サバの味噌煮定食
春のフェアも順調に売れている異世界キッチン。
その一方で宅配やテイクアウトも順調に売れ行きを伸ばしている。
家でもそれが食べられるというのは大きいのだろう。
家族のいる家庭などにも需要があるという事でもある。
「今回の届け先ってどこかしら」
「20番街のアスターさんの家ですね」
「20番街ね、少し遠いけど」
「仕方ないですよ、早く届けてしまいましょう」
今回の届け先は20番街。
店のある場所からは少し遠くになる。
「今回の注文ってなんなの」
「サバの味噌煮定食ですね、煮魚とライスとお新香のセットです」
「そういうのもあるのね、魚料理でしょ」
「はい、こういうのは単品でもセットでも頼めるそうですよ」
「ふーん、でも内陸のこの国で魚が食べられるなんて凄いわよね」
「そうですね、保存の技術も進化しているとはいえ魚を輸送するのはまだですし」
「魚の輸送ってデリケートな問題なのよね、お父様もそれの解決はしたいそうだけど」
「冷蔵保存が出来れば運べるとは思いますけど」
「冷蔵自体は国からも援助されるけど、それを運ぶのはまだ難しいのよね」
「家庭に置くぐらいなら出来ますけど冷やしたまま運ぶのが難しいんですよね」
「そうね、だから私達もそういうのには協力は惜しまないつもりよ」
「隣国の技術とはいえそれが他の国にも入ってるので、独占するつもりはないみたいですね」
「普通は隣国って仲が悪いものなのにね、まあ珍しいタイプの国っていう事よ」
「でもお店だと普通に魚が食べられるという事は仕入先も含め保存が出来るんですよね」
「それもお店の冷蔵庫って凄く大きいから、あれってお店用とかなのかしら」
「だと思います、アヌークさんが言うには業務用というものらしいですよ」
「業務用、つまりお店なんかで使うものっていう解釈でいいのかしら」
「家庭用と違って出力なんかも強いとは言っていましたから」
「電子レンジっていうのはこの国にもないし、凄いものなのね」
「知らないキカイもありますからね、お店には」
「どこから手に入れているのかしらね」
「もう少しで20番街ですね、行きましょう」
内陸のこの国では魚は貴重な食べ物だ。
保存の技術自体は存在するし、国からも支援がされる。
ただ冷蔵のまま運ぶというのは今はまだ難しいのだとか。
なので内陸のこの国に魚を運ぶのは難しいとのこと。
冷蔵技術はあるが冷蔵状態で運ぶのが難しい。
電力こそあるがトラックなどのようなものがないのだ。
「そういえば魚って骨のない切り身になってたりする事が多いわよね」
「加工済みの魚だから子供なんかでも安心して食べられるという事ですね」
「そういうのはいいわよね、姫もそれなら魚も食べられるし」
「エトさんは魚は苦手なんですか」
「苦手っていうか、骨があるのが苦手なのよ、食べるのが面倒じゃない」
「そういう事ですか、確かに骨は刺さると痛いですからね」
「だからお店で出される骨のない魚は好きよ、加工って素晴らしいわね」
「でもそれは分かります、港町で魚を食べた人もそれを言う人は結構いましたから」
「骨のない魚って素晴らしい限りよね」
「この先みたいです、早く終わらせますか」
そのまま20番街の家の方へと進んでいく。
魚料理は割とデリケートなので、早く食べてもらうに越した事はないのだ。
「ここかしら」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「はい、先に代金として銅貨一枚と青銅貨二枚をいただきます」
「これを」
「確かに、ではこちらがご注文のサバの味噌煮定食になります」
「ありがとうございます」
「容器は行政区分に従った可燃ごみでお願いしますね」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、それじゃ食べようかな」
サバの味噌煮定食、サバの味噌煮とライスとお新香のセットである。
単品でも頼めるし、定食でも頼める。
使っている味噌も割といいものを使っているので、味も保証済みだ。
お新香は主に白菜やにんじんなどを使っている。
サバの味噌煮でご飯が進む日本らしいメニューでもある。
やはり白米というのはおかずがあってこそ進むものなのだ。
「ん、これは美味しいな、煮込まれた魚に味噌の味がよく合ってる」
「東から来た人の経営するお店だと味噌も買えるみたいだけど、これが味噌なのか」
「このお新香っていうのもいい感じに美味しくてライスが進むね」
「内陸のこの国で魚が食べられるのも不思議だけど、美味しいからいいか」
「味噌煮とお新香でライスをどんどん食べられる、これはいいな」
「味噌の味がライスにとてもいい感じにマッチしてたくさん食べられそうだ」
その頃のエト達は帰り際に休憩していた。
飲み物を持たせてくれるのも配慮なのだ。
「ふぅ、落ち着くわね」
「この魔法瓶というのはとても便利ですよね」
「保温が出来る水筒なんてどんな仕組みなのかしらね」
「素晴らしい技術ですよね、本当に」
飲み物を飲んだらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻ったわよ」
「お帰り、はい、おしぼり」
「ありがとうございます」
「宅配も注文が増えていマスね、スタッフを増やすべきでショウか」
「もっと忙しくなりそうなら増やせばいいんじゃない」
「今はソアレで足りてるからね」
「必要に応じてでいいと思いますよ」
「デスね、その時にまた考えマスよ」
宅配の需要は増え持ち帰りをする客も増えた。
また店で食べ切れなかった料理の持ち帰りも可能で無料で容器を提供している。
そうしたやり方も好評の理由なのだろう。




