご飯に敷いてあるキャベツは多すぎずなので白米の美味しさを邪魔しない感じだ。

味噌とご飯のベストマッチな感じに仕上げられたのが味噌カツ丼である。

「ん、これは美味しいですね、カツはサクッとしてて味噌もよく合っている」

「ライスにも味噌のソースが染みていていい感じに美味しいです」

「味噌というのは東の国の人のお店に行けば手に入るとは聞きますね」

「肉に味噌を使うというのは美味しくいただけるものなんですね」

「柔らかい肉に味噌の味が染み込んでいて美味しさが増している感じか」

「こういう食べ方もあるというのはお店の味だからこそだね」

その頃のアレッシオ達は帰り際に休憩していた。

飲み物を持たせてくれるのは店側のサービスである。

「ふぅ、この魔法瓶って不思議だよね」

「温かくても冷たくても保温が出来るというのは不思議なものですよね」

「麦茶も美味しいしね」

「冷たい麦茶は美味しいですからね」

飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。

帰ったらまた仕事である。

「ただいま戻りました」

「お帰り、はい、おしぼり」

「ありがとうございます」

「宅配も注文が増えていマスね、いい感じデス」

「順調に知られているという事だもんね」

「スタッフは今はソアレに任せるとしても、いつかは増やさないとね」

「その時はもっと忙しくなった時ですか」

「スタッフのついでに移動手段も欲しくなってきマスね、それも考えマス」

テイクアウトと宅配は確実に多く出るようになった。

家で家族と食べたりお土産に買って帰る客も多くなったという事でもある。

容器は基本可燃ごみで出せるように配慮しているのも強みだ。